ＢＡＢＡＳＡＧＩＮＧ　ＫＲＩＳＴＡＬ
（壊れたクリスタル）
　
97年：アスター・フィルムズ
監督：ピーター・“キム”・ロナルド
主演：ラモナ・リヴィーリア
　　　 ジェス・サンチェス
　　　 レイ・“ＰＪ”・アベリアーナ
　　　 ジョージ・エストレガン・ジュニア
　　　 ガリー・ガリアールド
　　　 チェスカ・モレノ
　　　 ロナルド・サン・ホセ
　　　 ロミー・ディアス
　　　 レックス・ラピッド
　　　 レナート・デル・プラド
　　　 ルシタ・ソリアノ
　　　 ポチョロ・モンテス
　喜劇なのか悲劇なのかよくわからない作品がときどきフィリピン映画にあるが、その妙ちくりんさが楽しめれば文句はない。けれども支離滅裂だと思わせたら、ただの失敗作。
　これはジョージ・エストレガンに頭のよわい浮浪者を配役したところに、無理があるように感じる。
　ジョージは変質狂的な殺人者などを演じると異様な個性を発揮するが、子どもっぽさを残す大人という設定では、目元に説得力がない。いくら演技で頑張っても、目は正常さをうかがわせるので、どこか違うと思わせる。配役ミスだろう。
　舞台となるのは、地方にある架空の小さな農村。まずラモナ・リヴィーリアとカレン・ヴィリアール演じる女性が犯されそうになるシーンから始まる。ラモナの父が犯人たちを殺すのだが、その中の一人に有力者の弟がいたことから悲劇に。強欲な市長の陰謀もあって父は釈放されず、それどころかちょっとしたスキに逃げようとしたとき、妻とともに撃ち殺される。街では暴力がなくならず、カレンの兄も殺人の犠牲に合い、これはもうみるからに無法地帯。いくらなんでもフィリピンにこんな場所はないだろうとあきれさせる。
　ラモナにはレイ・“ＰＪ”・アベリアーナ演じる恋人がいるが、二人で街をでようとしたら、今度は恋人も射殺。もはや悲惨の極致としかいいようがない。
　こうしたどっと暗い物語の間に、ジョージの精神薄弱者が、さして面白くもないギャグを展開のエピソードが挿入される構成。
　ジョージはすぐに夢想にふけるのだが、いずれもチェスカ・モレノ、ラモナ、カレンの三人の女優が演じるキャラクターに関するものばかり。それもカッコよく決めて、彼女たちからモテモテになるというもの。頭のよわい人物と、りりしい人物を演じ分けようとの狙いだろうが、わざとらしさのほうが先立ってしまっている。
　ピーター・“キム”・ロナル監督はごった煮的な面白さを意図したと推測も、コメディー部分で笑えないのでは不発。
　三人の女優の中では新人のチェスカが一番かわいく、イメージ・シーンでキュートなビキニ姿を披露が嬉しい。ただ、もっとプロポーションがよくみえる撮りかたをしてほしかったなあ、との不満が残る。カレンはオッパイをあらわにするが、容貌的に落ちるので、少しもときめきをくれない。一応スターであるラモナは、レイとのベッド・シーンでパンティー姿にセクシーなヒップラインをみせ、ジョージとのイメージのベッド・シーンでは乳首までバッチリ全開なものの、個人的にそれほど好みじゃないから冷静にみてしまう。
　ようは女優がもたらせる魅力の部分も薄いといわざるをえない。
　完全にハズレ作品だ。