ＢＥＡＳＴ　ＯＦ　ＢＬＯＯＤ
　
70年：ヘミスフィアー・ピクチャーズ
監督：エディー・ロメロ
主演：ジョン・アシュリー
　　　 セレステ・ヤーナル
　　　 エディー・ガルシア
　　　 リサ・ベルモンテ
　　　 アルフォンソ・カルヴァハル
　アメリカ合衆国向けのフィリピン映画になり、Ｃ級ホラー“ブラッド・アイランド”シリーズの最後の作品。おそらくドライヴ・イン・シアターでの上映用だろう。船長役で出演を兼ねるベヴァリー・ミラーの原案のもと、エディー・ロメロが脚本を書き、今回はジェラルド・デ・レオンが参加せず、エディー・ロメロが単独で監督する。
　前作のラストで救命ボートに緑色のモンスターがひそみ、よくあるこけおどしのエンディングかと思ったものの、ちゃんと続編への伏線で、まずモンスターが船で暴れて皆殺しの惨事でも、主人公のビル（ジョン・アシュリー）だけが助かり、モンスターもビーチへ流れついているご都合主義のプロローグがおかれる。
　ふたたびモンスターのうわさにゆれるビーチへビルが向かい、女性ジャーナリストのマイラ（セレステ・ヤーナル）も同じ船に乗っている。ビーチへつけばムスリム帽をかぶる酋長のラム（アルフォンソ・カルヴァハル）が迎え、村民の女性がみんなブラとパレオのかっこうなのが、これまでの設定をひきつぐ。命からがらの体験をしたビルの心理がおざなりや、モンスターの度重なる出現に島が恐怖におののいていないといった状況のいい加減さは、お約束の範囲内ということで…
　エヴァ・ダレンやアリシア・アロンソに代わる現地の女性を演じるのがリサ・ベルモンテになり、六十年代後半に十本ほどの出演作のある女優ながら、個人的に知らないため、ファンじゃないのが残念。でもキリッとした容貌で男まさりの性格をあらわし、マイラを襲った緑色にただれる男を殺すところなど、なかなかカッコいい。
　ストーリーは単純で、死んだと思われたロルカ博士が生きていて、モンスターの再生を試みている。それをビルが探りだし、ロルカともども退治というもの。ロルカ博士を演じる俳優がエディー・ガルシアに交代で、フィリピンの個性派の活躍に注目が集まる。火傷で崩れる顔に眼帯をはめ、マッド・サイエンティストふうをかもしだす。またロルカの助手のラサクは、前作に続いてブルーノ・プンサランが演じ、特異な顔つきであやしさを漂わせる。
　ジャングルにたたずむロルカの屋敷をビルたちが訪ねてみれば、蛆がたかる腐乱死体が転がり、マイラが地下の小部屋に落ちるとコブラがいたり、隠し扉の奥に洞窟があったりと不穏なムードをつくり、ラサクの一味にマイラが誘拐されれば、いったん逃げるときにジャングルに吊るされた死体をみかけるうえ、底なし沼へ落ちるなどの小細工演出で、一応はあきさせない。本作の出色はモンスターの首と胴体がバラバラな創造になり、血のかさぶたにまみれた首なし胴体の手足が不気味に動き、表面のただれた首にロルカが話しかける。このグロテスクぶりは、さすがとあきれつつも感心。まだＣＧのない時代だけに、お手製のメイクや特撮がイメージをあげる。ロルカが手術のシーンでメスが切り刻む皮膚は、おそらく何かの動物だろう。
　とにかく離れた場所の首がしゃべって皮肉に笑い、首なしの胴体が復讐でロルカに襲いかかるバカバカしさは、くだらない映画が大好きなものにすれば、モンスターに改造されかかった父親をリサ・ベルモンテ演じるライダがみつけるとってつけたドラマを含め、これぞＣ級ホラーとうれしくなる。ただしエログロナンセンスの珍品ながら、エロとナンセンスはパワー・アップでも、アリシア・アロンソのフル・ヌードがおがめた前作『ＭＡＤ　ＤＯＣＴＯＲ　ＯＦ　ＢＬＯＯＤ』はもちろん、エヴァ・ダレンのセクシー・ダンスにゾクゾクとまいった『ＢＲＩＤＥＳ　ＯＦ　ＢＬＯＯＤ』よりもエロは後退かもしれない。ビルをライダが誘惑のシーンでリサ・ベルモンテがブラをはずし、乳首がポロリにハッと興奮するが、すぐにやめてしまい、リサの真っ裸がないのが惜しすぎる。白人女優は趣味じゃないも、さすがにレポーターの役なのでセレステ・ヤーナルに知的な要素が感じられ、これまでの白人のヒロインよりはずっと魅力的。後半のブラとパレオのかっこうが色っぽいし、底なし沼からひきずりだされたあと、男たちのレイプ未遂をうけ、シャツがはだけて乳首がこぼれ、ビルとのセックスで全裸に脱いでオッパイを丸だしの露出だから、アメリカ合衆国の白人観客にすれば、エロも合格に違いない。
　まあ、バストがゆれる胸元や、パレオにのぞく太腿のエロスと、乳首のモロでリサ・ベルモンテという女優を発見したため、収穫があったなあと納得する。