ＢＡＬＡＨＩＢＯＮＧ　ＰＵＳＡ
（毛なみのよい猫）
　
00/01年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ヤム・ララナス
主演：ジョイス・ヒメネス
　　　 エリザベット・オロペッザ
　　　 フリオ・ディアス
　　　 ジェー・マナロ
　　　 リカ・ペラレホ
　市場に雨が降るトップ・シーンから、すぐれた雰囲気描写を感じとる。これは映像センスのよさをセールス・ポイントにした作品だなあと思わせるが、ジョイス・ヒメネスが主演だから、ソフト・ポルノ的な内容に違いないぞと期待する。
　市場でジェー・マナロ演じる恋人と出会うと、さっそくセックスを繰り広げる。ジョイスのド迫力オッパイが大写しになって、早くもドキドキの興奮で満足。セクシー・スターとして女王のような地位にあるジョイスは、やっぱりファンを裏切ることがない。
　ジェーはパルパロ者で、もうひとり恋人がいて、こちらを演じているのはリカ・ペラレホ。ベッドの上でもだえるときにオッパイの形が違うから、顔がよくみえなくても、これはリカだなとすぐに気がつく。正直なところやや乳輪が大きめの爆乳で、人気絶大のジョイスよりも、乳首が少しツンとしたリカのほうが好み。ブラをつけるシーンでもわざわざ乳房の全開をみせてくれるうえ、容姿がキュートなこともあり、リカへ愛の告白をしたいくらい。
　とはいえジョイスが悩殺もののポースを惜しげもなくさらしてくれるのはいつも通りで、確かに心を捧げてもよいと思わせる美人である。物語はエリザベット・オロペッザ演じるジョイスの母が再婚する行為から始まり、相手がフリオ・ディアス演じる修理工場のオーナー。フリオの娘がリカで、工場の雇われ人がジェーという、いっけん複雑そうだが、実は単純な人間関係の構図になっている。脚本は監督のヤム・ララナスが書いているものの、エリック・マッティ、ウロ・デラ・クルース、ジェー・アベロ、マーク・ケルビンというそうそうたるメンバーがストーリーを担当で、誰がどのアイディアをだしたのだろうか。
　水あびのジョイスのオッパイをフリオがのぞき見するや、すっかり虜に陥るのは、そりゃあ中年のエリザベットより容姿的にもいいに決まっているので、納得がいく展開。のぞき見の視線の隠微な撮りかたもなかなかのもの。エリザベットを抱きながら、裸体がイメージの中でジョイスに変わって、誘惑的に迫ってくる描写は、こちらまでビンビンになる。
　でもセックス・シーンは他にもあるものの、銃を押しつけて犯そうとするところを含めてアートを意識したのか、いささか気どりぎみで興奮させてくれないのが不満。ジョイスのサーヴィス精神は拍手ものだが…
　ドラマの最後はジョイスに狂ったフリオが破滅していくという内容だから、まあわかりきった展開。銃を持ちだしたフリオがいったい誰を殺すのか、といったサスペンスのような張りがあり、その点では成功しているのだが、愛欲に狂った中年男女の悲哀を描くまでにはいたっていない。映像に凝ろうと狙いすぎたせいだろう。
　エリザベットが経営するカインデリャやフリオが経営する修理工場の内部、ウェディング・ドレスを注文に行くカルメン・デル・ロサリオ演じる仕立て屋、ジェーが出入りするビリヤード屋、ジョイスがチャリス・レヴィステとジェニー・ヴェラスコ演じる女友だちと行くディスコなど、興味を引く面もあるが、生活感を浮かびあがらせる要素にはいたっていない。ただ、くだらないことだが、ジェーが“自由”という漢字の刺青をしているのは面白い。
　表面的な映像に走りすぎて、どこか中途半端な印象が残る作品だ。