ＢＩＧＡＳＡＮ
（米の供給元）
　
09年：サンフラワー・フィルムズ・インターナショナル
監督：ホヴェン・タン
主演：グウェン・ガルシ
　 　 カルロス・モラレス
　　　ジョロス・ガンボア
　 　 アナ・カプリ
　 　 アニータ・リンダ
　 　 ペルラ・バウティスタ
　 　 イルマ・アドラワン
　 　 モン・コンフィアド
　 　 トフィー・カルマ
　 　 ビボイ・ラミレス
　 　 クリストファー・キング
　 　 チャールズ・デルガド
　極貧に暮らす人間模様を描く作品で、多くの日本のドキュメンタリーや各種メディアのごとく、アホのひとつ覚えみたいにゴミをあさる人々をあつかうのではなく、路上で寝る物乞いの子どもたちを天使だとか神の子なんてたとえるわけでなく、さまざまな角度から生活のスタイルをとらえる。ホヴェン・ムナル・タンの得意の群像劇といえる。
　鳥がエサをつつく汚水のたまる池や野犬のうろつくゴミ捨て場のある貧民街が舞台。住民たちは少量にはかってビニール袋で売る米を買うために行列をつくる。赤ん坊をかかえるウィルマ（グウェン・ガルシ）は米代のためにトライシクル・ドライヴァーの男（クリストファー・キング）に抱かれるほか、売春で生活費をえる。夫のヘネル（ジョロス・ガンボア）は病弱でいつもセキこみ、移動車で米を売る半公営の販売人ながら、商品の米をくすね、それをみつけた相棒によって警察へ突きだされ、留置場に拘留される。老老介護のリディア（ペルラ・バウティスタ）は自らが老女なものの、さらに高齢の姉のミラ（アニータ・リンダ）がボケて、リディアを誰なのかわかっていない。近所のおばさんたちと小額博打を楽しむトニャ（アナ・カプリ）は息子のランディー（チャールズ・デルガド）が教師のデンショ（トフィー・カルマ）とホモ関係を知るも、デンショがランディーにわたすカネをアテにする。デンショはトライシクル・ドライヴァーの男と意気投合でハードなホモ・セックスにふける。同じ貧乏でも小ガネをもつ中年女性のレベッカ（イルマ・アドラワン）はごう慢な性格で、安く買った小分けの米を高くほかに売りつけ、ウィルマには借金の返済を迫り、男の愛人のティソイ（カルロス・モラレス）を囲う。ホモの相手を命じるうえ、頭をマッサージさせたり、ワガママなレベッカに対してティソイが嫌気を感じている。
　議員に立候補のダンテ（モン・コンフィアド）が住民に配る米をスタッフが小分けに始まり、その米をラスト近くで「無料だよ」と住民たちにわたす。鏡に向かってダンテが決めポーズをとるナルシストがバカっぽいなら、オレンジ色に自分のイメージを統一がフィリピンの選挙ふう。というか、タイでもインドネシアでも、政党や候補者は色によって支持の浸透をはかっている。米のビニール袋がオレンジ色なら、町のガードマンの検問所もオレンジ色に塗られる。路地のあちこちにオレンジ色がバックのダンテのポスターが貼られ、ベタベタとセクシー女優のポスターとともに、トライシクル・ドライヴァーの男の部屋にも貼られる。ダンテはオレンジ色のＴシャツをおばあちゃんにあげているが、日本だと選挙違反ながら、モノをあげるのはフィリピンの選挙の定番だし、個人的にもよく知り合いの候補者がいればＴシャツをもらう。ただし映画はお祭り的な雰囲気の選挙戦をあらわすにいたらず、そこに焦点がないとはいえ、ややご都合主義の作意が目だつ。
　とにかく引換券みたいな紙をもち、格安で米を買うシステムのわかるあたりが興味深く、小分けでないと米が手に入らない日暮らしの庶民がいかに多いかがフィリピンの図式。
　レベッカの家の掃除婦をつとめるリディアがレベッカの食べ残しのバナナ・キューにムシャムシャと食らいつくのや、ランチの休憩でご飯のないヘネルがトマトをかじるのに満足度の低い食事情がにじむ。かといってデンショとトライシクル・ドライヴァーの男とのアドボをかけての食事など、飢えるわけでないのが熱帯のゆえん。リディアがお粥をつくる鍋をじっと映すのに、日本とは異なるレシピにうなずくが、その描写が全体の流れの中で浮く。
　留置場をでたヘネルが隣人のゴシップを耳にはさんでウィルマの売春に気がつき、複雑な心境をおぼえるほか、デンショがトライシクル・ドライヴァーの男とホモ・セックスにランディーが嫉妬や、ティソイのレベッカへの憎悪などが深く迫らない表現の浅さがホヴェンの限界か。ミラが眠るように亡くなり、誰も参列者のいない葬式にティソイがダンテの配ったオレンジ色のビニール袋の米をもってあらわれ、赤ん坊を抱いたウィルマもきて、貧困がもたらす人間性のゆがみとともに、貧乏人同士のパキキサマも描き、まずまずとの評価に落ちつく。
　でも哀愁がさほど感性に訴えてこず、厳しい現実と格闘の日々のようすが絵空事に終わったともいえる。
　暗い内容ながらも娯楽作なので、ヌードによるエッチなシーンの盛りこみはウハウハだが、ホモのほうが多くてちょっとうんざり。ランディーが帰宅で水浴びのとき、チャールズ・デルガドが全裸でお尻をみせてシャワー室へ入るや、シルエットでチンポの形の影がうかがえると、カーテンをあけてでる際にチンポがモロ。レベッカの奥でティソイが水浴びで、カルロス・モラレスがパンツ一丁に濡れて筋肉質なハダカを披露する。レベッカの取り引き相手の男にフェラチオをうける階段は脱がないが、デンショとトライシクル・ドライヴァーの男のホモ・セックスがすごい。ビニールに入れた氷水を飲むトライシクル・ドライヴァーの男の汗ばんだ肉体に水がしたたるのをデンショがながめて意思が通じ合い、全裸でデンショがトライシクル・ドライヴァーの男の身体をなめると、トライシクル・ドライヴァーの男が自らパンツに手を入れてチンポをもむ。デンショとランディーのシャワーでの愛撫はデンショがランディーのパンツをおろし、チャールズ・デルガドのチンポが半分あらわだし、お尻の超アップにゲーッ。ほかにゲイの美容院の店主（アイク・サジャサ）がランジェリーとパンティーの醜い姿で店の玄関に立ち、トライシクル・ドライヴァーの男とキスする。
　グウェン・ガルシが出演だけに、ちゃんとオッパイの全開を含む点が納得で、トライシクル・ドライヴァーの男に足の指をしゃぶられるも、表情をまったく変えない無気力なセックスで乳首のアップをみせる。相変わらず肌の張りのよい乳房が誘惑的。赤ん坊を横にセックス終わりで男が寝転ぶベッドでは、クリストファー・キングの陰毛がなんでグウェンじゃないのと不満をもよおす。気持ち悪いとブロック積みの粗末な浴室でウィルマが全身を石鹸で洗うとき、全裸でしゃがむグウェンのオッパイがプラプラと揺れて、ややたれたようで、そうではない。別の中年男と売春でブラをとらないも、パンツをはく男のアヌスがのぞきそうだし、玉袋がチラつくのはさておき、トライシクル・ドライバーの男と二度目のセックスでブラのフロント・ホックをはずされ、形が絶品のオッパイがポロリ。実際、グウェンは好みのタイプをはずれるも、オッパイだけはマジで魅力にあふれる。男がもうひとり加わっての三人プレーは、妻の売春の間、赤ん坊をあやすヘネルのわびしさの挿入でごかましたままなうえ、セックスが終わって全裸でうつ伏せに寝るトライシクル・ドライバーの男ともうひとりの男のお尻をみせた真っ裸に、トライシクル・ドライバーの男はチンポの先っぽがのぞき、クリストファー・キングの亀頭が余計。グウェンは乳首がバッチリのオッパイにブラをつけて去り、感動もののオッパイだけど、こうもチンポの露出があれば、グウェンのマンコのきわどいショットもほしかったかなと思える。
　まあ、どうもフィリピンのディジタル作はホモが優先で困る。