ＡＮＧ　ＬＡＨＡＴ　ＮＧ　ＩＴＯ　ＰＡＴＩ　ＮＡ　ＡＮＧ　ＬＡＮＧＩＴ
（天国を含むこのすべて）
　
(89)年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：エマヌエル・Ｈ・ボルラサ
主演：ディーナ・ボネヴィー
　　 　スーザン・ローセス
　　　 ダンテ・リヴェロ
　　　 エディー・ロドリゲス
　　　 ロサ・ロサル
　　　 マーク・ヒル
　　　 ジゴ・ガルシア
　　　 ヴィーナ・モラレス
　　　 ジェリー・デ・ベレン
　　　 ケンペー・デ・レオン
　　　 ラウル・アラゴン
　　　 ミシェル・ブアン
　　　 アルミナ・ムーラック
　時代がかった大メロ・ドラマを、またストレートに正面からみせてくれるじゃないか。
　スーザン・ローセス演じるのが人気ファッション・デザイナーで、ディーナ・ボネヴィー演じるのが、その専属モデル。スーザンはロサ・ロサル演じる叔母と会社を経営していて、ダンテ・リヴェロ演じる婚約者がいる。ディーナを妹のようにかわいがり、こづかいをあげているながら、ディーナはマーク・ヒル演じるヒモにカネを巻きあげられてばかり。ダンテと婚前旅行の帰りに交通事故を起こし、スーザンが骨折。責任を感じて酔ったダンテと、成りゆきでディーナがセックスする。ディーナの妊娠までが前半。
　歩けないスーザンがヒステリックにごねるあたり、上流女のワガママぶりにうんざり。ディーナも勝手にファッション・ショーでスーザンのウェディング・ドレスを着てロサに怒られ、共感を呼ばないキャラクター。金銭トラブルをかかえるディーナに対し、ダンテがカネで解決をはかろうとするなど、まったくしょうもない人物ばかりが主人公で、先が思いやられる。
　スーザンにロサが実は「母親だ」と告白するあたりから、ドラマティックというよりも、安易なフィクションが目だつばかりの展開になってくる。
　ロサの仲介でスーザンがエディー・ロドリゲス演じる実業家と交際をはじめ、スーザンの好意によってディーナが一流病院で出産。しばらく二人で育てながらも、スーザンが赤ちゃんを引きとるまでの中盤は、スーザンの豪邸と、ディーナの貧民街にある家の対比が興味をそそる。でも、ケンペー・デ・レオン演じる青年がディーナをみそめ、マークを蹴散らすエピソードがあとにからまず、単純にディーナが娘を手放す口実と、ハデさを加えただけの印象。
　十四年たって女の子をヴィーナ・モラレスが演じるようになり、ゴホゴホ咳をしながら、浮浪者のようなかっこうのディーナが家の外からヴィーナをみつめるシチュエーションがでてきて、後半はくだらなさがムクムクもたげてくる。本当の子じゃないと知って家出したヴィーナのため、スーザンがダンテを呼んで「父よ」と紹介はよいものの、ディーナのことを母と気づくシーンは、もうちょっと工夫がほしかったところ。ディーナの顔にキズをつくり、マークからの虐待を暗示する。マークがヴィーナを誘拐で、ディーナがヴィーナを守って犠牲になるラストに、アホらしー、と声をあげそう。
　よくもまあ、恥ずかし気もなく“母もの”を繰り広げたもの。パブロ・Ｓ・ゴメスの原作はピノイ・クラシックというから、よほどフィリピン人は、こういう安手のストーリーで涙をしぼるのが好きなのだろう。オルランド・ナドレスの脚本、エマヌエル・Ｈ・ボルラサの演出は、とくに工夫を入れず、あっさりと流している。
　もっとも大ファンのディーナがモデルの役だから、水着になっているのが嬉しい点。何名かと一緒にワンピースで腰にパレオを巻いているのが不満だが、視線を奪ってくれる。ダンテとのセックスで太腿に手がかかったり、ＣＭ撮影のシーンで美しいおみ脚をたっぷりおがませるのもウハウハ。
　ホント、ディーナ、抱きついてキスしたい。
　ヴィーナのボーイ・フレンドをジゴ・ガルシアが演じ、ラップ・ダンサーを目ざす設定で踊りを披露するのはファン・サーヴィス。ヴィーナにも歌がほしかった気がしないでもない。
　ほかにヴィーナの女ともだちとしてジェリー・デ・ベレンが出演している。