ＡＰＯＹ　ＳＡ　ＤＩＢＤＩＢ　ＮＧ　ＳＡＭＡＲ
（サマールの胸の火）
　
06年：ノース・イースト・フィルムズ
監督：ホセ・‘カカ’・バラグタス
主演：マーク・ラピッド
　　　 クリスティン・レイエス
　　　 ロイ・ヴィンソン
　　　 エリザベット・オロペッザ
　　　 ディック・イズラエル
　　　 ジェス・ラピッド・ジュニア
　　　 キング・グチェレス
　　　 アマイ・ビサヤ
　　　 メイナルド・ラピッド
　ストーリーとしては型どおりのＢ級アクションといえる。
　フィリピン各地で木材の不法伐採が相次ぎ、サマールではダンディン（ロイ・ヴィンソン）をリーダーにする軍隊がとりしまる。でも待ち伏せの襲撃をうけて命を落とし、息子のダニエル（マーク・ラピッド）が葬儀に帰ってくる。父にかわって正義を実行に移すが、土地の顔役のドン・ヴァルデロス（ディック・イズラエル）が黒幕なうえ、市長（レイ・エブデーン）や警察署長（ヴィク・ベラロ）まで丸めこまれているので苦戦を強いられる。また看護婦のカテリン（クリスティン・レイエス）とダニエルが恋に陥るも、カテリンはドンの娘との関係になる。ドンはカテリンにダニエルとの交際を禁じ、ダニエルの母のメルセデス（エリザベット・オロペッザ）はダニエルにカテリンと会うのを警告する。目撃者のグド（ロベルト・ゴンサレス）から父の殺害犯がリゴル（ジェス・ラピッド・ジュニア）だと聞いたダニエルがリゴルをつかまえようと動き、反対に警察署長に逮捕される。すぐに脱走でドンの配下をやっつけるや、ドンがメルセデスを拉致で脅してくる。ダニエルもカテリンを拘束によって人質交換がおこなわれる。
　あまりにも簡単にダニエルが署長の銃を奪うのが安易なら、複数の敵を単独で退治がどっちらけ。馬と四駆車の砂洲でのチェイスは障害があって馬のほうが有利といった工夫をこらすわけでなく、友人のフレド（メイナルド・ラピッド）だけを味方に、たった二人で圧倒的多数の雑魚を全滅においこむクライマックスのご都合主義にあきれるばかり。驚くほどに相手の弾は当たらず、こちらの弾は命中する。
　表現も型どおりのＢ級アクションになる。
　カテリンが横にいるにもかかわらずドンの部下がダニエルを撃ってくるし、ドンのヘマな手下への処刑と、ダニエルへ馬をもってきた友人のオゴイオゴイ（アマイ・ビサヤ）があっけなく殺される生命の軽視や、メルセデスが犠牲になる展開も予想の範囲内におさまる。フレドがグライダーを墜落させ、ダニエルがヘリコプターを爆破の見せ場はサスペンスを伴わないうえ、機関銃を投げわたすダニエルとドンの決闘は誇張がしらけにつながる。ダニエルとカテリンが出会いから恋愛をはぐくむ過程を描かないなら、父と恋人のはざ間で悩みカテリンの心理もおざなりとマイナス要素ばかりが目につく。ダンディンが伐採防止をとく住民が一般のエキストラ然としていたり、ダニエルとリゴルがもめる市内で外野の群集が映っていたりの細部の手抜きも気になる。ダンディンがバランガイ議長（ポリー・カドサワン）にワイロをもらっても悪を許さないキャラなのは、とってつけた印象が強い。
　でもダニエルがオゴイオゴイと鳥の世話をする農作業風景や、手でロープを引く渡し舟といった地方ならではの興味を抱かせる光景におもしろさが残り、神父（ヴィク・フェリペ）のミサと教会のようすなど、宗教色の盛りこみがフィリピンっぽさを感じさせて、まあまあかもしれない。植林活動のラストとともに、最初と終わりにナレーションを入れての自然保護の訴えかけがワザとらしいながら、こんな形の啓蒙もいいかなと思わせる。
　ただし目的はクリスティン・レイエスのセクシーさだったので、その表現はどうかのポイントにはかなりの不満がもたげる。自宅のプールから濡れてあがるも、貼りついてスケるシャツの下のブラは大きいし、ボトムに短パンをはいている。看護婦仲間（リザ・レガルダ、ケリー・モンテサ、ジェシー・マッシュ・マルセリーノ）とプールで遊ぶときも短パンをはいていると挑発が乏しくなる。看護婦三人のワンピース水着のほうがまだ視線を集めるくらいだし、自宅のプールにいる四人の女性（バーリア・チェンポ、ドナシル・エルマク、モーリン・レジェンシア、ダシル・エルマク？）のうちの一人がワンピース水着をお尻に食いこませて水からあがるショットにときめくほど。またはバーのステージにいるビキニのダンサー三名のお尻のアップに注目なんてのは、クリスティンの魅力がいかにでなかったかの裏返しと指摘できる。川で洗濯中にレイプ未遂をうける三人の女性は服を破られないうちにダニエルに救われるのが惜しく、ドンに抵抗する別働ゲリラの中には女性隊員がいて、シェーン・カバリーエスとマリネラ・デ・ジョスとともにイナ・アレグレが演じているのに、色っぽいシチューションを欠くのが期待を裏切る。
　まあ、ホセ・“カカ”・バラグラスは個人的に友人なので酷評はしたくないのだが、役者への信頼感は買ってよく、ここでも脇のチョイ役を個性派たちでかためまくっている。ドンの部下にキング・グチェレス、レヴィー・イグナシオ、アルヴィン・アンソン、ダンディンの部下にダニー・ラブラ、ロベルト・タルビー、エディー・トゥアソン、キング・グチェレスの部下にロベルト・ミレル、ボビー・ヘンソン、ジェス・サンチェス、レーイ・ロルダン、ノノイ・デ・グスマン、郊外の別働ゲリラにウィリアム・ロメロ、エルニー・フォルテ、その他にポール・“コンコン”・ラウス、テリー・ババサ、レネ・マチャスの動員はさすがになる。