ＡＰＡＴ　ＤＡＰＡＴ　ＤＡＰＡＴ　ＡＰＡＴ　　ＦＲＩＥＮＤＳ　４　ＬＹＦ　ＡＮＤ　ＤＥＡＴＨ
（四人でちょうど、四人必要　生きても死んでも友だち）
　
07年：ＶＩＶＡフィルムズ／オン−Ｑ・28プロダクションズ
監督：ウェン・Ｖ・デラマス
主演：ルーファ・メエ・キント
　　　 キャンディー・パンガニバン
　　　 ユージン・ドミンゴ
　　　 ポクワン
　　　 ジョン・ラプス
　　　 ＤＪ・ドゥラノ
　　　 ディック・イズラエル
　　　 マリッサ・デルガド
　　　 クリスチャン・ヴァスケス
　海外就労ものの変形というべきか。
　葬儀会社をいとなむマリア・ リワナグ・“ブライト”・ディリマン（ルーファ・メエ・キント）、ピアノ教師のマリア・ダリサイ・“ダリー”・ダルハン（ユージン・ドミンゴ）、交通警官のマリア・リガヤ・“ゲイ”・カタクタン（ポクワン）、主婦のマリア・レスレクション・“レス”・マカブハイ（キャンディー・パンガニバン）の四人は同じバランガイに暮らす親友同士。よりよい生活を夢みてブライトの提案で香港へ家政婦の仕事にでかけるも、そこで強欲な雇い主の夫妻にレスが殺される。フィリピン人の出稼ぎの立場で警察に訴えもできず、レスが生きているがごとくフィリピンへ連れ帰り、レスの家族に死亡を隠し、レスの子どもたちの世話をする。留守で知らない間にブライトの恋人のアベット（キャン・カセミ）はブライトの葬儀社につとめるオカマのシュガー（ジョン・ラプス）と同性愛に走り、ダリーの夫のブラウリョ（クリスチャン・ヴァスケス）は愛人をつくっている。
　と、まともに描けば救いの乏しい悲劇ながら、これをアクの強いズッコケのコメディーで展開がフィリピン映画のパワー。
　ルーファ・メエ・キントが制作指揮を兼ね、メル・メンドーサ・デル・ロサリオのストーリーによるメル・メンドーサ・デル・ロサリオとアーリン・タマヨの脚本をウェン・Ｄ・デラマスが大げさに誇張のタッチで語り、たっぷりと役者の見せ場を盛りこんだスラプスティックといえる。
　冒頭にプトレマイオス朝末期のエジプト、スペイン侵略時のフィリピン、ナチス統制下のドイツ、ペロン政権下のアルゼンチンが登場し、いずれにおいてもキャンディーの演じる女性が殺されるのが伏線。クレオパトラに蛇をもってくるアントニー、ヒトラー、ペロンを、あとでレスの雇い主になるリチャード・エヴァーリーが演じる。ポクワンのクレオパトラ、キャディーの山岳民族ふうの衣装、太ったおばさんのユージンがシャツをまくってブラをだすナチスの制服もだが、ルーファのエヴィータがイメージにはまるパロディーをなす。エピローグの未来でもリチャードがキャンディーを餌食にする。
　四人が知り合うきっかけのバスの事故はまだ少女時代で、ブライト（クィーニー・リムソン）、ゲイ（リサ・ダウス）、ダリー（ジャネル・マリー・マリアノ）、レス（ニコレ・ドゥラリア）が引きのショットは子どもなのに、寄りだと声だけを子どもが吹きかえ、顔がルーファ、ポクワン、ユージン、キャンディーのまま。
　現在にかわり、ブライトが妹（アシュリー・グルエンバーグ）とシュガーと歌って踊る陽気な葬儀屋で、依頼者の事故死の遺体にびっくり。なんて他人の不幸な状況で笑いをとるギャグで進め、ダリーがピアノの生徒の腕をもぎとるネタは度がすぎる。ゲイの踊る交通整理はおなじみに近いおかしさをなし、車から車へ飛び、ぶらさがるアクションが『スパイダーマン』のまね。バスの事故の際にレスの両親らしき人物がヒッピーふうなファッションでヘアー・バンドを巻いていたが、今の家庭で夫のトトイ（ＤＪ・ドゥラノ）はわかるも、父（ディック・イズラエル）、母（マリッサ・デルガド）、夫の兄弟らしきふたり（チェスター・ノリエード、アンドルー・シマー）と大家族で、ＴＶのボクシング観戦に興奮でレスが飲みもの運びにパンチをよけ、バランガイの路上でケンカ騒ぎにワイヤー・アクションは、この香港映画発のしょうもない表現をマヌケに使用がよく、レスのファミリーの熱くなりやすい気質が後半につながる。
　香港に舞台を移し、ゲイの雇い人が四人暮らしのインド人で、ダリーの雇い人がドイツ人。部屋にナチスの旗を貼り、三人の子どもがダリーになつく。ブライトの雇い人の白人は、マザコンっぽい二十代の息子が裸で現われる。中国人がレスの雇い人だけで、それも白人との夫妻のあたり、ちょっと現実と違うながら、日曜日ごとに香港をぶらつくスタイルは、出稼ぎフィリピン人の一般像といえる。レスの雇い人がレスを信用していないと休みを与えず、不在のときに携帯電話をとりあげて部屋へ監禁状態で閉じこめ、食べものもおかないのは極端だが、暴力をふるう内容で、この中国人がサディスティックでごう慢なうえ、自分勝手な設定は、フィリピン人が抱く中国人の印象を無意識で反映かもしれない。ブライトとゲイとダリーがレスの働くコンドミニアムを訪ねるとき、廊下で男女が殴る蹴るのケンカ中なのが、また中華系の香港のイメージに思える。レスの雇い人の夫妻を白人のリチャード・エヴァーリーとともに、フィリピンのオカマ役の多い俳優のヴァイス・ガンダがチャイナ・ドレスで女装し、香港なまりの英語の台詞を駆使でレスに拳をくらわせ、飛びかかってキックの猛烈キャラを演じる。
　三人四脚などでレスを生きていると装って帰国は、どこか『バーニーズ／あぶない!?ウィークエンド』を連想させる。
　とにかくウェン・Ｄ・デラマスがテンポよく進めたが、レスの一家の怒りを恐れてレスの死をナイショにごまかすあたりから退屈さを伴い、もたつく感じが惜しい。時間がたっても死体が腐敗しないご都合主義を許せるだけの強引さに説得力を欠く。それでも体温の冷たいレスを抱いた全員が病気だと病院へいってマスクをかけ、サーズや新型インフルエンザじゃないが、こんなところまで笑いの材料にするかとプラスにあきれるうえ、レスのふたりの娘のうちのひとり（チスタ・レイエス）が小学校で好成績をあげ、メダル受賞の卒業式がシメをつくる。死体に化粧をほどこし、車椅子に乗せて出席で娘の栄誉をレスがながめるセンティメンタルさでホロリとムードを盛りあげるや、電気系統の事故で会場に火花が散ってドタバタに変わり、炎が車椅子に落ちて死体が燃えるトラブルに、わびしいやら、おかしいやら、みごな悲喜劇の折衷の例をみる。
　路上でタバコを売る息子（ヴィンス・サルダナ）と、新しい夫（エミール・サンドヴァル）に、その娘（キライ）がいるゲイの家族は適度なあつかいにおさまり、風呂場でブラウリョが蜘蛛の巣にまみれて座るギャグはシラけるかな。やたらブラウリョがパンツ一丁でうろつき、ダリーに体を洗ってもらい、浮気の発覚に熱湯をかけられてパンツのまま外の道路を逃げる男のセミ・ヌードは、いささか気持ち悪いも、女性ファンへサーヴィスだろう。
　主役の四人はオーヴァー・アクトで個性を発揮が圧倒的な存在感で、もちろんルーファ・メエ・キントはバストのセクシーさを前面に放つ。ダリーが生徒の腕をちぎるのに驚くときの赤い模様のワンピース、レスの夫や兄弟の刺青に描かれた鷹が襲ってくるＣＧの幻想での緑のワンピース、レスの死体を卒業式へ連れていく際の縞のワンピースで胸元の谷間をみせつけ、レスの墓をまいる三人のうち、ルーファの着る黒と白の喪服だけがバストを大きく開く。バランガイでケンカの騒動でお尻にぴったりの短パンも視線を奪う。
　また、アシュリー・グルエンバーグがキュートだし、子役のクィーニー・リムソンのお尻にフィットのベーージュのパンツがかわいい。ドイツ人の子どものひとりには子役のアリアンナ・エヴァーリーがノン・クレジットで顔をだす。病院の患者役でひょうきんなマダム・アウリンが出演。
　とくに注目はブラウリョの浮気の相手役のケイ・ヴィリアセウルになり、ビキニの下着にぞくぞくも、ちゃんと容貌のわからないのが残念だった。