ＡＮＧ　ＰＵＭＡＴＡＹ　ＮＡＮＧ　ＤＡＨＩＬ　ＳＡ’ＹＯ！
（殺すのはキミのため！）
　
89年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ウィリー・ミラン
主演：チャック・ペレス
　　 　エディー・ガルシア
　　 　ヴィク・サントス
　　 　マイケル・デ・メサ
　　　 アレクサンデル・ヴァルガス
　　　 ララ・メリッサ・デ・レオン
　　　 カティー・モラ
　　　 イサドラ
　　　 アンジェラ・ルス
　　　 ペルラ・バウティスタ
　　　 ルエル・ヴェルナル
　　　 マリオ・エスクデロ
　　　 イロナー・ジーン
　　　 ロディル・ゴンサレス
　　　 ロス・オルガド
　米軍基地があった時代を舞台に、反米感情を下地におくアクション作。
　単独任務で成果をあげた軍人のエミリオ（チャック・ペレス）が休暇をもらい、故郷のオロンガポへ帰ってみれば、恋人のアナ（ララ・メリッサ・デ・レオン）は米軍基地で秘書として働き、上司のドノヴァン（ジム・マッキンジー）とあやしい雰囲気。妹のエスピー（カティー・モラ）は米軍相手のクラブでウェイトレスになっている。そのクラブはアメリカ人のグレン（ボブ・ラルセン）がオーナーで、愛人のアンジー（イサドラ）がママをつとめる。グレンの友人のアメリカ人であるマイク（マーク・ミラー）が店へきてエスピーをみそめ、セクハラのうえに買春を斡旋屋のビンボ（マイケル・デ・メサ）に頼み、断られたので仲間のレックス（ルエル・ヴェルナル）に命じてビンボがエスピーをら致。抵抗したためにマイクがエスピーを絞め殺す。警察のミハレス大佐（エディー・ガルシア）が捜査に動こうとせず、エミリオがバーへ抗議にくるも、逆に殴り返される。一方でオスカル司令官（ヴィク・ヴァルガス）がリーダーの共産ゲリラが反米闘争をおこない、若い活動家のエリック（アレクサンデル・ヴァルガス）や女性活動家のマイタ（アンジェラ・ルス）が地下で動いている。米軍の士官をバーへ暗殺にくると、偶然に同じターゲットを狙っていたエミリオが先に撃つ。グレンのときはエミリオが構えている前で、バイクに乗って駆けつけたエリックとマイタが射殺する。エミリオの父のエフレン（マリオ・エスクデロ）がオスカルと旧知の仲だったため、エミリオに共産ゲリラとの合流をすすめるが、共産主義でなく愛国主義とエリミオが断る。レックスを始末したあとにエミリオがつかまり、ビンボからサディスティックな拷問をうける。アンジーが助けてゲリラのもとへ連れてくるも、ビンボにアンジーが殺される。エリックとマイタがさらにアメリカ士官を襲い、マイクとビンボが傭兵を雇うことを決意。まずエリックを消し去り、訓練のすえにゲリラの基地を攻撃で、ちょうど会見中のミハレスとオスカルを含め、殺りく行為をおこなう。マイタも撃たれて、エミリオが単独で傭兵隊に戦いをしかけ、全滅のうえにビンボをしとめる。
　もう、たった一人でエミリオが圧倒的多数をバンバンやっつけていくご都合主義は、カッコいいよりもあほらしい。マシンガンの弾がなくなってピストルをだし、そんなので何名もに対抗できるかと思っていたら、ピストルの弾もなくなってナイフをだし、最後はやっと敵が落としたマシンガンを拾うとは、とても頭のある行動とはいいがたい。エミリオはムキムキ筋肉の上半身をみせるハダカを強調で、おそらくアーノルド・シュワルツェネッガーの『コマンドー』あたりを意識においたのだろう。
　米軍相手に全盛だった当時のオロンガポの歓楽街にともるネオンの波が映しだされて、水着のダンサーが踊るゴーゴー・バーの店内など、風俗的な興味にはみちる。エスピーをマイクへ売るのを引きうけたビンボにアンジーが「処女だから高いでしょ」と安易な交渉を怒り、ビンボがエスピーに「三百ドルでどうだ。あんたに二百でオレに百」といっているのにヘェーっとうなずく。体制側のミハレスと反体制側のオスカルが尼僧のルース（ペルラ・バウティスタ）を仲介に教会で会う図式もフィリピンっぽい。山奥にひそむゲリラの本拠に山岳民族が暮らし、吹き矢で一緒に戦うのが無理っぽい設定ながら、ちょっとおもしろさをともなう。エミリオがゲリラのかかげる金槌と鎌の赤旗をおろし、マイタを埋葬でフィリピン国旗を立てるあたりは、究極的に右翼と左翼の一致が日本にも通じる社会構造をイメージさせる。
　核を占める反米表現は、もっともな意見をのべたのにむかついたグレンがアンジーをぶつ暴力性などににじませ、自分は殺人を犯すも、グレンをやられたことに対してマイクがミハレスに「正義が実行されるように期待する」と迫る自分勝手さなどにこめる。一方でアナへキスを求めるのを目撃でエミリオが別れを決めるドノヴァンは、割り合いに紳士に描かれ、中立的な見方を含む。一番の悪党がフィリピン人のビンボとの構図もだが、脚本のフミルデ・“ミーク”・ロハス、監督のウィルフレッド・ミランは、ともに政治的な主張をもっているわけでなく、大衆性を意識して反米をテーマにとったと思える。
　女優ではセクシー・スターのイサドラの出演に期待がかかり、ガウンをはおっての登場にオッと目をみはらせ、グレンとシャワーを浴びるシーンがあるも、オッパイが隠れたまま。ララ・メリッサ・デ・レオンはエミリオとのベッドでスリップを着ていて、カティー・モラはマイクへの抵抗でまったく露出せず、お色気不発に終わる。エリックとマイタが襲うプールは遠景にとらえるのみで、逃げる水着の女性たちがはっきりみえないのも残念になる。店内の水着のダンサーたちは、たぶん本物のＧ．Ｒ．Ｏ．だろう。ただしララの黒いピタパンと、アンジェラ・ルスのジーンズ、同じく若い女性ゲリラを演じるイロナー・ジーンのジーンズは魅力的で、けっこうゾクゾクっとそそる。
　なお、リコ・タリマンが共同監督にあたっている。