ＢＡＤ　ＢＯＹ　�U
　
92年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ウィリアム・Ｃ・レアリー
主演：ロビン・パディーリア
　　　 モニク・ウィルソン
　　　 デニス・パディーリア
　　　 ヴィク・ヴァルガス
　　　 クリスティナ・ゴンサレス
　　　 ジョニー・ウィルソン
　　　 カルロス・パディーリア・ジュニア
　実にシンプルな設定のもと、ごく少数で二つの集団を全滅させる無理のある話ながら、二時間をけっこうみせるアクション作。
　ロビン・パディーリア演じる主人公が服役を終え、クリスティナ・ゴンサレス演じる妻と再会し、幼い娘と一緒に平和な暮らしを送ろうとする。デニス・パディーリア演じる親友の住む町を訪ねるも、ちょうど町ではヴィク・ヴァルガスがトップを演じる一家と、ジョニー・ウィルソンがトップを演じる一家が対立中。その抗争の巻き添えでクリスティナが殺され、直接に手をくだしたマルコ・ポロ演じるジョニーの息子に反省のかけらもなく、うすら笑いを浮かべるうえ、ジョルダン・オソリオ演じるヴィクの弟がマルコの始末にやってきて、折りしも証人に呼ばれていたロビンがなりゆきでジョルダンを撃つ。ヴィクが仕返しに残酷にもまったく無抵抗のロビンの娘を殺害したので、ついに鬼畜どもに対してロビンの堪忍袋の緒が切れる。
　モニク・ウィルソン演じるレポーターとディック・イズラエル演じるカメラマンのＴＶスタッフがからみ、アントニオ（トニー）・カレオン演じる議員が刑務所の視察にきたのを取材する際、出所したロビンとぶつかって、さっそくもめる。モニクがヴィクとジョニーの勢力争いのレポートを命じられ、町へくるや、ロビンと顔が合って「あのときの」でケンカする。二つのグループのところかまわぬ銃撃戦に驚き、警察に話を聞くと「目撃者がいない」で動こうとしないのに憤りを感じる。さすがにクリスティナを失ったロビンにモニクが同情をいだき、ロビンたちと行動するうち、ピンチで銃をとったディックが亡くなる。モニクが「あなたのせいだ」とロビンを責めると「俺は妻子を殺されたんだ」の反論のすえ、愛情が芽ばえ、最後はモニクも銃を手にする。
　リレット・ゴールドバーグ（シカンコ）演じるジョニーの娘をロビンが誘拐し、暴れるリレットに手を焼きながらも、デニスが気に入る。次第に状況がわかったリレットがわざと人質のふりをして、ジョニーの攻撃から逃れるなどのあと、ロビンとジョニー一味の対決に「父や兄を殺さないで」と叫ぶ。
　ようするにこれは憎しみと悲しみの連鎖、ひとりが仇を討てば、またあたらな仇が生まれる矛盾を描いているのであって、それだけに殺人という行為がもつ重大な非人間性が際だつ構成ともいえる。ロケット弾を放つジョニーや、洞窟で火炎放射器をふるい、ロミー・ディアスがボスを演じる傭兵を雇ったヴィクと決戦で、常識的には勝ち目のない状況を耐えぬくご都合主義はしょうがないにしろ、やっと動いた警察の到着に、傷ついたロビンがモニクに支えられ、デニスがリレットとともに投降するラストが爽快感にほど遠く、むしろむなしさに満ちる。リカルド・“ベボン”・オソリオとロビンフッド・パディーリア、つまり主役本人のストーリーをもとにフミルデ・“ミーク”・ロハスの脚本が、どこまで暴力の意味を問う姿勢だったかはわからないし、ウィリアム・Ｃ・レアリーが単純な復讐劇以上の内容を目指したかは疑問なものの、そこそこの皮肉なドラマを展開する。まあジャングルで罠を張るも、なかなか相手がかからないといったユーモアの要素がジャマにならないあたり、一応は評価できる演出。
　案外と拾いものに感じる。
　ロビンの“バッド・ボーイ”と呼ばれるキャラはロッド・サンチャゴの原作であり、うまく英語を話せないぎごちなさや、クリスティナに亭主関白で接するのに、実際は尻にしかれているおかしさはコミックの影響だろう。「二年ぶりだ」とロビンの鼻息が荒くなってクリスティナがひるみ、ロビンが飛びかかるセックスも愉快だが、ここはかわいいクリスティナにセクシーな露出がほしかったところ。ベルティン・ラブラ演じるロビンの知人の山小屋に潜んでいるとハイメ・ガルチトレナ演じるジョニーの息子の銃撃をうけ、地下に逃れる階段のショットでリレットの黒いピタパンが食いこむヒップがみえて、ほんの少し興奮をおぼえた。