ＡＮＧ　ＤＡＲＬＩＮＧ　ＫＯＮＧ　ＡＳＷＡＮＧ
（私のダーリンは妖怪）
　
09年：オクトアーツ・フィルムズ／Ｍ−ゼット・ＴＶプロダクション／ＡＰＴエンターテインメント
監督：トニー・Ｙ・レイエス
主演：ヴィク・ソット
　　 　クリスティン・レイエス
　　　 ダンテ・リヴェロ
　　　 ジーン・ガルシア
　　　 アゴット・イシドロ
　　　 ラファエル・ロセル
　　　 リッチー・“ドゥホルシー”・レイエス
　　　 ウォリー・バヨラ
　　　 ジョーイ・デ・レオン
　　　 ジャッキー・ウー
　　　 ピア・ガニオ
　　 　オヨ・ソット
　フィリピンの土着の妖怪であるアスワンは多くのホラーに登場するが、吸血鬼の変形で、実際にニンニクを嫌うなどのノスフェラトゥに似た特徴をもち、おそらくスペイン統治時代に原型が伝来のお化けだろう。コメディーにも活用例がかなりみられ、これはアスワンにロマンスをプラスのお笑い怪奇劇。
　まず冒頭にイラストふうの紙芝居をバックに、名優のジュニー・ガンボアのとぼけた語りがファンタジーの世界へいざなう。アスワンたちがホーリー・ウィークに田舎の村を襲うプロローグにつながり、ちょうど村はクロワサ（ジャッキー・ウー）という映像作家が取材中で、黒澤のもじりかとあきれる。むかえる村のおばさんのベバン（モサン）に通訳（シャララ）がいい加減なことをいい、クロワサにカネをもらい、陰で通訳が分け前を要求など、いかにも日本人を定番っぽく皮肉る。小人もいるアスワンたちにベバンや夫のピピン（ティタ・スワルディング）がやられ、クロワサが拳法で対抗や、聖歌を歌うリーダー（アラン・Ｋ）とメンバーがオカマで、男のアスワンを誘惑とマヌケな展開で騒ぐ。
　人間の肉を食わなくなったアスワンのイダ（アゴット・イシドロ）とエリサ（クリスティン・レイエス）の母娘をアスワンの女ボスのバラン（ジーン・ガルシア）が非難し、若い男のアスワンのホアキン（ラファエル・ロセル）がエリサに強引な交際を迫り、イダとエリサが人間社会へ逃げてくる。一方で会社経営のヴィクトル（ヴィク・ソット）は妻の亡きあと、娘のアイリーン（バービー・フォルテサ）とエンジェル（ミカ・デラ・クルース）に夢中で、会社の部下で美人のカティーのアタックを退ける生活。たまたまヴィクトルとエリサが出会い、目から光のラヴ・サインをエリサが送ってふたりが恋に落ちる。アイリーンとエンジェルもエリサを気に入り、父との再婚を願い、周囲の祝福で新婚生活へ。でもエリサが自分はアスワンだとヴィクトルにだけ教える。またバランの娘のアルファ（ジャッキー・ライス）、ベータ（デニス・ラウレル）、ケカ（エンプレス・シュック）がエリサの所在をつきとめ、連れ戻し工作を開始。
　とのストーリーで恋愛、サスペンス、ドタバタを混ぜる。
　会社で居眠りや、ヴィクトルのベッドで寝たがるマヌケづらのヴィクトルの従兄弟のトム（リッチー・“ドゥホルシー”・レイエス）と、友人でドジなバランガイ・キャプテンのジェリー（ウォリー・バヨラ）がズッコケ・キャラクター。合わせた名前はアメリカ合衆国のアニメーションのもじり。イダとエリサが人間界で暮らす従兄妹のバノン（ノノン・デ・アンドレス）を頼って、幽霊顔のバノンがエリサの親族なのをヴィクトルが不思議がれば、醜男のトムがヴィクトルの親族にエリサが首をひねる。
　ヴィクトルにアスワンだとエリサが告白はアラネタ・コロシウムの前で、ヴィクトルを抱いてエリサが屋根へ飛びあがり、満月を背景に飛行は『Ｅ．Ｔ，』のまね。
　アスワンたちが牙をむくのみならず、狼っぽい猛犬に変身も、本当はコウモリじゃなかったかなと感じる。猛犬のＣＧがイマイチ、画面に浮いてみえるあたりは予算の関係だろう。
　ヴィクトルのファミリーとエリサのファミリーが交流に、トムとジェリーが差し入れをもってきて、ニンニク味のスナックだったためにイダとエリサが大あわて。このボーイ・バワンという菓子はなかなかいける味で、よくフィリピンに滞在の際はビールのつまみに食べる。次の機会に差し入れはチョコレートになり、イダとエリサがおそるおそる口に含むや、思わず笑顔はチョコレート好きのフィリピン人そのもの。あとでエリサの料理をヴィクトルの家族がまずくて食えない設定がでてくるが、チョコレートはアスワンの味覚にも合致がおかしいかな。
　結婚式をどうするかでヴィクトルの家族が教会での提案をイダとエリサが「私たちは特別な宗教なので」と苦しまぎれに断り、ヴィクトルの「吉日だから満月の日に」はしょうがなくて承知も、明るいうちに市長（クレイトン・オラリア）の媒酌で式をあげる。ヴィクトルの父のタド（ダンテ・リヴェロ）がアスワンの存在をさほど驚かず、アイリーンとエンジェルの「本当にアスワンがいるの」と問いに対して冷静に答えていたが、叔母のシマン（ルス・ヴァルデス）の「話したほうがいい」に応じてヴィクトルに母方の祖父母がアスワンだったが、アントン神父（ジュニー・ガンボア）に救われたと告げ、アスワンの血が流れると知ったヴィクトルが口をモゴモゴと牙がでるか試すバカっぽさがクスクスできる。
　アルファ、ベータ、ケカの襲撃にエリサがイダとバノンと対抗で戦い、ベータがアルファとケカを失ったとバランに泣いて報告。怒りのバランがベータとホアキンにくわえ、若者のアスワン（ジャン・ソット）を伴って復讐に現われ、イダとバノンを殺す。つかまってはりつけのエリサを救出にヴィクトルがトムとジェリーと向かい、クライマックスになる。対アスワン用の弓矢やギザギザの剣、透明にかわる薬を買うとき、売人のペクウェン役でジョーイ・デ・レオンがゲスト出演し、とぼけた演技をみせる。
　エリサをアントン神父のもとへ連れていき、悪霊を退治まで、とりあえずはあくびを招かずに進め、トニー・Ｙ・レイエスらしい語り口がまずまずといえる。
　マリヴィク・ソット（ヴィク・ソット）、トニー・Ｙ・レイエス、ビベット・オルテサの脚本がＧレーティングにもかかわらず、じゃっかん暴力的な表現を盛りこむ点がイマイチに思える。
　残念ながら個人的に趣向の性描写を欠くも、一応は女優の魅力が楽しみをくれる。クリスティン・レイエスが牙をむくギャップを狙うのか、いつになくキュートなクリスティンを何度も撮り、確かにかわいさがググッとひょう変がファンの心をくすぐる。この邪悪に変化のぞくぞく感はジーン・ガルシア、ジャッキー・ライス、デニス・ラウレル、エンプレス・シュックにもあてはまる。クリスティンはヴィクトルをベッドでマッサージのあと、牙がでるや、アイリーンとエンジェルがケーキをもって部屋にきたのでヴィクトルがトイレに隠す。エンジェルが屁をこいてお腹がゴロゴロと鳴り、トイレで下痢便を排出ですっきりしたとの間、スリップのまま天井にへばりついて臭いに耐える。子どもたちがいなくなってベッドへ戻るや、ヴィクトルを誘う寝転んだポーズで太腿がそそる。ヴィクトルが会社で採用面接のときにビルの窓の外からのぞき、上下さかさまにぶらさがるかっこうで赤いワンピースに浮かぶバストの谷間が視線を奪う。アスワンたちと対決で飛び蹴りにワンピースがまくれ、パンティーがチラリにドキドキ。ただし傷をペロペロと舌でなめて治療は、さほど色っぽくない。ジャッキー・ライス、デニス・ラウレル、エンプレス・シュックはワンピースで格闘も、本当は下半身にフィットの衣装ならもっと興奮を呼んだはずと惜しくなる。とくにジャッキーとデニスは以前に大胆なビキニのグラビアでお世話にあずかったが、一緒に並べばジャッキーのほうがタイプとわかる。とにかく美貌となれば熟女のジーン・ガルシアに尽きて、絶世にあたいするもの。ワンピースの胸元が欲望をムズムズとかきたてる。あと、車が故障で困る女性をヴィクトルが助け、この女性をヴィク・ソットのプライヴェートの愛人であるピア・ガニオが演じて「私のボーイフレンドに似ている」と楽屋落ちの台詞をいい、ピアのジーンズの短パンがセクシー。ヴィクトルのバランガイに住むインド人のシン氏（サム・“シヴァッカー”・ン）が入浴中の妻がのぞかれたと犯人を追いかけ、妻役のジェニー・ミレルがボディーにバスタオルを巻いてうろつく。満月でうずくエリサとイダとバノンが猛犬にかわり、妊婦のお腹から漂う生気をかぐとき、妊婦役のカリル（人気歌手のカリールをもじった芸名だろう）がそこそこの容貌。ちなみに妊婦はヴィク・ソット主演のＴＶ『ＯＫＡＹ　ＫＡ，　ＦＡＩＲＹ　ＫＯ！』をみている。ヴィクトルが面接の採用希望者のひとりで、バストの大胆な衣装を着る役のオルカは美形の部類ながら、ひょっとしてニューハーフかもしれない。ヴィクトルの秘書のカティー役と、その同僚の女性役は女優名が不明で、ともにキラリと美しさが光ってプロのモデルのゲストかもしれず、是非とも名前を知りたくなる。 また、プールで子役のバービー・オルテサとミカ・デラ・クルースが紫のセパレーツと赤いセパレーツの水着を披露は、これで萌えればロリコンだけど、バービーのほうは将来の美女候補の顔だちなので、水面に突きだすお尻がチャーミング。プール・サイドには黒い短パンのセパレーツと白い柄のビキニの女性が走り、花柄ワンピースや赤と黒のビキニの女性が歩けば、黒いワンピースの少女が座るし、水の中で柄のセパレーツの少女が遊ぶ。奥のプールサイドに赤いビキニの女性が戯れ、エンジェルとアイリーンがスライダーから流れ落ち、トムとジェリーもドチャンバチャンのショットで手前に座る黒いビキニの女性の容姿が隠れるも、お尻が刺激的にうつる。
　なお、ヴィクトルたちとアスワン一味の激闘の現場へ駆けつける警官役でヴィク・ソットの息子のオヨ・ソットがゲスト出演し、ヴィクトルのバランガイにある店でならずものの乱暴を撃退のシーンで、店主役にドン・ペポト、ならずもの役にレヴィー・イグナシオ、ダニー・ラブラ、ボーイ・ロケ、レイ・ヴィハルが顔をだす。村に来襲のアスワンを演じる俳優には、パウロ・セラーノ、ジュスティン・デ・レオン、アマイ・ヴィサヤなどがいる。