（なぜなのよ？）
99年：オクトアーツ・フィルムズ／ＧＭＡフィルムズ
監督：ホセ・ハヴィエール・レイエス
主演：ジェッサ・サラゴサ
ディーテル・オカンポ
トロイ・モンテロ
ジェッサ・サラゴサの歌う“ＢＡＫＩＴ ＰＡ”は大ヒットになって、某知人もカラオケで熱唱したりだったが、ちょっともの悲しいメロディーを含むのが特徴といえる。この人気曲をモチーフにとった映画で、はからずも三角関係に陥った女性を描く、実にシンプルなコメディー・タッチのラヴ・ロマンスをなす。
ジェッサはサイバー・カフェに勤務のＯＬを演じ、いつも私用のチャットばかりで注意されまくり。ジョン・アパシーブレ演じるボーイ・フレンドがいるも、誤解から破綻する。チャットのやりとりを交わしたアメリカ人がフィリピン系で、写真を送信してきたらカッコいいのにときめき、浮かれる。たまたまジレット・サンディコ演じるルーム・メートが働くブティックでシステム手帳をとり違え、ディーテル・オカンポ演じる相手の男性がとどけてくれる。今度はディーテルに引かれてアタックをかけ、いささか困惑ぎみのディーテルだが、クリスティナ・フェルナンデス演じる前の恋人が男といるのに遭遇し、わりきってジェッサのデートをうける。アニータ・リンダ演じるディーテルの祖母のバースディー・パーティーで熱々なムードが伝わり、マイ・ペースなディーテルもジェッサに夢中になったとき、いつかのチャットのアメリカ人がビジネスでフィリピンへでてくる。トロイ・モンテロ演じるその男のお誘いメールにジェッサが会ってみれば、ハンサムかつマッチョにポッとなる。実はディーテルとトロイは同じ会社に所属し、共同プロジェクトにたずさわっている。お互いにカノジョのことを「サイバー・カフェに勤めている」「同じだ」なんて話すも、ディーテルが本名で、トロイがチャットのハンドル・ネームで呼ぶため、ジェッサを同一人物だと気がついていない。「今度、四人で食事しよう」なんて展開。
ディーテルが真剣に自分を愛しているとわかったジェッサがトロイに事実を打ち明けようと決心するも、トロイが「サン・フランシスコへつれていく」と結婚を切りだしたので、ますますドツボにはまる。まあ、いつまでもウソをつき通せるわけがない… との物語で、しんみりホロ苦いあたりが主題歌のままといえる。ホセ・ハヴィエール・レイエスが無難にまとめた脚本をそつなく語り、いわゆる平均的なレヴェルの、とくにどうってことない作品。ジェッサがシステム手帳をおき忘れてトロイが事実を悟り、ジェッサと気持ちを確かめ合ったうえでディーテルにゆずる、さわやかさが身上に思える。冒頭と二度のカラオケで歌うシーンの三回、主題歌が流れ、三度目がけっこう効果をあげる。
ジェッサがトロイと座るティー・ルームにメンゲー・コバルビアス演じる上司がきて、ディーテルも招こうと連絡したため、ジェッサがあわててトイレに隠れ、テーブルに携帯電話を放置で… のピンチをいかに切りぬけるかのドタバタ部分がまずまず笑える。
またジェッサが軽い性格に登場でバカっぽいのに嫌気がさすも、後半に自分の身勝手さに涙を流し、常識をわきまえているのが許せる。ディズニーのトウィーティーというキャラクターの商品をいつももっていて、どうもディズニー好きはサンリオ好きともども、軽薄なイメージがつきまとうのは個人的な偏見か。堂々とディズニー製品を画面に映している点に、著作権意識の少ない国の特権、なんて感じるのは別の話。
サブ的なおもしろさではジェッサの部屋にジェームズ・ディーンのポスターが貼ってあるのが目を引き、ジョンがジェッサにチョコレートを贈るあたりがいかにも。ジレットの勤めるブティックのオーナーがマニー・カスタニェーダ演じるオカマなのにハハンとうなずき、ジェッサのハンドル・ネームであるナディーンをトロイが「ネイディーン」発音としてアメリカふうを強調に納得。ディーテルが真っ赤なＹシャツを着て、ジェッサが青いワンピースのかっこうから、原色の似合う民族性が伝わってくる。
ただしジェッサが意外にもブスなのは、驚くと同時にマイナス。白塗りに唇だけ赤かったり、ベタベタ厚化粧のせいで、このヘタなセンスはなんとかしてほしい。トロイの別荘へいってスタッフが騒ぐ中、ビーチへでるも、水着がほとんどみえないセクシーさ不足も不満を助長する。むしろトロイの海パンのほうが際だち、ジェッサと初めて会うホテルのバーへプールあがりでバス・ローブをはおって現れるほか、ジェッサを誘うプール・サイドと三回も海パンになり、上半身ハダカでホテルの部屋に立つ姿もあって、トロイの肉体美ばかりを優先は女性ファンへのサーヴィスだろうか。いずれにしてもジェッサの魅力不発が満足度をさげる。
あと女優陣ではジェッサの同僚を演じるカリラ・アギロスとジレットが刺身のつまの役をはたし、クリスティナがやや美形だった。
