ＡＮＧ　ＤＡＬＵＢＨＡＳＡ
（エキスパート）
　
00年：ミレニウム・シネマ
監督：ロンワルド・レイエス
主演：フェルナンド・ポー・ジュニア
　　　 ナネット・メドヴェド
　　　 マリトニ・フェルナンデス
　　　 クリス・ヴィリオンコ
　　　 パキト・ディアス
　　　 リカルド・セペダ
　　　 ベルティン・ラブラ
　　　 ボブ・ソレル
　　　 マーク・アンヘロ・ウィルソン
　医者で早撃ちの名手というキャラクターをフェルナンド・ポー・ジュニアが演じる自作アクション。まあ、普通によくできた仕上がりといったところ。
　軍隊の士官であったＦＰＪは、ボン・ヴィバルとジセット・プロスペロ演じる友人の判事夫妻宅を訪ねていたとき、ジョニー・ヴィカール演じる弟の判決に不満を持つ男のグループに襲撃を受け、マイタ・サンチェスとセシル・ブエンスセソ演じる妻子を射殺される。このジョニーに復讐をとげるまでのドラマだが、多彩なエピソードで遠まわりした構成。
　二年後の保安官に就任しての悪人退治は、得意のマグナムをつかっての豪快な射撃でカッコつける。四年後の誘拐犯の捜査では、赤外線照準のライフルで確実にしとめていく。人質の女性に発砲しそうな瞬間、最初にリーダーを標的にしないのはマヌケだが…　バーでの容疑者逮捕では二丁拳銃を駆使し、一瞬のうちに単独で十名以上をも始末が無理のある展開ながら、みごとにヒーローを謳歌する。
　舞台をセブに移し、観光描写のあと、マリトニ・フェルナンデス演じる恋人が登場。マリトニは既にクリス・ヴィリオンコ演じる思春期の娘を持つも、ＦＰＪとクリスは気持ちが通じ合っている。ちなみにクリスは歌手を夢みる設定で、実際に主題歌の“ＩＫＡＷ”を歌っている。トニー・カレオン演じるマリトニの父からの就職申し入れをＦＰＪが断ったことで対立が始まり、クリスが脳腫瘍で亡くなると、マリトニはＦＰＪの手術のせいだと誤解してＦＰＪを追いだす。このエピソードの中でマリトニが「銃は恐い」といっている台詞があって共感を呼ぶも、最後までマリトニが銃とからむシチュエーションを欠くのは、ちょっと細部に練りが足らないかな。
　飲んだくれのダメ男になったＦＰＪがマニラへでて、メイン・ストーリーへ。行き場のないＦＰＪを、ベルティン・ラブラ演じる貧民街に住む男が面倒をみている。エドサ・エンターテインメント・コンプレックスの外観を映し、内部は別の店。へべれけのＦＰＪはタチの悪い客どもにからまれ、完全にのされる。このあたり、あとで再び店で男どもをのすシーンが用意されているから、わざと情けなさを強調した表現。ザンドロ・ザモラ演じる店のマネージャーが自宅へ連れ帰り、ナネット・メドヴェド演じる妹が治療する。ナネットが貧民街でボランティアの医療活動を行っていると知り、ＦＰＪも診療に参加しながら立ち直っていく。ナネットの医者仲間で、ザンドロの妻を演じるデデス・ウィテカーがナネットよりも美人で好みのタイプ。看護婦もかわいく、女優の魅力にときめく。看護士の中にひとりオカマがいるのは、コメディー要素。貧民街ではマルコ・ポロ・ガルシアやジェラルド・エヘルシト演じる不良がカツアゲを行っていて、ＦＰＪがマルコをしかる。一発、殴られただけでメソメソと退却がしょうもないものの、パキト・ディアス演じるマルコの兄がバランガイ警察で、ＦＰＪへ仕返しにくる。ＦＰＪが「警察なら正義を知れ」と痛烈に怒り、パキトの抜いた銃をとっさに奪って弾を落とす早ワザがＦＰＪらしい見せ場をつくる。パキトの息子が急病にかかり、あやういところをＦＰＪが手術で助け、パキトが鶏を持ってお礼にくるほのぼの感がいいムードを醸しだす。
　銀行強盗などを繰り返していたジョニーが警官隊に撃たれ、ロミー・ディアス演じる子分宅にかくまわれ、病院へ行けないので、貧民街で名医と評判をとっているＦＰＪをら致するあたりからクライマックスへ。治療後も監禁されていたＦＰＪが脱出し、いったんセブに戻って自宅から拳銃をとる。リカルド・セペダ演じる医者が手術ミスからクリスを殺したとの告白を得てＦＰＪへの愛がよみがえり、マリトニがとめるも、振りきってマニラへと向かう。ベルティンの協力でロミーをしめあげ、ジョニーの退路が船だとつかむと、ボブ・ソレル演じる船長とともにジョニーをやっつけて冒頭の復讐をはたす。この銃撃戦はちょっとありきたりで、ジョニーがアホみたいに弾を無駄撃ちしているようなショットがあったり、イマイチな印象。
　それでもＦＰＪが貧民街へ帰ってくると、ナネットがかけよってキスするラストで、ちょうどパキトの音頭で住民たちがビンゴ・ゲームの真っ最中。パキトがＦＰＪに「ビンゴ」と声をかける、たくみな情感でしめる。
　そこそこ、いいんじゃないか。
　だだし、ナネットがまったくセクシーじゃない点は、大いに期待はずれ。マリトニもトニーのパーティーでヘソだしの衣装だが、リカルドの告白を聞きだすパーティーはプール・サイドで、ビキニやワンピースの女性がチラリとでてくるのに、水着姿じゃなくて残念。
　なお、マリトニとデデスの出演や、ロミーをとっちめるブタの養豚場など、同じ年に製作のＦＰＪ主演作『ＡＹＯＳ　ＮＡ…　ＡＮＧ　ＫＡＳＵＮＯＤ』に共通した部分がみられるのは、契約や撮影協力の関係をうかがわせる。