ＡＰＯＹ　ＳＡ　ＰＵＳＯ
（心の火）
　
92年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ローリス・ギリエン
主演：ドーン・スルエタ
　　　 リッキー・ダヴァオ
　　　 ガーリー・エストラダ
　　　 ジェリー・デ・ベレン
　　　 ビン・ロイサガ
　　　 リザ・ロレナ
　　　 ジョニー・ウィルソン
　　　 ムチャ・クリソストモ
　　　 ルエル・ヴェルナル
　　　 アンジー・フェロ
　タール湖の火山の噴火に合わせた愛憎劇。リッキー・ダヴァオ演じる火山学者が、ビン・ロイサガ演じる同僚と不倫関係にある。ドーン・スルエタ演じるリッキーの妻は、さみしさをリザ・ロレナ演じる母に甘えたり、ムチャ・クリソストモ演じる友人との交際にごまかしている。ある日、ガーリー・エストラダ演じる若者が運転中にジェリー・デ・ベレン演じる恋人とトラブルになり、事故を起こす。ケガを負って手当てを頼んだのが、たまたまドーンの家。年上のドーンにガーリーがほれ、ドーンも愛欲におぼれていくとのストーリー。
　冒頭、ドーンとムチャが買いものにまわる田舎のマーケットのけん騒がよくムードを伝えるが、空気の異常を述べるのが噴火への伏線として唐突。グレース・フィゲス、ジェニファー・アン・ドゥール、ロイ・デ・グスマン（ロドリゴ）などが演じるドーンの友人たちへリッキーが火山の説明をするのは、さり気なく観客へ知識を与えようとの意図だろう。リッキーが村人たちへ噴火の警告へでかけると、あからさまに迷惑がられ、アンジー・フェロ演じる頑固なおばさんからケンカ越しに追い返されるのは、どこまでが実態に近いのだろうか。あとで地震の揺れが始まったにもかかわらず、まだ警告に耳を傾けず、漁民たちが網を手入れしているようすには、いくらなんでも生命の危機に対する意識が少なすぎて、ややフィクションを感じる。ここへ住まないと生活の糧が得られない、との気持ちは理解できるのだが…
　以前、雲仙の普賢岳が噴火して島原の住民たちが避難生活を送っているニュースをみたときのこと、畑の作物が心配だからと危険を冒して状況を確認にいく農民たちの姿に、火山地で暮らすのは大変だなあとの感慨をうけた。でも作物というのがタバコの葉と知って、一気にさげすみへと変わった。タバコなんかつくっている連中は、みんな火山灰でやられちまえ。普賢岳関係の報道に、一切、関心を失った。
　なんて話はさておき、ジェリーが車の横転で視神経をやられ、一時的な失明状態に陥る。ジョニー・ウィルソン演じる父がジェリーへルエル・ヴェルナル演じるボディー・ガードをつけているのが、ジョニーとガーリーがゴルフをするのと同様にカネもち層の現われ。ジェリーの手術にガーリーがつきそっていて、じゃあ、事故のあと単独でドーンの家へきた行動はどう説明するのとの疑問がわく。ドーンとはっきり別れないリッキーをビンが責め、ドーンとガーリーの関係に気づいてジェリーが荒れる。ついにリッキーがドーンとガーリーの仲を知り、ドーンを別宅へ連れていく。どうやらドーンに子どもができないのが浮気の原因らしく、たくみにドーンへ愛情を残す設定をしく。ドーンがビンに会ったあと自殺未遂を起こし、リッキーがビンと別れる決心をする。
　といったドラマが火山活動と並行で語られればいいものを、なぜか映画は普通の四角関係劇のように展開していて、アレレと首をひねる。別宅へきた直後にいきなり地震が勃発のうえ、リッキーとガーリーが火山の裾野で殴り合いになったとき、タイミングよく噴火開始で地面から蒸気が吹きあげるのは、けっこうわざとらしい。
　まったく火山活動の変化を主人公たちの心理にダブらせれば、みごとな構成とうなったに違いないのに、アイディアを生かせないまずさが致命的。リカルド・リーの脚本に不満をぶつけたくなる。
　いざ噴火で逃げまどう人たちが我先にとバンカーへ乗ろうともがき、幼い子どもが倒れ、湖へ馬を引き入れようとしたり、家畜をバンカーへ連れてくるものがいると、その家畜が水中へ投げこまれたり、暴動をリアルに描く。定員を越えたバンカーにあがってくる追随者を櫂で叩きのめすなど、人間の自己中心性を強調しているよう。そのくせ駆けつけたドーンやガーリー、リッキーが格闘もなくバンカーに移り、肝心の部分でご都合主義。さすがに火山弾がビュンビュンと飛んでくる光景は迫力に満ち、機関銃射撃のごとく湖面にボトボトボトっと落下でしぶきをあげ、バンカーに当たって何人もがふり落とされる。大きなかたまりがビンに命中する瞬間は、ハッと息をのむ。なんて賞賛の反面、対岸へたどりついたらビンがいかだの担架で運ばれ、待機していた救急車へ収容だから、いつ救急車の手配を連絡したのか、なんで相当な人数が死傷しているにもかかわらず一台で、ビンだけなのか、といった皮肉がわいてきて、さっぱり納得できない。ルエルの車の座席につくや、生死にあえぐ外の騒ぎなど無関心顔でジェリーがウォークマンを聞き始めるのにタカビー女の嫌らしさはでたかもしれないが、避難民の流れに逆らってドーンが歩き、リッキーと再会するラストが絵空ごと。
　いやはやローリス・ギリエンは細部にねちっこいこだわりを加えながらも、基本的な人間の本質に迫るポイントで落第だったと評価せざるをえない。意欲が裏目にでた失敗作、といったレヴェルだろうか。
　とにかく構成ミスが最大の短所と指摘したい。
　もっとも、女優の魅力がけっこうときめきをくれるのが嬉しい要素。ビンはリッキーと二度のベッド・シーンでパンティー一枚にガウンをはおったり、ボディーをシーツでくるんでいたりにぞくぞく。ジェリーはガーリーへ迫るとき、トップレスを背後からのみ。ムチャはジムでのエクササイズでレオタード姿どまり、と軽い挑発のみなのだが、大ファンのドーンのセクシーさが興奮を呼びこむからウヒョヒョヒョヒョ。正直いってドーンが出演しているという配役が鑑賞の第一の目的なので、よだれがとまらない。リッキーが射精して終わりのセックスはおざなりな露出ながら、ガーリーとの愛撫でワンピースからパンティーをおろされるショットがビンビンを招き、乳首があとちょっとの上半身ハダカになるので我慢の限度を破る。寝ているとリッキーが帰ってくる自宅でのスリップ姿は、胸元がズレて谷間がのぞくのに視線釘づけ。ムチャとのエクササイズで自転車をこいだり、腹筋運動のレオタードには、タイツにくるまれた股間にしびれそう。バスタオル一枚でサウナに入ったあと、マッサージになって、ムチャともどもお尻の上にタオルをかけただけで台にうつ伏せで寝ころび、脚をもまれるところで挑発がきわまる。背中は丸だしなうえ、台に押しつけた乳房が横からおがめ、ひょっとしてタオルをとるとドーンは全裸かなあとの妄想がわきあがる。さらにガーリーとのキスで胸元が大胆にあいたガウンがそそるし、自殺未遂後のリッキーによる看病でガウンを脱がされ、裸身にキャミソールを着るのだが、またも乳首ギリギリのバストが誘惑光線を放ち、ああ、もうダメ。この小さめのバストに吸いつきたい。結局、肝心のパーツはみえないものの、十分に満足。なんたってドーンだから…
　愛してる、愛してる、愛してるよ、ドーン。
　欲をいえばガーリーが写真家の役で、ドーンのポートレイトを撮っていて、ヌードとはいかないまでも、水着や下着のないのが残念。ムチャがビーチへいく電話をしたのに、いかないままが惜しかった。