（とてもいいよ、ベーブス）
02年：ＩＭＵＳプロダクションズ
監督：エド・パルモス
主演：アルベルト・マルティネス
ジョイス・ヒメネス
ルビー・モレノ
マルクス・マドリガル
ジャッキー・カスティリエホス
ジェニー・ロア
レスター・リランサン
ペルラ・バウティスタ
クロイド・ロビンソン
『Ｃａｎ’ｔ Ｔａｋｅ Ｍｙ Ｅｙｅｓ Ｏｆｆ Ｏｆ Ｙｏｕ』を主題歌に“ベーブ”と呼ばれた女性の数奇な半生を描く、という作品。“少女時代に実の父からレイプされ、父親は自殺し、本人は成長するとじゃぱゆきになった”とのクレジットが冒頭に入り、しかもジョイス・ヒメネスがそのベーブを演じるとなれば、かなりの期待作に違いない。
さてさて、どんなものかというと…
まず東京のシーンが笑ってしまう。邦楽器を使った音楽をＢＧＭに着物姿の舞妓さんたちが番傘を持って厚化粧で路上パフォーマンスをするのだから、アメリカ映画にも負けない勘違いぶり。ヤクザの情婦になったベーブをルビー・モレノが演じていて「ベーブはいい子だから」と大金をもらうのだが、「みんなベーブと一回はやっちょるけんの。あそこのしまりがいいけんな」とボスがいう日本語の台詞がかなりヘン。「ベーブはどこだ」と問いつめられたパトロンのヤクザが殺されて、命からがらフィリピンへと逃げ帰ってくるわけである。
整形手術を受けてルビーがジョイスになるのは、そんなに極端に変われるかあ、とあきれる印象。
とにかくジョイスが登場して、メインの物語が始まる。
マニラでもクラブ勤めをして相変わらず男たちをとりこにしていき、ひょんなことからマルクス・マドリガル演じる学生と知り合い、議員からの誘いをすっぽかしたときに、卒業したマルクスと結ばれる。でもすぐにマルクスはサウジ・アラビアへ出稼ぎに行ってしまい、ペルラ・バウティスタ演じるマルクスの母が家事などにこき使ううえ、猜疑心の強いクロイド・ロビンソン演じる父が、レスター・リランサン演じる弟とジョイスが会っているのを浮気と勘違いして家から追いだす展開に。
ちなみにレスターと再会するシーンでは、整形した顔から最初は姉とわかってくれないのだが、誕生日のプレゼントに携帯電話をあげて「ベーブ」となるところがフィリピンっぽくておかしい。
ジョイスには少女時代から一緒に育った幼なじみがいて、映画はジェニー・ロア演じるその親友の家へ転がりこむあたりから第二章へと入る。ジェニーにはアルベルト・マルティネス演じる暴力夫がいて、ジョイスへ手をだしてくるわけである。なんか、じゃぱゆきだったという設定はあまり生かされず、実の父にレイプされた過去も関係なく、かけがえのない親友であったジェニーがあっけなく自殺するのだから、ひどいストーリーだなあ、と再びあきれる印象。
ただしアルベルトの凶暴なバカ男ぶりは殺気のようなものが漂っていて、なかなかすごい迫力で圧倒してくる。得意の役どころながらも、うまい役者だなあと実感。ジョイスをセックスの奴隷と化するだけでなく、ヒモ同然となって脅すあたりなど恐怖さえ感じさせる。マルクスが帰ってきて、ペルラとジョイスが和解するも、その席上からジョイスを連れ去るときにマルクスをボコボコにし、もはや狂人寸前。ジョイスはキスしたときにアルベルトの舌を噛んで口の中を傷だらけにして、キレたアルベルトがジョイスに椅子を振りあげて殴りかかり、ビシャッと血が飛ぶ。
実は… というオチまで引っぱっていくクライマックスのアップ・テンポな演出にハラハラ感が盛りあがり、みているほうはアルベルトにマジで腹が立ってくるから、本当に迫真の演技。熱帯の暑さのようなものが伝わってくるムードづくりにもそこそこ成功していて、エド・パルモス監督は一応、実力を発揮したといえよう。
でも主人公のベーブの数奇な運命、というには無理があり、全体的には困ったできの作品だと評価せざるをえない。
ジョイスの脱ぎっぷりがイマイチなのも不満な点。クラブ客たちとのセックスや、マルクスを男にしてあげる出会いのシーンにおけるシャワーの中での愛撫、初夜でのセックス、サウジへ出発する前のセックスなど、いずれも肝心の露出なし。アルベルトが酔わせて迫ってくるところも同様で、いつもの大胆なジョイスはどこへ行ったの、とイライラ状態に。バックからアルベルトがパンティーを脱がすとき、ジョイスのお尻のはみだしたお肉がみえるも、結局オッパイはださずじまいで、これはもう八割型の魅力減。
まだジェニーのほうが色っぽく、ダンサーの設定だから、Ｔバックのお尻を突きだして踊るポーズが刺激的。
あとジャッキー・カスティリエホスがママを演じるジョイスが勤めるクラブで、ステージにいるビキニのダンサーがすごくセクシーなうえ、ちょっと美形に思えるからグッと視線を奪う。
そうはいっても目的のジョイスが納得させてくれないのだから、肩すかし作品と捨てて間違いなさそうだ。
