ＡＮＧ　ＳＹＯＴＡ　ＫＯＮＧ　ＢＡＬＩＫＢＡＹＡＮ
（私の恋人は海外在住帰国者）
　
95年：ＦＰＪプロダクションズ
監督：パブロ・サンチャゴ
主演：フェルナンド・ポー・ジュニア
　　　 アンジャネット・アバヤリ
　　　 マリトニ・フェルナンデス
　　　 パキト・ディアス
　　　 マックス・アルヴァラド
　　　 デンショ・パディーリア
　　　 ロミー・ディアス
　　　 ボーイ・アラノ
　　　 ハイメ・ファブレガス
　　　 ルディー・メーヤー
　　　 エディー・アレナス
　　　 ボンバー・モラン
　フェルナンド・ポー・ジュニア（ＦＰＪ）の主演作で、コメディー・タッチのアクション。大ファンのアンジャネット・アバヤリ（ＡＪ）の共演になり、ＦＰＪ以上に目だつ主役の活躍なのがうれしい。
　アメリカ合衆国で数年の就労後、若い女性のカティー（ＡＪ）がフィリピンへ戻るところから始まる。入国審査で誤解をうけ、おばさんの係官（ドリーン・ベルナル）に「ハダカになれ」とのとり調べで、ＡＪのハダカがおがめるのかとドキドキときめくも、チャーミングな黒いドレスのままで脱がなくて残念。久しぶりのマニラのロハス通りを車で走るや、数々の風景がうつされる中、エドサ通りとの立体交差でまだエドサ・エンターテインメント・コンプレックスがなく、空き地なのがみえる。
　パブロ・Ｓ・ゴメスのストーリーのもと、パブロ・Ｓ・ゴメス、マニー・ビシン、ハイメ・ファブレガスの脚本は、人物関係をたくみにまとめる。このうちハイメ・ファブレガスは共同脚本執筆のほか、音楽と助演の三役を担当する。
　カティーには叔父（ハイメ・ファブレガス）がいて、豪邸に住むカネ持ちながら、カティーの家のある貧民街の転売をもくろみ、弁護士（ガマリエル・ヴィライ）とたくみに売買契約書のサインを求めるも失敗。カティーが叔母（ナティー・サンチャゴ）と従姉弟（ボーイ・アラノ）の暮らす、自分の家に向かう。電話のついたＢＭＷのオープン・カーに乗っているのがリッチのシンボルっぽく、通話片手の運転で事故を起こし、相手に責任をなすりつけるあたり、最悪の女と思わせる。今でもドライブ中に携帯電話が平気なヤツには法外な罰金をかければいいわけで、同情のかけらも感じない。このへんはムカムカ腹が立って、しょーもない映画とはき捨てたくなる。
　カティーがバリクバヤン（海外からの帰国者）で、英語がたくみなため、お色気攻勢にも負けた交通警官（ヘルマン・モレノ）が英語のヘタな被害者のジプニー運転手のほうの証言を信じず、留置場へ入れるバカぶりは、当時のバリクバヤンの意識を下敷きにとるかもしれない。あとにも全編に貧民街の住民たちがカティーをバリクバヤンとうわさし、あこがれや嫉妬の目を向ける設定がおかれる。またカティーの従姉弟のティノ（ボーイ・アラノ）がオカマで、ティナと改名したのに、周囲のものはティノと呼び、そのたびにティナと言い返していて、オカマのポジションもうかがえる。
　留置場からでたジプニー運転手が主人公のナンディン（ＦＰＪ）になり、実はカティーと同じエリアの人気者。クラブ・ホステスたち八人を、いつも店まで送迎が日課で、リーダー格のホステスのディグナ（マリトニ・フェルナデス）がお熱をあげる。カティーは英語のできない運転手を牢に入れてやったと自慢だったが、ティノもナンディンの友人なのに反抗をおぼえ、ますます性格ブス化する。でも懲りずに交通事故を再発のとき、相手のイカツイ男（ディンド・アロヨ）や、その仲間（トム・オリヴァルなど）にケンカを売られてピンチに陥り、ナンディンに助けられて非を認め、ティノの仲裁で仲良しになる。ディグナはバリクバヤンのカティーが近所の野郎どもの注目を浴びるのをライヴァル視し、ナンディンを奪い合い、ナンディンの気持ちがカティーに移ったとさとると、カティーを知り合いのトム（ジミー・レイエス）に襲わせる計画を立てる。またカティーへ契約の説得に貧民街へきた叔父がベンツに乗っていたので、ホステスたちがパトロン期待に騒ぎ、叔父があらわれるとハゲ頭に落胆でも、カティーだけがハンサムと狙いを定める。叔父をクラブでメロメロにして、すっかり気持ちをつかむとき、ディグナと叔父がマカレナを踊るのに、この曲のヒットがわかる。それと高級車を自慢の男（チキート）が登場で、実はカネもちのおばさん（オデット・カーン）のお抱え運転手にすぎなったとのエピソードの挿入はギャグながら、日本と同様に高級車志向がにじむ。
　一方でケチな悪党のフランキー（パキト・ディアス）とマクシー（マックス・アルヴァラド）が売春婦っぽいおばさん（デクスター・ドリア）からバッグをひったくるや、中からダイヤモンドがでてきて、警察の職務質問でとっさにそれをナンディンのジプニーのガソリン・タンクに隠す。ダイヤを奪われたと犯罪組織のボスのエボン（エディー・アレナス）が怒り、部下たち（レネ・ホーキンスなど）が醜い男だったとの浅はかな手がかりだけでフランキーたちを探し、フランキーとマクシーはベルティンのジプニーを探し、やっとみつけても、ジプニーを借りたり、盗んだりにドジを踏む。ディグナが叔父に頼んだため、叔父の弁護士がフランキーとマキシーのボスにあたる男（ボンバー・モラン）に会い、カティーの誘拐を依頼で人物配置がつながる。
　まあ、カティーを連れてフランキーたちが迷いこんだのが幽霊屋敷で、マッチョなコウモリ男（クリス・アギラー）が飛び、毛むくじゃらの狼男がうろつき、老女・中年女・若い女の吸血鬼（ジョシー・パサポルテ、ジェニファー・ペイン、エルニン・レオンダンガ）が一味の運転手（ノノイ・デ・グスマン）に噛みつくと、フランキーとマクシーに襲いかかる。シーツをかぶって隠れるカティーがお化けに勘違いされないあたりは予想をハズすも、救出にきたベルティンが冷静にモンスターどもを退けるホラーのパロディーの盛りこみや、エボンの右腕の殺し屋（ロミー・ディアス）が手下たちとベルティンを脅せば、ベルティンがショットガンの片手の早撃ちで退治の典型的なＦＰＪらしい見せ場を欠かさず、殺人事件の発生にも警察が不在のままのご都合主義はさておき、ベルティンの親友のスティーヴ（デンショ・パディーリア）をはじめ、友人たち（ルディー・メーヤー、ダニー・ラブラなど）や近所のものが総出で戦うあたりが、単独で複数を全滅させる無理を避けて、けっこう印象をあげる。確かに真剣な批評の対象じゃないかもしれないも、結果、パブロ・サンチャゴがフィリピン気質のツボをおさえた、娯楽作の基本形に思える。
　恋人の家まで出向き、夜に窓の下でラヴ・ソングを歌うフィリピン・スタイルの愛の告白もでてきて、スティーヴの弾くギターの音色にカティーが外をみるとベルティンが立ち、横でゲスト出演の歌手のジャンノ・ギブスが歌い、今度は同じくランディー・サンチャゴが続き、さらにベルティンがのどを披露に、ＦＰＪファンへのサーヴィスがあふれる。
　もちろんＡＪの魅力がムンムンと伝わるのが個人的には重要なポイントになり、自宅の庭でエクササイズし、近所をランニングのかっこうがスパッツ型のストライプの短パンで、お尻のドアップのショットにウヒョヒョっと興奮。近所の男どもがゾロゾロとついてくるコミカルな二回目のランニングは赤い短パンがそそるうえ、ディグナと殴る蹴るのケンカに発展で身体を動かし、バツグンのプロポーションがセクシーに迫る。交通事故の相手に突き飛ばされるときと、誘拐されるときのジーンズがキュートなのは当然だし、前者ではバストの揺れるシャツが視線を奪う。プロのモデルが仕事なので、撮影シーンが二回あるも、水着のコスチュームがなく、スパッツや乗馬服もヒップの曲線をみせないアングルなのが惜しいところ。ディグナの悪だくみのレイプ未遂から逃げると嵐の中を走り、ベルティンと遭遇で抱き合う際に衣装がずぶ濡れだけに、もっとボディーへの貼りつきや下着のスケスケがほしかったかな。
　マリトニ・フェルナンデスはＡＪよりも美貌が落ちるが、カティーに対抗のランニングで白いスパッツ型の短パンをはき、下着のラインがくっきりに浮かぶし、お尻がプルプルとふるえるのにさわりたくなる。七名のホステスを演じる女優はジェム・カスティーリオとデデス・ウィテカーしか知らないが、リリー・ローズはおばさんっぽく、アンジー・デル・カルメンはブスっぽい。残りのエドナ・デ・レオンとダウリン・ペティエテとジェニファー・ミンダナオは顔と名前が一致しない。
　ＡＪの存在感だけで十分といえる。
　なお、女の子たちがヴァレー・ボールを楽しむシーンがあり、フィリピンの男たちのバスケット・ボールは定番だが、女性のいる場合はヴァレーと推測できる。何人か前のカノジョがまだ小学生だったころ、ヴァレー・ボールに参加していたのを思いだす。