ＡＮＧ　ＭＡＴＯＮ　ＡＴ　ＡＮＧ　ＳＨＯＷＧＩＲＬ
（ガキ大将とショーガール）
　
97年：ＥＤＬプロダクションズ、ダイヤモンド・ジェード・フィルムズ
監督：デオ・Ｊ・ファハルド・ジュニア
主演：マイケル・リヴェロ
　　　 リタ・マグダレナ
　　　 ダンテ・リヴェロ
　　　 ジョージ・エストレガン（ジュニア）
　　　 コンラッド・ポー
　　　 アルマ・ソリアノ
　　　 チャイ・ロメオ
　　　 シャーリー・テソロ
　　　 イナ・アレグレ
　犯罪アクションはフィリピン社会の基本問題ともいえる貧困を背景にとることが多いが、この作品もその一つ。それもスラムのような底辺ではなく、一般下層階級あたりに根ざしているから、日本では紹介されることの少ない風俗的な面にみるべき点がいくつかある。冒頭に主人公が女性たちの入浴をのぞく男どもを退治したり、彼の相棒となっていく子連れのスリと出会ったりといった街の描写に面白さが感じられる。下着を着たまま石鹸でゴシゴシやっている女性の姿など、フィリピンでは当たり前かもしれないが、日本人の目には興味深く感じられる。ダリア・ラミレス演じる主人公の母が夫婦喧嘩するシーンも、包丁を振りまわしたりに、フィリピンで確かにときどきみかける光景だなあと思う。この母が息子にあたる主人公から、自分のことを母と呼ばれるのを嫌がるのも、なるほどと妙に納得が起きる点である。
　でも家族のためにディスコ・パブのダンサーになる女性と、腕っぷしの強さしかとりえがないため、その店の用心棒になる男のドラマであり、これに覚せい剤取り引きや女性がらみの犯罪が関与してくるのだから、ありきたな内容なのは否めない。
　まずマイケル・リヴェロ演じる主人公はすぐにタバコでカッコをつけ、これが個人的には共感できない要素。日本のやくざ映画や不良青春映画などでもしばしばみかける光景だが、本当にライターでタバコに火をつけたり、ポイと吸殻を捨てることがカッコいいと思っているのだろうか。まあ、思っている奴がいるから、こんなバカな演出がなされるのだろう。映画というのは、とくに犯罪アクションなど、主人公に共感を覚えられないと、退屈以外の何物でもない。ちょっとした仕草一つが感情移入を拒み、あとの展開をつらくしてしまうので、注意のほしいポイントだ。
　全体のストーリーの進めかた自体も意外ともたつき、テンポの悪さばかりが目立つので、さらに困った傾向。監督のデオ・Ｊ・ファハルド・ジュニアが凡庸なのだろう。
　もっともこの手の作品は女優の魅力で、ある程度までみせることのできるのが事実。前半はアルマ・ソリアノ扮するダンサーが主人公の相手役となる。店のマネージャーからセクハラを受けて下着姿のまま道路へ飛びだしてきて、偶然通りかかった主人公に助けられるシーンは、シチュエーションとして面白い。でも初めてベッド・インしたあとに処女だったとわかる構成は、いかがなものか。アルマのキャラクターから判断して、ちょっと無理があるのではないか。アルマはとなりにいるかわいめのお姉ちゃん的な印象だから、その延長線上で描いている性格づけは納得するのだが…
　あっさりとアルマが殺されると、今度はリタ・マグダレナが登場。店のステージで彼女のダンス・シーンが映しだされるや、一気に視線がグッと彼女のボディーへと引きこまれていく。なるほど、スター性というのはすごいものだ。
　リタはダンス・シーンでのＴバック下着姿だけでなく、主人公とベッド・インするシーンでも、衣服を脱ぐとグルッと一回転でＴバック姿を披露してくれる。主人公の前でブラをはずすシーンもうしろから撮影されていて、食いこんだＴバックのお尻をほんの目の前の、まるでそこにあるかのようにみせつける。まさに私の素敵なお尻を眺めて、といわんがばかりの挑発ぶりに思え、実際に谷間に顔を埋めたくなるほどの素敵さなのだから、こちらはあっさりノック・アウトされる以外になすすべがない。池で泳ぐシーンも黒いＴバック水着で、これ以外の作品のことも考慮に入れて、ミス・Ｔバックと断言していいのではないか。
　ダンサーの一人を演じたシャーリー・テソロにはとくに見せ場がなく、同じくイナ・アレグレはシャワー・シーン以外に魅力が感じられないままなのが残念だった。