ＢＡＫＩＴ　ＰＡＰＡ？
（どうしたの、パパ？）
　
02年：リーガル・エンターテインメント
監督：ウロ・Ｑ・デラ・クルース
主演：セックスボン・ガールズ
　　　 アラン・Ｋ
　　　 ウェンデル・ラモス
　　　 ジェフリー・キソン
　　　 リチャード・グチェレス
　　　 シャイナ・オルタレサ
　あれよあれよと大人気を得たセックスボン・ガールズの主演作で、アイドル映画といっていいだろう。彼女たちのファースト・アルバム『ＵＮＡＮＧ　ＰＵＴＯＫ』に収録された中の、映画のタイトルにもなった『ＢＡＫＩＴ　ＰＡＰＡ』と『ＣＲＵＳＨ　ＫＩＴＡ』を歌って踊るステージ・シーンが二ヶ所盛りこまれ、エンド・クレジットにも『ＢＡＫＩＴ　ＰＡＰＡ』のステージ映像が流される。
　登場し始めの頃、セックスボン・ガールズは一体何名構成なんだ？　と推測したことがある。確かにスティール写真によって人数がまちまちだが、ここでは『ＵＮＡＮＧ　ＰＵＴＯＫ』のジャケットに入っている六名、すなわちロシェル・パンギリナン、モニク・イクバン、ジョファニー（ジョパイ）・パギア、ウェン・イバラ、イヴェット・パバレン、イジー・トラソナが出演。いわゆるオリジナル・メンバーなのだろう。ステージ・シーンではまだ他にもいて、六名がキリギリに駆けつけたり、歌い終わるとすぐに走り去るから、あきれ顔の姿がチラッと映されている。今までにみた集合写真でもっとも人数の多いのが十五名で、比較的よくあるのが十四名。個別のショットを調べたら、アイラ、シェシェ、グレース、ジャッキー、メエ、サンディー、サンシャイン、シンシア、ジョーラン、ミアがプラスの、全員で十六名になる。どこかの国の女性アイドル・グループと同じで、ほとんど区別がつかない。
　一番人気はロシェルに違いなく、早くもピンで取りあげの機会が増えている。個人的にも一人だけ選べといわれたら、やはりロシェルかな。面長のイジーや中国顔のウェンは個性的で、そのぶん目立つものの、ウェンなどいささかブスっぽい。とりあえずは出っ歯だけど、そこがまたかわいいロシェルでしょう。
　それにしてもヘソだしでビキニのブラにミニスカかホット・パンツといったセクシーな衣装でダンスにもかかわらず、子どもにまで人気とはおそれいる。日本にもかつてピンクレディーというのがいて、なぜか小学生にまで受けていた事実を思いだせば不思議ではないか。パンティーをチラチラも、いやらしさの連想につながらないお色気なのだろう。
　映画はセックスボン・ガールズが本人を演じ、タレントであると同時に犯罪をやっつける秘密エージェントとの設定。「パパ」と呼ばれる謎の人物から指令がくる構図だから、明らかに『チャーリーズ・エンジェル』のパクリに違いなく、彼女たちがアクションのあとに決めるクンフー・ポーズも映画版『チャーリーズ・エンジェル』にそっくり。途中、ウェンデル・ラモス演じる彼女たちの教官がセキュリティー・ヴィデオの話をする中に挿入の赤いレーザー光をよけながら進むショットは『エントラップメント』のいただきで、まったくアメリカ映画の話題作に対するフィリピン映画の猿まね志向には、いい加減イヤになる。そんなにオリジナリティーが皆無なのだろうか。でも最初のテレヴィ・シリーズはともかく、映画版の『チャーリーズ・エンジェル』はあまりにもブス三人が主人公だったため、「こういう内容には美人を使え！」と怒鳴り声がでそうなくらい失望をおぼえただけに、セックスボン・ガールズのほうがはるかにチャーミングなのは、本家よりも勝っている。
　『チャーリーズ・エンジェル』のボスレーにあたる人物を演じるのは、『ＢＡＫＩＴ　ＰＡＰＡ』の歌詞にも名前がでてくるオカマの人気コメディアンのアラン・Ｋで、セックスボン・ガールズとは一緒にテレヴィ・ヴァラエティーを持っているから、ぴったりのコンビといえそう。テレヴィの延長戦上でのキャストだろう。
　物語はメンゲー・コバルビアス演じる博士が発明した爆弾のプログラムをジェフリー・キソン演じる悪党が奪おうとし、逃げるメンゲーが偶然、リチャード・グチェレス演じる若者にプログラムを書きこんだディスクを渡すことから始まる。リチャードがウェイターをクビになる一連のエピソードでは、リチャードへほとんど説得力のない原因から悪意を抱いたロンメル・ヴィアヘ演じる男がピストルを振りまわし、発砲はないながら、ファミリー・ピクチャーとして著しく感心しない。リチャードはいったんディスクをぬいぐるみの中へと隠し、そのぬいぐるみをディンディン・リアレナ、ジェーン・キネサ、アンジェリカ・フェレル演じる三人の幼い少女たちが買う。ジェフリー一味、メンゲー、リチャード、それにメンゲーがウェンデルへ助けの電話を入れたので駆けつけたセックスボン・ガールズたちがショッピング・モールの中をうろつく描写は、多角的に人物を動かすものの、ややどこで誰と誰が会うかとのハラハラさが足らないのは、お子さま向けだからか。このぬいぐるみ争奪戦が話の骨格かと予想したのに、いとも簡単にリチャードが取り戻す導入部は、いささか意外。ジェフリーがメンゲーと三人の少女を誘拐し、ディスクとの交換になるのがメイン・ストーリーだった。
　三人の少女たちにはシャイナ・オルタレサ演じる叔母、といっても年ごろのキュートな娘がいて、リチャードとの第一印象が悪かったから「なんだコイツ」的に嫌う。リチャードとしょうがなく一緒に姪たちの救出作戦に加わるも、だんだんとシャイナの気持ちが変化し、リチャードと恋に進展の流れはいうまでない。むしろリチャードとシャイナが主役ともとれそうだ。
　人質の女の子たちがワイワイ騒ぎまくり、フロイラン・サレスなどが演じるジェフリーの子分が遊びの相手をさせられるのは、マジを避けた肩の力の抜きかたが幅広い観客層を意識におくように思える。メンゲーが「私は天才」だと自認の感じの悪いオヤジながら、スーパー・パワーを子どもたちに授ける展開で、ビー玉のような粒を女の子たちが飲みこむアイディアは『ＤＡＲＮＡ』のいただきっぽい。消えた少女たちがクライマックスの対決の際にまぼろしの如く出現すると、ジェフリーたちの銃を奪ってしまうあたりはさすがにバカバカしすぎるが、このくだらなさこそ大好きな点。アクションにコマ落としふうの動きを加える小細工も含め、コメディー要素としてジャマになっていない。
　警察が駆けつけて、てんやわんやのすえ、ジェフリーを逮捕。でもすでにジェフリーが爆弾を仕かけたと判明し、メンゲーが解体の最後のサスペンスへ。どのワイヤーを切るか緊迫ムードが高まって、今度は『ジャガーノート』のマネっこじゃないか、とのシラケが走る。以前、日本のテレヴィ・シリーズ『あぶない刑事』でもこの『ジャガーノート』もどきをまったく何の工夫もなく、そっくりそのまま模倣のエピソードがあって、いくらアイディアに著作権がないとはいえ「映画作家としての良心はないのか！」と怒り心頭になったものだが、またもフィリピン映画で…　と落胆していると、突然に全身が脱落しそうな「オイオイ、やってくれるじゃん」ともとれる人を食ったオチが待っている。アホらしさも堂々と取りこめば許される、といった姿勢が好印象で、まあいいんじゃないか。
　ウロ・Ｑ・デラ・クルース監督はしょせんアイドル映画とバカにはしないけど、やはり娯楽映画だからヘンな自己主張を入れずに軽く流し、それでいてツボを抑えた職人ぶりが評価できる。とりあえずは楽しめる作品とすすめていいようだ。
　ただし個人的にはセックスボン・ガールズの刺激的なスタイルに興奮したかっただけなので、いささか挑発面で空振りなのが不満。冒頭の追跡シーンから、ヘルメットで顔がみえなくてもバイクにまたがる腰つきのなまめかしさで女性とわかるも、セックスボン・ガールズたちはアクションに発展後まで相変わらずつなぎのレーシング・スーツで全身のラインが沈んだまま。ステージ衣装は二度目の大胆なスリットの入った光沢素材のタイト・スカートとバストの谷間くっきりのブラがウハウハだし、そのままコンサート会場を抜けだしてファンのもみくちゃから逃れるシーンがあるし、歌っている最中にジェフリーが忍びこんだとの連絡がきて、携帯電話をとるときのロシェルのバストのみごとさがほれぼれするほどだが、やはりスカートのフィット感がイマイチ。ダムでジェフリー一味を粉砕の対決シーンはホット・パンツで、蹴りを入れるポーズから浮かぶカーヴがそそるものの、もっとピチピチに貼りついたホット・パンツだったらと想像すると拍子抜け。スケート・リンクの前でぬいぐるみを探すとき、ロシェルのむっちりなホット・パンツが下半身を浮きあがらせるが、やや素材が厚めでイライラが残る。普段のＭＴＶやコンサートではゾクゾクするほどボディーをキュッと締めつけるようなかっこうを披露しているだけに、なんとパワー不足であることか。
　セックスボン・ガールズの魅力は不発といわざるをえない。
　代わりにおいしそうだったのがシャイナで、全編ずっと白いピタパンとのいでたち。スケート・リンクで、コンサート会場で、アクション・シーンでとスリムなプロポーションからラインくっきりにし、ホント手を突っこんでみたい。いや、パンツの上からでいいからもみもみしたい。シャイナにイカれたと告白も大げさではない。
　あとロンメルの恋人役でカレン・オハラが出演し、こちらもグレーのピタパンだが、シャイナほどの悩殺はくれなかった。