（窓際の娘）
98年：リーガル・エンターテインメント
監督：チト・Ｓ・ローニョ
主演：リチャード・ゴメス
ロサンナ・ローセス
ジョン・エストラダ
エフレン・レイエス
やっぱりチト・Ｓ・ローニョはすごかった。
そんな実感が盛りあがってくる驚愕の一編。単純にロサンナ・ローセスのセクシー・シーンを期待しただけだったから、余計に意表をつかれた感じともいえる。
まず中国語のタイトルが入り、京劇をバックにチャイナタウンでの襲撃戦を描く開巻部が、一体何を描こうとしているか、との好奇心をかきたてる。
一転、水中撮影でプールに潜っている人物を映して「？？？」とカマをかけたあと、貧民街でのハデな夫婦ゲンカへと移る。リチャード・ゴメス演じるダイヴィング・スクールのインストラクターの夫がふがいないため、ユーラ・ヴァルデス演じる妻が子どもを連れて家出。リチャードが狂ったように暴れたあと、ついには感電自殺しようとするのをレーモンド・キアヌーとモン・コンフィアド演じる友人が静止を試みるのだが、とにかくド派手な暴れかたに、みているほうは唖然。貧民街の別の地域にあるエフレン・レイエスがオーナーを演じるアパートへリチャードを引きとってもらうも、精神不安定なリチャードの奇行が続く。
ルシタ・ソリアノ演じる娼婦気どりのオバサンがいたり、部屋からお尻をだしてみせる変態野郎がいたり、刺青を痛がりながら彫っている男がいたり、蜘蛛を格闘させるゲームで賭けを行っている者たちがいたり、とにかく日本人の概念でいうところのスラムの光景が、ちょっと誇張されたリアリズムで興味深い雰囲気をつきつけてくる。ドブを走る野ねずみをガキどもが棒でつついて遊ぶ様子など、『ワイルドバンチ』のサソリを焼く子どもたちを彷彿とさせる。
まさにイマイチ訳のわからないまま展開するこの導入部だけで、十分に水準を越えてるぞ、との納得を伴う迫力。
リチャードの部屋からは、正面に向かいの窓をのぞけるのだが、暑いのでいつも開けっ放しで、そこにロサンナ演じる美女を目撃でドラマへと進む。どこか『裏窓』に似たピーピングのジャンルといえるものの、とにかく道をはさんだ反対側だけに自然と視界へ飛びこんできて、男なら誰でも若い女性がうろついていたら、つい気になってみちゃうだろうとの設定が自然でよい。
だんだんとロサンナに引きつけられたリチャードは、男が現われてセックスしていることから、さらにズルズルと深入り。いわば変形した嫉妬なのは、誰の目にも明らか。
ついにはロサンナの部屋へ忍びこむも、いきなり帰ってきてクローゼットへと隠れ、ロサンナがクローゼットを開けたからハッと驚き、「どうした？」とジョン・エストラダ演じる恋人らしい男がたずねると、「虫がいた」とリチャードの顔をめがけて殺虫剤を噴霧する。ジョンと階段で愛撫をはじめ、その間に「逃げろ」とロサンナがリチャードに目くばせするなど、いかにも裏のありそうな行動がミステリー趣味をかき立てる。ジョンにぶたれるところをみて怒りをおぼえ、窓から相手をながめながらリチャードが電話をかけたり、部屋へ「入れてくれ」とせがむなど強引なリチャードを拒むも、やがてロサンナのほうからリチャードの元へやってくる心理にも無理がない。
実はジョンが悪徳警官であり、ロサンナに強奪したカネを預けている事実がわかって、冒頭の銃撃戦のエピソードへと結びつく。リチャードとロサンナのセックス、リチャードとジョンの格闘、リチャードと逃げるロサンナ、ジョンを撃つロサンナ、と急展開にクライマックスを築いたあと、ジョニー・マナハウ演じるジョンのボスで、これまたワルの警察が登場でのツメが圧巻。
ある種、狂気のような愛に対してリチャードはこんなふうに決着つけるのか、との予想をはるかに上まわる、まさに衝撃の結末が待っている。おそらくロイ・イグレシアスの脚本が素晴らしいうえに、チトの演出による熱気を帯びた人間性の発露が鮮やかに映像へと昇華したのだろう。
残念ながら文字ではこの興奮を十分に伝えることができないので、「是非みてください」以外に言葉がみつからない。
しばらく呆然状態を誘発する、マジですごい作品。
もちろんロサンナがしっかり脱いでいるのは、文句なしの嬉しい要素になっている。リチャードとのセックスに発展すると、黒いボディコンからまずオッパイがポロリ。部屋へ入るやいよいよ全裸で、ブルーがかった画面の中、オッパイやお尻のみならず、陰毛もチラつく。ベッドでは乳首をみせっぱなしなのが、ペロペロ舌なめずりしたいくらいにおいしそう。リチャードにもまれるときのオッパイの質感もムズムズとそそる。さらに二回目は嵐の夜で、雨漏れするからポタポタとしずくがたれて濡れながらのセックスが『ＳＣＯＲＰＩＯ ＮＩＧＨＴＳ』の影響かもしれないと思うも、はったりの効かせすぎじゃないか。なんてイメージの下、ロサンナはまたもオッパイ丸だしで、うーん、スゲーッ。
エロス面でも完全に合格。
あとリチャードを元気づけるためにエフレンたちがジャニス・フラド演じる太った中年の娼婦を呼んでくるのだが、ストップ・ウォッチを押して「ゲームよ」とセックスを始めたジャニスは黒いボディー・スーツの下着からオッパイをモロみえにし、リチャードの顔を胸の谷間へ押しつけたり、黒いパンティーに包まれた大きなお尻を乗せたり、すごい熟女パワー。黒めの乳首のアップまであって、みているほうまで「やめてくれー」と叫びそうになる。
ユーラに際どいシーンがないのは、かなり残念かな。
それにしても、怖いくらいに人間臭がみなぎった映画、といっていいんじゃないか。
