ＡＮＧ　ＨＵＬＩＮＧ　ＢＩＲＨＥＮ　ＳＡ　ＬＵＰＡ
（地上最後の処女）
　
03年：ＮＥＯフィルムズ／ジャグス・エンターテインメント
監督：ジョエル・Ｃ・ラマンガン
主演：アラ・ミナ
　　 　ジェー・マナロ
　　　 マウイ・テーラー
　　　 エリザベット・オロペッザ
　　　 ヘーゼル・エスピノサ
　　　 タニャ・ゴメス
　　　 マーキー・ロペス
　　　 イサベラ・デ・レオン
　　　 トニー・マベサ
　　　 マイク・マガット
　　　 シモン・イバラ
　　　 ジム・ペバンコ
　　　 ナンディン・ヨセフ
　アラ・ミナとマウイ・テーラーの共演とは、今もっとも好きな女優の顔合わせで、正直なところ狂喜にたえない。ほとんどこちらの趣味を読んで企画を立てたのか、と感謝したいほど。それにラクエル・Ｎ・ヴィリアヴィセンショの脚本をジョエル・Ｃ・ラマンガンが監督しているから、レヴェルの高いドラマに違いない。
　最高の期待作、といった感じで対峙したところ…
　うーん、さすがじゃないか、と納得のでき。
　サント・ニーニョを抱くマウイが聖母マリアのかっこうで山車に乗り、海岸を村人たち総出で行列するイヴェントの光景が冒頭。どこかのフィエスタなのかとの興味がわくも、マウイのやりきれなさそうな表情や隠れるようにして様子をみつめるアラが登場し、顔が火傷でただれていて、それまでの経緯の愛憎劇を推測させる。アラのナレーション告白で回想へと入り、小さな漁村のバランガイで生じた奇跡が悲劇を導くアイロニーを語っていく。
　アラ演じるのは村の売春婦で、バンカーに乗って小島までくると、掘っ立て小屋が建ててあって、そこで男たちを相手する。小島をとり巻く海の紺碧さが美しいが、ロケはバタンガスのマビニ。アラの妹役がマウイで、マーキー・ロペス演じる恋人と海岸で戯れるときに、海中から幻影をみるのが伏線になっていて、いわゆる特殊能力を持つことを示す。ジェー・マナロ演じる牧師が溺れているのをマウイが発見し、ジェーが記憶喪失だったとはいかにも当初から怪しいものの、案の定、あとで詐欺師の偽者とわかる。
　村にはエリザベット・オロペッザ演じるバランガイ隊長がいて、しっかりした性格の中年女性。イサベラ・デ・レオン演じるエリザベットのまだ幼い娘は、脚を引きずる障害者。ヘーゼル・エスピノサ演じる修道女の一人は信心深く、ジェーへあこがれを抱く。ちょくちょく村へはマイク・マガット演じる商人がやってきて、マニラへ連れていく少女を買いあげるも、かえって家族から感謝を受ける。ナンディン・ヨセフ演じる村でただ一人の医師は半分いかがわしく、タニャ・ゴメス演じるアラとマウイの母親も重い病気で治療してもらっているのだが、費用を負担しきれず、アラは金銭問題に直面。タニャはまじないに走って薬すら飲もうとしないため、アラには二重の苦労がかかる。などのキャラクターやシチュエーションがたくみにからみ合っている構成が、けっこううまい。
　牧師のいなかった村ではヘーゼルにうながされてジェーが礼拝を再開し、ジェーへの目が疑惑から尊敬に転じる。シモン・イバラ演じるアラの客がチンポに雑菌をうつされ、マッズ・ニコラス演じるシモンの母がアラへ投石し、頭部に命中でアラが気絶。これをジェーが助けて、マーキーから迫られた困惑をマウイがジェーに懺悔し、ジェーがマウイへ欲望を抱いたため、性欲を我慢できなくなってアラの客に。それでジェーの正体を知ったアラが、二人で詐欺を計画するわけである。
　なんと妊婦がサント・ニーニョを生んだという、誰がみても芝居だろう的な奇跡の演出を仕組むも、なぜかバレないあたりが、ちょっと無理のある部分か。それともカトリック国フィリピンだと、宗教心が違うから通じるのかもしれない。
　アラとジェーは寄付金がどんどん集まり、狙い的中だったのだが、サント・ニーニョにすがろうとした下半身不随の少年が倒れるも、本当に奇跡が起こって直ることから予想外の方法へと運命が走り始める。たちまちニュースが広がって参拝者が増加し、さらに大もうけでニヤニヤ。といった展開は、ジェーが奇跡の現実化にうろたえる心理がチラッとでてくるものの、アラが不思議がらないのはなぜという点に説得力を欠き、短所になっているのが惜しい。マーキーが二人の実態をのぞきみたため、ジェーに殺されるというとう突さの省略表現も、ジェーに残虐行為をかせる安易さがイマイチ。マーキーを巻きこむや、良心の呵責に悩むという扱いにすればよいものを、ジェーに殺人の原罪を背負わせ、復讐の仕打ちを受けるとの図式をつくりたかったのだろうか。
　いよいよマウイの祈りによってタニャが全快し、奇跡を引きだす超能力が明らかになって話は寓話の枠を超えてくる。パワーを示すことを求められたマウイが崖の上の木を光らせる際に、オーッと歓声をあげてひざまずく人たちがいるも、エリザベットがジム・ペバンコ演じる部下と光を「みえた？」「みえない」と首をかしげるなど、けっこう風刺としてなかなか。マスコミも集まって今か今かと奇跡を待つ光景は、フェデリコ・フェルリーニの『甘い生活』にあった、神の声を聞いた少女に大人たちが翻弄されるシーンを思いだす。村には移動遊園地まできて、心ならずも村おこし状態を招き、アラとジェーによるお布施の独占をエリザベトが暴力で取り締まり、自ら仕切り始めてクライマックスへ。きっかけがジェーのペテンであっても、マウイの能力は本物だから、芝居を続けさせる。タニャにも会わせず、ハードにマウイをこき使って、ついに過労でダウン。ジェーがマウイを助ける決心をし、アラ、タニャの一家全員で脱出。これをナンディンが援護するのだが、エリザベットの娘であるはずのイザベラまで協力していて、カネに狂った人間性と純粋さの対比を生み、鮮やかな印象を与える。エリザベットに分け前をもらう約束をえたマイクの一味がナンディンを拷問のすえにアラたちを追いつめ、アラとマウイをレイプし、ジェーを殺害。ずっと意味深に何度か挿入のあったジェーのトラウマ描写が具体的になるも、教会で育った少年時代にトニー・マベサ演じる牧師の偽善を目撃した記憶は、それほど効果をあげたとは思えない。アラが火傷を負わされる原因や、ジェーとマイクが相打ちするまでの持っていきかたの流れに自然さを欠くのもマイナス点。マウイが強姦のあとにまだ処女だと判明し、病院関係者が聖母だとひれ伏すオチも、いささかフィクションくさいかな。
　全体的にカトリック色すぎて、無神論者には「だからどうなの」といっておしまいなのは事実だが、エリザベットがジェーを聖人に仕立てあげ、マウイが聖母役を強制される冒頭へと戻り、しょせん宗教をビジネスにする人間のあさましさが漂ってきて、普遍性を放ち始める。最後までジェーを信じ、奇跡を救いにするヘーゼルの修道女の存在が皮肉を盛りこむあたりも買える。
　素直によくできましたと認めたい。
　ところでアラとマウイのセクシー対決は、ドキドキのウハウハのキャーッ。シモンとのセックスでアラはシャツを脱ぐと、いきなりオッパイを全開。正常位でマグロになっている姿を上から撮ったショットでもオッパイがくっきりで、うーん、素晴らしい。横からみた全裸がやや遠いのは、ちょっと不満だけど…　ジェーとのセックスでまたもシャツからオッパイの丸だしが挑発的なうえ、全裸のボディーを横からのアングルでウェストのカーヴがそそったり、お尻がキュートでおいしそう。オッパイのアップがでてきたときは、ここでイッちゃいそうになる。ジェーが消毒でチンポをさすってもらっていて、ホント、アラにチンポをさわられたら、入れる前にドピューッかもね。レイプを受けるシーンでもオッパイがポロリで、ただただ降参です。
　ローカル娘のファッションなので、都会風の洗練されたアラでないとはいえ、ジョエルのリアリズム演出にダサさを拒まないアラがエラい。もちろん、それでも魅力的だが、マウイもすっぴんに近いメイクででてくるも、さすがにアラと比べると容貌が落ちるのはしょうがないか。マーキーにチンポをみせられたあと、ジェーを発見するときの海岸での白い衣装が、ほんのり乳首スケスケなものの、濡れてペタッと貼りつくショットがないのはイライラを残す。二度目の海岸ではマーキーが無理やり迫ってシャツをめくり、マウイのオッパイがモロだしで、待ってました。ホント、何回みても弾力性のありそうな乳房にうっとりだが、下もハダカにされたとき、マーキーのお尻がジャマしてマウイのボディーを隠すから、まだ１００％満足とはいかない。ジェーがうなされる夢の中で、いつもの小悪魔的なマウイが現われ、オッパイをミセミセのポーズで誘惑しながら、全裸で座位や、バック座位のセックスになるもだえ顔で興奮が頂点に。これで我慢のかいなく沈没だから、マウイもやってくれる。さらに三度目の海岸の寄せる波で白い衣装から乳首を浮きあがらせたり、レイプのときの横からとらえた全裸もプラスで、アラとの競艶は引き分けといえそう。
　あとヘーゼルが、このところほっぺにできていた肌のブツブツがなくなり、久しぶりにかわいさを披露。ジェーに気持ちを打ち明けるシーンでオッパイをガバッと丸みえにするから嬉しい。アラやマウイと違ってほどほどの大きさの美乳で、だからこそかえってもんでみたい。
　タニャはかつてのセクシー女優らしい色気をうかがわせるも、ジョエルのリアリズムにおけるおばさんぶりがはまっていて、女優だなあと感心した。