87年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：アントニオ・ペレス
主演：フィリップ・サルヴァドル
リオ・ロクシン
テッチー・アグバヤニ
ジョニー・デルガド
ピンキー・アマドール
カ・アンボことバルウェグ神父という、実在の人物を描くアクションもの。バナウエの山中を舞台にとるのが興味をそそる。１９７４年から１９８６年までが時代設定で、マルコス政権下の政府軍と戦うドラマにもなる。
ジープを乗せていかだで向こう岸まで運ぶアブラ川の渡し舟の光景がおもしろく、棚田が広がり、渓谷に吊り橋のかかる光景にまず引かれる。
政府と癒着のリゾート会社が自然破壊につながる、現地の人々の住まいを奪う強引な開発を始め、これにバルウェグ神父（フィリップ・サルヴァドル）が反対をとなえ、はしたガネをもらった信者のワルド（エルニー・フォルテ）から懺悔中に暗殺未遂をうける。立ちのきを拒む老人（エディー・インファンテ）が亡くなり、高床式住居の下に土葬の風習が好奇心をそそる。埋葬が終わるやいなや、家のとり壊しに激怒のバルウェグ神父がついにキレて、ブルドーザーの運転手（エルニー・デーヴィッド）を殴る。理解者のトニー神父（ディン・サルヴァドル）の協力で軍の捜査を逃れ、教会で助手をつめてくれたワシル（モン・ゴディス）とアブラハム（バルド・マーロ）とともに、ＮＰＡに通じるアマ（ホセ・ロムロ）から以前、イロカノのＮＰＡの幹部をつとめるカ・ジョージ（ジョニー・デルガド）を紹介されたが、武力の抵抗をくり広げるカ・ジョージの仲間に加わり、自らはカ・アンボに、ワシルはカ・ビタンに、アブラハムはカ・ノリになる。政府軍がアマを殺害などにためらいを捨てて積極的に銃をとるように変わり、カ・アンボは村人の尊敬を集め、どこでも大歓迎。でも次第に共産主義のイデオロギーにもとづく強行派のカ・ジョージと意見が合わなくなり、別行動を選ぶ。アキノ政権が成立のニュースを聞いて投降を決めると、カ・ジョージが信頼をおく部下のカ・ジェー（ベボン・オソリオ）にカ・アンボの射殺を指示。でもカ・ジェーが撃てず、山を降りたカ・アンボが戦闘の日々をやめる。
この間にメンバーの子どもたちを教える山の中の授業、メンバーたちが隠れ家の基地で楽しむバスケットボール、女性たちの天日干しといった農作業のＮＰＡの生活模様や、密告者を処刑の厳しい掟がでてくる。
教会のお手伝いだったアソン（リオ・ロクシン）はバルウェグ神父を慕っていたが、友人のカ・リタ（グウェン・コルメナレス）に誘われてＮＰＡに入り、カ・ロイダを名のる。カ・ジョージなどの祝福にかこまれ、ゲリラの基地でカ・アンボと結婚。隊員たちがライフルをまじえてつくる屋根のトンネルをくぐったあと、鎌とハンマーの共産党のマークがついた赤旗で背中を結ばれ、いかにも階級闘争の武装集団を思わせる。バギオでカ・ロイダが政府軍につかまってカ・アンボの手紙が届かず、カ・ロイダの嫉妬を生む。女性ジャーナリストのテリー・ゲレロ（ピンキー・アマドール）が取材でカ・アンボを「見栄えがいい」と前面にとりあげ、バギオで拘留中のカ・ロイダとも話す。幹部のカ・エフレン（レイ・ヴェントゥラ）とカ・ミンダ（ルシタ・ソリアノ）にカ・ジョージが相談でカ・アンボと一触即発の対立で危ないとき、タイミングよく現われて空気をやわらげる。１９８４年のカ・ロイダへインタビューの際にテリーがベニグノ・アキノのＴシャツを着ていて、政治的な立場がわかる。
テリーとの会話でカ・アンボが共産主義のことを質問されたりを含むが、宗教を認めない共産主義に聖職者のバルウェグ神父がどこまで悩んだかの矛盾は、意外と表面的にすませる。
とにかくアントニオ・ペレスがリズム感のよいテンポで進めて退屈を招かない点がよく、政府軍の士官（レネ・ホーキンス）と村や山での死闘や、ヘリコプターの襲撃など、まずまずの迫力。しっかり娯楽作の平均レヴェルに達している。
また山岳民族の踊りやブタの屠殺と解体、水牛の屠殺と解体の挿入が文化面の視点をプラスで、内容の価値をあげる。さすが、のちにイフガオ族をあつかう『ＭＵＭＢＡＫＩ』を撮るアントニオ・ホセ・ペレスらしいとの納得が起きる。
顔を泥臭く汚してのフィリップ・サルヴァドルやジョニー・デルガドが好演。
女優の魅力ではリオ・ロクシンがチャーミングながら、ちょうど年齢的に最盛期のピンキー・アマドールが好みで、もう抱きつきたいほど。存在感という意味ではＮＰＡの女性メンバーのカ・スーザンを演じたテッチー・アグバヤニが光り、さほど美人じゃない容貌がかえってはまるうえ、気の荒そうな雰囲気が鉄の女をイメージさせる。カ・アンボと別れのときにしゃべる、たった二言しか台詞がないのに、銃をもって戦う姿がオーラを放ち、誰よりも視線を奪う。肩に刺青を入れるシーンで背中をみせ、カ・アンボとお互いに傷つき、民家にかくまわれて手当ての際にシーツにくるまって焚き火にあたり、カ・アンボとキスをかわす戦士のひとときのロマンスにぞくぞく。すでに雑誌へ衝撃の全裸を発表でスキャンダルを巻き起こし、ジョン・ブアマンのイギリス映画『エメラルド・フォレスト』に出演で堂々の惜しげもないオッパイ丸だしのウハウハをくれたあとだけに、せめて滝の落ちる池で休息のシチュエーションで下着に脱いで身体を洗うくらいのセクシーさがほしかったところ。
