ＢＡＳＴＡ’Ｔ　ＴＲＩＣＹＣＬＥ　ＤＲＩＶＥＲ　…ＳＷＥＥＴ　ＬＯＶＥＲ
（トライシクル・ドライヴァーだったら…　素敵な恋人）
　
00年：ＭＭＧフィルムズ・インターナショナル
監督：ＪＲ・レデスマ
主演：デニス・パディーリア
　　 　スモーキー・マノロト
　　 　アヤ・メデル
　　 　ハンナ・ヴィリアーメ
　　 　ブランド・レガスピ
　　 　ヨヨイ・ヴィリアーメ
　　　 ヘルマン・モレノ
　　　 ヤム・レデスマ
　　　 エルヴィン・マテオ
　フィリピン人とつき合っていると、そのお人よしさにあきれたり、うんざりしたりすることもあるが、とにかくイイ奴だなあ、とこちらまで気持ちがやさしくなる。基本的に自分はイイ奴らが好きなんだと認識するわけで、映画もそういった人物が登場するコメディーが好きである。
　トライシクル・ドライヴァーを主人公におくこの作品は、やっぱりフィリピン人だわい、と妙に納得をくれるあたりが嬉しい。
　デニス・パディーリア演じるのは“ラヴァーズ・トライシクル・オーガニゼーション”という自主団体のリーダー。いつも集会を開くなどで、ドライヴァーたちのまとめ役になっている。ダニー・リエル演じる盲人の娘である、プリチー・エスタシオン演じる子どもが車にひかれると、病院へ運び、みんなからカンパを集めて治療費をだしてあげる。
　スモーキー・マノロト演じるのは、ヘルマン・モレノ演じる金持ちの息子で、社会勉強のためにトライシクル・ドライヴァーを命じられてショック。ちょっとクサっているも“ラヴァーズ・トライシクル・オーガニゼーション”に加わり、ジョーカー演じる極貧のドライヴァー一家にこっそり生活費をあげたりする。ジョーカーがみんなのいるところでお礼を述べるや「ナイショ、ナイショ」と困惑。周囲の人望がスモーキーに集まりはじめ、デニスはリーダーを譲ろうと思い、スモーキーはデニスがいてこそ、と立てる。
　まったく、つい共感を誘う人物像に、いいじゃないですか。
　もちろん悪い奴も登場し、エルヴィン・マテオ演じる踊る交通整理の警察など、袖の下稼ぎでわざと交通違反を起こさせ、こういう警官って、実際にいるから困ったもの。
　そこがまた、フィリピン人か、とも苦笑い。
　でも正直なところ、映画の完成度となると、それほど高いとはいえない。まずスモーキーが父の会社へ行くときのエレヴェーターの中でのエキセントリックな人物や、太った一家を乗せてデニスのトライシクルが動かなくなったり、オカマの客を乗せたり、ローズ・ルナ演じる女性に家へ連れこまれてデニスがブラジャーをつけちゃったり、パトリック・エルヴィー・マテオとパトリック・サポル・サントス演じるスモーキーのこまっしゃくれた二人の弟がでてきたりといった、肝心のギャグが冴えない。ダニーが感謝の気持ちを伝えるときに妙にしめっぽくなるのも、泣き笑いにしたかったのかもしれないが、アンバランスな印象を与える。ドラッグの話も余計な感じ。
　全体的にテンポがイマイチで、この程度の内容で上映時間が二時間もある点も退屈を招き、ＪＲ・レデスマ監督の力量不足は否めない。
　それにブランド・レガスピ演じるスモーキーの従兄弟が、将来のスモーキーの地位を狙ってあれこれ画策をめぐらせ、レーイ・ロルダンがリーダーを演じる悪党を雇い、その悪党たちがスモーキーの二人の弟とヤム・レデスマ演じるデニスの妹を誘拐との展開は、まったく感心できない。フィリピン映画のコメディーで大騒ぎのトラブルといえば、殺人目撃か誘拐に相場が決まっているとも思えて、これじゃパターン通り。ブランドがすぐに改心で助ける側にまわるのは、イイ奴のドラマとして当然のなりゆきだが、駆けつけたデニスやスモーキーたちと銃撃戦を繰り広げる展開は、拒否反応以外の何物でもない。いくらスラプスティック的に描いていても、殺人は殺人、と指摘したいわけ。
　血がでるシーンがなくたって、銃という凶器を安易に使ってほしくないもの。
　まあ、何十台ものトライシクルが列をなして応援にやってくる光景は壮観だし、デニスの正体をバラしてのハッピー・エンドもほほえましいから、ＪＲ・レデスマとしてはいいほうのできかもしれない。
　ごめんなさい、あまり買ってないんです。
　デニスの父役のヨヨイ・ヴィリアーメを中心に、スモーキーの恋人になる小学教師役のハンナ・ヴィリアーメとデニスの妹役のヤム・レデスマの三名が歌う主題歌が、ビーチへ行くシーンでみんなの踊りとともに挿入され、あと他に三曲ほど入れてミュージカル風に構成の要素もあったなあとは感じる。
　セクシーな面では、デニスの恋人役をアヤ・メデルが演じ、ハンナと同僚で、そうかあ、あのセックス・ダイナマイトのようなアヤが教師かあ、と意外な設定に嬉しくなるが、みごとにはまっているあたり、さすがアヤじゃないか。しかもビーチではハンナもヤムも水着になっていないのに、いつものバストがこぼれんばかりの紐ビキニ。胸元はプラプラゆれるし、下からみたハミ乳寸前のカットはあるし、デニスと穴に落ちるときにヒップはつきだすしで、いやはや鼻血ものの興奮。あとでスリップ姿で冷蔵庫の冷気にあたりながら水を飲む悩殺ポーズや、胸の谷間が大胆にでたヘソだしジーンズで前かがみになる姿もドキドキを高め、アヤの全裸は他の作品で何度もみているものの、大切な部分が隠れた色気も捨てがたい素晴らしさ。
　アヤのサーヴィス精神は、ＪＲ・レデスマの足りない演出力を補って余りある。
　またハンナがそこそこかわいく、ヘソだしジーンズで蹴りを入れるアクションが実によろしい。
　スモーキーの別れる前の彼女を演じるイラ・ゴサは、容貌的に落ちるが、青いピタパンがそそるカッコよさ。
　冒頭でデニスに助けてもらう女性を演じる新人のロラが、小さな役ながら、気になる美人ぶり。
　と女優の魅力は満開。
　それとスモーキーとハンナがロミー・ディアス演じるボスのグループによる強盗に巻きこまれるシーンでは、ロナルド・ガン・レデスマが助ける男役でゲスト出演し、レデスマ・ファミリーの協力体制は万全のようだ。