02年：マヴェリック・フィルムズ／オクトアーツ・フィルム・プロダクション
監督：トニー・Ｙ・レイエス
主演：オギー・アルカシド
マイケル・Ｖ
ミシェル・バイレ
ニッキ・ヴァルデス
レッドフォード・ホワイト
アンドレア・デル・ロサリオ
ロング・メジア
人気コメディアンであるマイケル・Ｖと実力シンガー・ソング・ライターのオギー・アルカシドの共演。オギーは映画出演の際、ほとんどが三枚目的なキャラクターだし、マイケルは監督のトニー・Ｙ・レイエスと共同でストーリーを担当で（脚本はトニー）、あくの強いスラプスティックを期待する。
これが実にうまくいったというか、本当なら何の障害もなくすんなりと通過できるはずの道のりで次々とトラブルが起こり、なかなか目的地へ到着できないというロード・ムーヴィー的な展開に、目新しさでとくに驚くほどのギャグはないものの、けっこう爆笑できる仕上がり。ナンセンス喜劇のスマッシュ・ヒットといっていいだろう。
マイケル演じるのは郊外でロッジを経営する男で、ニッキ・ヴァルデス演じる婚約者との結婚式を目前に控えている。ミシェル・バイレ演じる妹が出稼ぎ先のブルネイから帰ってきて、向こうでオギー演じる恋人ができたと告げる。一緒に結婚したいから、明日の飛行機に乗っているので、空港まで迎えに行ってくれと頼むのが発端。
いきなりカートを暴走させてオギーがマイケルにぶつかる出会いから嫌な関係を予感の二人だが、まずは車を使ったギャグで笑わせる。ぬかるみにタイヤがはまって、レッドフォード・ホワイト演じるオカマふうの男が乗った通りすがりの車に引っぱってもらうとバンパーがちぎれたり、キーを閉じこんで窓ガラスを割ると反対側がオープン状態だったり、口ゲンカを起こして停止し、片方のドアを開けっぱなしでトラックにもぎとられたり、エンジンから煙がでたので水と間違えてガソリンをかけたら火をふいたり、だんだんとボロボロになっていくようすが愉快。ただ大破寸前の状態で何とかたどり着くのかと予想したが、サイド・ブレーキのかけ忘れから崖を転げ落ちて爆発炎上は、ややマイナスの面で意外だった。
事件への巻きこまれかたにもいくつかのパターンが用意される。スーパーで強盗に遭遇で犯人に間違えられるものから、バスに乗っていたらホールド・アップ犯とピストルの奪い合いになったり、ヒッチハイクしたらロング・メジア演じる運転手が突然死したり、ロングのトラックの積み荷から大麻がでてきたりで、よくもまあ偶然が重なるものよ、とのあきれさせかたがうまい。でも、そのたびに警察へ留置に、レッドフォードが警察署長だったため、毎度ようこそ的にいじめられるあたりは、とってつけたような印象。
腹がへったとレストランへ入ったつもりがバー・ハウスで、ミニー・アギラー演じるママさんからＫＴＶルームへ案内され、アンドレア・デル・ロサリオ演じるＧ．Ｒ．Ｏ．がつくと、マイケルがアンドレアに説教オヤジ化するのは、日本人と変わらないなあとニヤニヤ。そこへ手入れがきて、またまた警察のご用になるも、アンドレアがレッドフォードの娘だったので感謝されるオチがイマイチ。
まあ、いくらでも欠点は指摘できるものの、とにかくテンポよく引っぱったトニーの技量を買う。オギーとマイケルのボケとつっこみ的なコンビぶりが、まずまず成功したようだ。
ほかにもウェディング・ドレスのデザイナーがアル・アラヤタ演じるオカマである点や、ウィットニー・タイソン演じる強盗に合うスーパーの店員の太った黒人女性（アスンタ・デ・ローセスという役名がふざけている）がうるさく騒ぎまくる描写など、いかにもフィリピンっぽい、と嬉しくなる。オギーがカバンを知らないうちに投げこんでいたトラックの運転手役でヨヨン・マルティネスが本人として出演し、プロ・バスケット・ボールの人気プレーヤーらしいが、フィリピンのスポーツの情報を持っていないのは、個人的に残念。
とりあえずは視覚的な表現を優先で、外国人にも十分に楽しめる内容に、満足をおぼえた次第。
なお、ミシェルとアンドレアの顔がみえるから、ウハウハなシーンがあるかと期待したものの、やっとやってきたオギーに抱きつきときにキュッとフィットしたミシェルの短パンが視線を奪うくらい。アンドレアなど設定が設定だけに、もう少しプロポーションが浮きでるような、ボディー・ラインくっきりの衣装でもよかった気がする。ホールド・アップ犯がエラ・マリス、ケイ・バスコ、ウェラ・ゴンサレス演じるセクシー三人組なのはオオッと感じたが、やはり挑発的な格好をしているわけじゃなく、こんなものか。乗客の一人が「脱げ」と命じられて黒い紐なしブラになるも、下のデカパンのような白いパンティーがダサいし、顔もブスっぽいから問題外。
本来、お色気を目的とした作品じゃないので、ここは我慢しよう。
