ＢＡＢＡＮＧＯＮ　ＡＫＯ’Ｔ　ＤＵＤＵＲＵＧＩＮ　ＫＩＴＡ
（私が起きあがり、あなたは私に打ち崩されるだろう）
　
89年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：リノ・ブロッカ
主演：シャーロン・コネータ
　　　 ヒルダ・コロネル
　　　 クリストファー・デ・レオン
　　　 ベンボル・ロコ
　シャーロン・コネータ主演のスター企画において、リノ・ブロッカが演技的な勝負をシャーロンへぶつけたようだ。みごとな変身劇に魅力を爆発させるとともに、本格的な女優への成長をうかがわせる。
　ヒルダ・オルヴィダッドのＴＳＳコミクスを原作にするジョエン・チョングロの脚本は、かなり下世話な物語。
　ごく普通の女性だったシャーロンが父親の望みもあって、クリストファー・デ・レオン演じる恋人と結婚する。ビジネスに野望をもつクリストファーは家事をこなすだけのシャーロンに不満をおぼえ、いらだちをぶつけまくる。たまたま訪れた貿易会社でヒルダ・コロネル演じる重役と出会い、いきなり意気投合。ヒルダがクリストファーをパートナーに迎えると、プライヴェートでもアタックを始める。ある日、ウィリアム・ロレンソ演じるヒルダの部下が、睡眠薬を飲ませてシャーロンをレイプ。その現場へ踏みこんだクリストファーがシャーロンを追いだし、ヒルダと一緒に暮らすようになり、シャーロンが路頭に迷う。靴屋や飯屋へ勤めるも、接客やオーダーとりがうまくいかずにクビ。住みこみ子守りになると主人から犯されそうなめに合い、夜の街で倒れているところをベンボル・ロコ演じる男に助けられるまでが前半。モナ・リサ演じるおばあちゃんを中心に、大ファミリーのベンボルの一家と幸福な日々で、めでたしめでたしのはずが…
　どうやらベンボルは裏の商売にかかわっているようす。シャーロンからの告白を聞いて射撃を教え、市長となったクリストファーが再選に挑んでいると知って、怒りから復讐を約束する。まず支援者を装ってウィリアムを呼びだし、シャーロンがレイプの真相を問いただしたあと、ベンボルがウィリアムを射殺。実質、選挙を仕切るヒルダに対して子どもを連れ去るなどのいやがらせで恐怖を与え、シャーロンがヒルダをら致。「警察へ訴えても、スキャンダルが明るみにでるだけよ」と脅す。ついにヒルダとクリストファーをおびきだすや、ヒルダがカネで解決しようとするのを「あなたの人生をもらう」と退け、クリストファーの目の前でボーイ・ロケ演じる手下にレイプさせるクライマックスへ。途中からシャーロンの行動を心配げにみまもっていたベンボルが、駆けつけた警官に撃たれるラストを迎える。
　映画は後半にがらりと雰囲気を転じ、始まりと終わりを比べれば、同じ作品とは思えないほど。庶民の顔だったシャーロンがベンボルのもとでメイクをほどこし、カジノのシーンなどでうっとりするような色気を漂わせるから、この変貌を演じるのに醍醐味をおぼえたのではないかと感じる。
　ウィリアム殺害におけるシャーロンの反応が説得力を欠いたり、ベンボルのシャーロンに対する愛が伝わりにくいながら、くだらないストーリーのわりに、よくテンションを引きつけたといえる。それにしてもリノはしょっちゅう政治家の実態を題材にとっていて、よほどこの人種が嫌いなのだろう。
　内容はさておき、ヒルダがクリストファー宅へ車をもってきて歓喜させるのが上流の条件をにおわせるうえ、一緒にドライヴのときに愛撫。クリストファーが帰る前に口紅のあとをふきとるショットや、ホーム・パーティーで家政婦あつかいのシャーロンが、ふとヒルダの手がクリストファーにふれているのに気づくショットの挿入など、アイク・ハルレゴ・ジュニアの編集も手伝い、リノのテクニックのうまさがキラキラ輝く。一ヶ所、シーン転換で同じような構図のショットが重なって、つながりの悪いところがあるのが残念。
　色っぽさではシャーロンがブラの背中をチラつかせる程度ながら、ヒルダは親族が政治家の系統だとクリストファーに紹介のあと、自分の部屋でセックスになるときにオッパイがこぼれそうでムズムズを呼ぶ。でもレイプでの露出はおざなりレヴェルにとどまり、セクシーさは不発だったようだ。