ＡＳＷＡＮＧ
（悪霊）
　
11年：リーガル・エンターテインメント
監督：ジェロルド・タログ
主演；ロヴィ・ポー
　　　 パウロ・アヴェリーノ
　　 　ジリアン・ワルド
　　 　アルビー・カシーニョ
　フィリピンのホラーで定番的な悪霊のアスワンをあつかう。となれば、またかとのイメージで期待がしぼむ。しかもペケ・ガリアーガとロール・レイエスによる１９９２年の作品のリメークらしい、なんてマイナス要因を抱かせる企画ながら、大好きなニーニャ・ホセの出演にときめく。
　いわゆる正統なホラーと異なる構成。
　パンパンガの田園地帯で盲目の農婦のグアダ（カリラ・アギロス）が夫のマヌエル（ジェーク・マカパガル）を少女のアスワン（リアンネ・ヴァレンティン）に殺されるプロローグをおき、地中をもぐって進むアスワンに、もぐらかよと苦笑がおきる。
　しばらくは犯罪アクションのごとき内容で進む。弁護士のアルゲリエス（エミール・メイリー）と夫人（ヴァレリー・ボンドク）がふたりのメイド（アグネス・ラモス、カルメン・デロス・レイエス）とボディーガード（ヴィンセント・カンド）ともども殺し屋のギド（マルク・アバヤ）とクイニー（ニーニャ・ホセ）に惨殺をうける。アルゲリエス夫妻の息子のガブリエル（アルビー・カシーニョ）と幼い娘のアーニャ（ジリアン・ワルド）が間一髪で家をぬけだし、殺し屋の運転手役のダニエル（パウロ・アヴェリーノ）が見逃したために助かる。殺し屋たちはボスのエディー（ノニ・ブエンカミノ）に追跡の指令をあおぎ、さらにエディーの配下になる警察のアントン（アーチー・アダモス）が部下の警官をともなって殺し屋の助太刀に向かう。あとで少年時代のダニエル（ジェラルド・ディー）がシンジケートに警官の父（アーチー・ヴァスケス）を目の前で殺され、成長後に犯人を順番に射殺しはじめるも、反対にエディーにつかまり、母（ドリー・グチェレス・デ・レオン）や弟と妹を人質にとられ、殺し屋にくわわったとわかる。
　汚職のドラマかと勘違いさせつつ、パンパンガでダニエルとアーニャが若い女性のハスミン（ロヴィー・ポー）と出会い、ハスミンが一緒に暮らす盲目の老女のグアダ（ジジ・エスカランテ）がふたりをかくまって本題にはいる。
　途中にガブリエルの車がキリストを祭って歩く行列に遭遇で、突然に老婆（ルイ・マナンサラ）が窓から中をのぞいたり、パンパンガについた殺し屋たちがミサの終わった教会の前で老婆（ロベルタ・Ｓ・デ・レオン）と話したりに宗教っぽいホラーのイメージをにおわせ、夜中までサリサリの軒先で飲んで女店主（スー・プラド）においたてをくった酔っぱらいがアスワンに襲われてモンスターものを具体化する。でもアスワンがガブリエルやアーニャをこっそり狙うなど、多少ユーモラスなサスペンス・タッチに思え、ジェロルド・タログの演出がいわゆるおどろおどろしい恐怖の表現を避ける。
　一方でハスミンがアスワンの長老的な白髪のモイセス（ベンボル・ロコ）と結婚せねばならず、この選択肢のない宿命への抵抗や、生きるために人間の血と臓物が必要なので殺人をおかす連鎖といったアスワンの悲しみに視点をあてるドラマを主体におき、アロイ・アドラワンとジェロルド・タログのストーリーがセンティメンタルなムードをつくる。ハスミンがグアダに夫の殺害は自分だと告白のシチュエーションなど、安易な涙を誘う。脚本のクレジットを欠くが、おそらくアロイ・アドラワンの執筆だろう。ジェロルド・タログはモイセスのただれた身体や、アスワンの婚礼の儀式を西洋の化けものや魔女ふうに描き、アスワンたちが人間の心臓をえぐりだしたり、血のしたたる牙の口元をリアルなグロテスクさで映像化にＣＧを活用でありきたりなホラーのレヴェルを守る。
　まあ、ハスミンがアスワンなのは最初から明らかで、ダニエルとハスミンが恋に陥ってロマンスの要素をプラスのうえ、嫌がるハスミンとモイセスのキスで舌がのびるＣＧは妙に笑えるし、ダニエルの蘇生のＣＧなどはハテナ印が残る。ハスミンがモイセスを拒み、モイセスの怒りでハスミンの姉のステラ（プレシャス・ララ・キガマン）が犠牲になる展開に、かえって悪霊の恐ろしさが弱まる。アスワンに内輪もめはどうよって感じ。強行なエフレン（ジョエム・バスコン）やハスミンの妹のかたくなイサベル（アナ・ヴィセンテ）、生真面目なカルディン（ロリ・イノセンショ）に従順なアト（ミゲル・ラミレス）とヒルダ（ラニ・タピア）といった脇のアスワンはキャラづけができたかな。
　ダニエルが沼でアスワンに襲われた際に銃で撃っても効果がなかったにもかかわらず、ギドとアントンたちがアスワンの軍団と対決で激しい銃撃戦は、ちゃんと統一せいと曖昧さにシラける。
　もっとも女優が輝けば文句なしが個人的な志向で、ロヴィ・ポーはさほどでもなく、モイセスの前で身体にオイルのようなものをぬる女性の顔がみえず、ロヴィ本人かどうか不明なこともあり、ときめきが薄いながら、絶世クラスの美女のニーニャ・ホセにあこがれが燃えあがる。ずっとジーンズとブーツをとおして脱ぐシーンがないも、好みのスタイルだし、ジーンズのお尻のアップにドキドキ興奮。アスワンにつかまったあとは残虐な拷問をうけ、ジーンズの太腿あたりを裂かれたりで水分に湿ったジーンズが下半身にピタリと貼りつき状態になる。この着衣のままのセクシーさは我慢汁がでてくるほど。
　ジェロルド・タログのテンポのよい語り口とニーニャ・ホセの魅力で意外と楽しめた、と素直に評価できる。
　ほかにララ・キガマンの美貌が気の強い個性にあい、ステラの少女時代を演じるスー・ラミレスはカメラが遠くて容貌がしっかりうかがえずじまい。アナ・ヴィセンショとカリラ・アギロスは容貌がやや落ちる。エディーの情夫役でモデル出身のジャンナ・チャンコが台詞がなく出演し、プールサイドで半襦袢、ベッドでスリップ、ビリヤード場でボディコン・ミニと太腿が挑発的な衣装をみせるも、水着がなくて残念。アスワンの被害続出で住民たちが避難のシーンで、トライシクルに乗るエキストラの女性がかわいかった。