ＡＰＡＴ　ＮＡ　ＰＡＴＡＫ　ＮＧ　ＤＵＧＯ　ＮＩ　ＡＤＡＮ
（アダンの血の四滴）
　
71年：ロダ・フィルム・プロダクションズ
監督：バブロ・サンチャゴ
主演：ジョセフ・エストラダ
　　　 サルディー・ショルナック
　　　 ロベルト・ゴンサレス
　　　 ヴィク・ヴァルガス
　　　 ローズマリー・ヒル
　　　 ヴァン・デ・レオン
　　　 レオポルド・サルセド
　フィリピン版西部劇といえる。イタリア製を“マカロニ・ウェスタン”（日本以外では“スパゲッティー・ウェスタン”）と呼ぶなら、さしずめ“シニガン・ウェスタン”か“アドボン・ウェスタン”とでも名づけたいところ。
　二つのファミリーが領地の境を争って対立し、それぞれがライフルをもつ野郎どもを部下ににらみ合い、ちょっと『大いなる西部』を思わせる、なんていいものじゃない。片方の領主のアダン（レオポルド・サルセド）が助っ人に四人の息子たちを呼びよせる。四人ともがわがままで頼りなく、ダメなイメージで登場はおなじみの図式。個別に訪ねる過程に『荒野の七人』のようなスカウトのおもしさはない。とにかくマカロニふうのスパニッシュ・ギターをバックに四人が戻る。家では食事前に父の感謝の祈りを忘れるあらくれ連中に表現され、絶えず兄弟ゲンカながらも、柵をつくったりと対決にそなえる。ケンカの原因が屋敷にいる女性をめぐるのがさもありなんなら、四人には弟がもう一人いて、ジャッキー（デンショ・パディーリア）との名のオカマなのがおかしい。一方のファミリーでは男まさりのジャナ（ローズマリー・ヒル）が領主を尻にしいている。柵をはさんでの撃ち合いのあと、川で村の女たちが全裸で水浴びを男どもがのぞき、その際に兄弟の一人のダニエル（サルディー・ショルナック）が相手方につかまる。実はダニエルはジャナと恋仲で、ロマンスがよみがえって二人がベッド・イン。アダンが病気で倒れて、兄弟が相手方の屋敷を襲い、ダニエルと一緒にジャナを連れ戻る。病身のアダンにジャナが謝り、ダニエルとの結婚を決めたとき、今度が相手方の襲撃をうける。ダニエルを狙った敵の弾が、とっさに守ろうとしたジャナに当たり、全面対決へ発展のすえに相手方をやっつける。アダンが亡くなり、あとをどう継ぐかでまた兄弟がケンカする。
　いかにも西部劇にみるガンマンのいでたちで野郎どもが拳銃を振りまわすながら、それっぽく描こうとの宙返りっぽい撃ちかたを含むとはいえ、しょせんは猿まねの枠をでない。スケールも乏しく、珍品のＣ級アクションぐらいの興味にとどまる。まったくに近くクロース・アップを撮らず、ミドル・ショットとロング・ショットばかりで語るパブロ・サンチャゴの凡庸な演出も退屈をまねく。兄弟を演じるうち、のちに大統領になるジョセフ・エストラダは存在感がさすがで、うさんくささもこの頃からとわかって苦笑いをさそう。サルディー・ショルナックはジャナとのからみで一応の見せ場を確保するが、ロベルト・ゴンサレスとヴィク・ヴァルガスの二人は、ただいるだけのレヴェルにとどまる。個人的には西洋風の美人のローズマリー・ヒルがベッド・シーンでシーツをバストにあてているのに視線を奪われ、あらためて若い時代は妖艶だったのねとの納得がおきる。