ＢＡＫＡＴ
（刻印）
　
02年：セイコ・フィルムズ
監督：フランシス・“ジュン”・ポサダス
主演：ダイアナ・スビリ
　　　 ロデル・ヴェラヨ
　　　 リタ・アヴィラ
　　　 トミー・アブエル
　　　 ダリア・ラミレス
　　　 アナ・カプリ
　　　 アルベルト・デ・エステバン
　脚本を執筆したルアルハティ・バウティスタの名前がタイトルと同列で大きく登場し、フィリピン映画にしては珍しい扱い。それにしては稚拙なストーリーだが、ダイアナ・スビリの魅力でみせてくれる。
　リタ・アヴィラとロデル・ヴェラヨ演じる姉弟がいて、トミー・アブエル演じる父親を憎んでいるとの関係。ロデルの胸には少年時代にトミーからベルトで鞭打たれる暴行を受けた際についた、バックルの傷あとがくっきりと残っている。あるときロデルがトミーの家に帰ってみるや、ダイアナ演じる色っぽい娘がいたからびっくり。ダイアナはやや知恵遅れで、身元未明だからトミーが引きとっている設定。ロデルとは親子の確執を持ったままなのに、トミーがダイアナに対しては目一杯の愛情を注ぐのが、いかにも男の弱さ。当然、アナ・カプリ演じる婚約者がいながら、ロデルもダイアナにほれていくわけである。
　トミーが亡くなり、ダイアナの家を探して記憶をたどる旅をするとき、ロデルがフとダイアナをガソリン・スタンドへ置き去りしようとのマがさすあたりは、なんとなく理解できる。アルベルト・デ・エステバンなどが演じるスタンドの店員が、いかにもダイアナをレイプしそうな雰囲気ながらも、ロデルが戻ってくるまで泣きじゃくるダイアナをやさしく相手しているエピソードは、ちょっとフィリピンぽさがうかがえるよう。
　ロデルがトミーの遺産を調べるうち、クリスタル・ハシント演じる母や、幼い自分に暴君だったとのイメージしかなかったものの、トミーが漁船のオーナーであり、自分と姉の名前を船につけていた事実を知って驚く。ダイアナがあずかっていた有価証券や預金通帳、宝石をしまってある箱から家族の写真を大切にとっているのを発見してロデルが涙する心理は、なかなか共感できるタッチに描けている。あとでリタにも同じシチュエーションが用意してあって、家族の誤解を解く部分は納得の構成。フランシス・“ジュン”・ポサダス監督にしては、とは失礼ないいかただが、うまさを感じとる。
　でも肝心のダイアナの人間描写がイマイチで、自らオッパイをもんでもだえるかと思えば、人形を買ってもらって子どもっぽくはしゃいだり、衝動的な性格を狙うとはいえ、いささか散漫すぎる。村のガキどもが石を投げてからかうなど、二度あるイジメでダイアナが無意識のうちに子どもへケガを負わせるとき、アホじゃりをしかりもせず、ただダイアナに偏見をぶつけてくる親たちの自分勝手さは、どこかの国と同じじゃないかとニヤリ。実際のフィリピンはこんなにひどくないと想像するも…　モン・コンフィアド演じるロデルの幼なじみが抗議して、ロデルがダイアナを問いつめるときにぶつ暴力性や単細胞さからは、建築家というインテリっぽい職業になっているのに、バカじゃないのとあきれを起こさせる。ドメスティック・ヴァイオレンスなどのカウンセラーをつとめるアナがたくみに介抱してあげるあたりから、コミュニケーション能力を察するも、次第に嫉妬でアナがダイアナを憎むように変わるのは女心か。とにかくモンがダイアナをかばうロデルをボコボコに殴るにいたっては、本当にこれが友だちのする行為かよ、と異常性すらただよってくる。そのくせ新聞の捜索広告から判明してジュン・マパとマリルー・ヴェル演じるダイアナの両親が訪ねてくるや、お礼に五百万ペンをロデルに贈り、ロデルが豪邸を建て始めると、モンがすんなり謝っているから、カネを持っている奴＝エライというフィリピン人の価値観そのままの表出に笑いが起きるくらい。簡単に許すロデルのほうも、あそこまで暴行を受けたら裁判に訴えるのが普通なわけで、寛容にもほどがある。
　ひどい内容だ。
　もっとも海外就労していたというエドウィン・レイエス演じる夫とブティックを経営するリタにもカネにうるさい面を匂わせ、カネが入れば住居に還元したがる傾向も興味深く、ひどさゆえにかえってフィリピン人の特徴がきわだったといえるかもしれない。
　なんて皮肉が評価のポイントか。
　ダイアナのセクシーさについては、ウハウハ・ゾクゾクの大胆さに嬉しくなる。トミーと一緒に寝ているのをロデルがのぞくとき、白い下着の腰つきがそそる。ロデルがダイアナに迫られる夢をみて悩殺された心理を示すシーンでは、バストの谷間あたりで紐を結んだ前ひらきの半ハミ乳シャツにハイレグ・パンティー。外でホースから水浴びを始めると、どんどんシャツを濡らしていき、乳首がペタッと浮かびあがる。モロだしよりもそそるぞ、と興奮していると、ロデルが現れてシャツをビリッと左右に破り、オッパイを丸だし。ロデルから侮辱を受けたとショックのダイアナが家を飛びだし、ややシー・スルーのシャツで街を走りぬけるシーンでは、池まできて水浴び中の子どもたちを親がおいたてる中、ザブンと飛びこむ。あとをつけてきたモンたちが滝の上からのぞくのを気にもせず、全身にワンピースのシャツをスケスケに貼りつかせると、すぐに脱ぎ捨ててオッパイやお尻を披露。アップまであるオッパイは、みごとな張りぐあいと形のよさで、生つばゴックンのドキドキを誘う。トミーが家へ連れ帰り、風呂へ入れてあげるシーンへと続き、バス・タブから立ちあがるときに陰毛がチラッ。トミーがバス・タオルでボディーをふくのに合わせ、幼児のように身体をブルブルと揺するから、オッパイがタプンタプン。ロデルと誰もいないビーチへやってくる場面になって、ダイアナは海へザブザブ入りだすと、ロデルに「おいでよ」と声をかけ、「裸になろうよ」でワンピースをポイッ。オイオイそんなところへ投げると波にさらわれるから、服がなくなっちゃうよ、ずっとトップレスのままいるわけ、なんて心配はさておき、Ｔバック・パンティー一枚にオッパイ全開だから、うー、スゲーッ。アナとケンカしたあと、失意のダイアナが再びビーチへくるのは夜で、海からあがってきたスリップ姿のダイアナをロデルが抱きしめる。もちろんオッパイをドバーッの全裸へつながり、ロデルのお尻がアップになるのは余計だが、雨の降ってくる演出がにくい。三角ブラのような胸元を強調した衣装も刺激的で、乳首が隠れていてもダイアナのオッパイはフェロモンを発するんだから。
　先輩セクシー女優のアナもベッド・シーンを繰り広げ、いきなり冒頭から腰のあたりにだけシーツをかけて寝ていたり、バックから挿入しようとしたロデルにビンタしたり、座位で抱き合ったり、心が自分から離れたと悟ってロデルに指輪を返す決心につながるセックスで正常位からオッパイをチョロっとみせるも、普段の大胆さを控えているのがアレレ。いつの間にかプロポーションがおばさん体型に崩れたのも明らかで、つけたし程度なのはしょうがないか。
　まあ、ダイアナの輝きだけで十二分に満足なわけで、ほかの要素はオマケと割り切ろう。
　なお、トミー宅の家政婦役でダリア・ラミレスが、モンの妻役でオルガ・ナティヴィダッドが出演している。