ＡＮＧ　ＢＥＥＲＨＯＵＳＥ
　
09年：パブリカ・ピクチャーズ／ペリプラ
監督：ジョン・レッド
主演：ライアン・アイゲンマン
　　　 ジェフリー・キソン
　　　 グウェン・ガルシ
　名優のジョエル・トーレが制作のディジタル作で、同じく名優のロニー・ラサロが共同制作のひとりに名前を連ねる。『ＢＯＳＯ』に続くジョン・レッドのセクシー・タッチのコメディーながら、現地で「ビールハウス」と呼ぶ場末のストリップ・バーを舞台にとるも、セクシーさのほうはいささか後退する。でも、そこそこに楽しめる内容になる。
　この手のビールハウスは個人的にちょくちょくと飲みにいくので興味がわくが、少しケンカの多い設定のあたりが現実と違うと感じる。
　現地で「バーベキュー」と呼ぶ肉の串焼きの露店を“レッド・ライト”というビールハウスの前で営むノイノイ（ライアン・アイゲンマン）とブラッド（ヘクトル・マカソ）が主人公。ノイノイは子どものころにビールハウスをのぞいた経験があこがれのベースにある。毎日、レッド・ライトの入り口をながめて仕事のノイノイのナレーションでビールハウスの料金やシステムが語られる。
　ストリッパーのジュウェル（グウェン・ガルシ）に恋心を抱くノイノイが売りあげからカネを貯め、ブラッドと客になる。ひょんなことがきっかけでマネージャーのハリー（ジェフリー・キソン）にノイノイがスタッフに雇われ、相棒のブラッドとの間に不協和が生じる。ジュウェルとノイノイが真剣に逃亡を考え、ハリーの裏金の隠し場所をノイノイが知る。
　全編、爆笑でなく、クスクスとニヤつける調子で進み、人間描写や皮肉な要素を盛りこむ。ダンサーに定番のオカマがいて、太った醜いタイプだが、踊りの指導にあたる。ノイノイとブラッドがビールハウスへでかけるさいに入念なおめかしにこる。店でブラッドの横についたベチャイ（カテリン・ラクサグ）が身の上話で泣いて気を引く。でも店の前でバーベキューのスタンドからブラッドがあいさつを送ってもベチャイが無視。客のヨボヨボの老人がスケベなジェスチャーをとる。ウェイターが客の飲み残しのビールを混ぜる。ダンサーの誰かの小さな娘が控え室をうろつく。ジュウェルがノイノイにビジネスのもうけの金額を何度もたずねるなど。
　年配のＤＪの店内放送や、ホステス兼のストリッパーが客の席を移動にくわえ、飲み代を欠く客が時計を置いたり、記念日にイヴェントを開催といったビールハウスのようすと同様にバーベキューを焼くノイノイとブラッドの手元を丹念にとらえるも、バーベキューの仕込みはでてこない。
　裏金の隠し場所がサント・ニーニョの中やイヴェントの大入り祈願で神に礼拝に宗教の根づきかたがにじむ。
　ボス（ジョエル・トーレ）に横領がバレてハリーが処分されるツメで、誰がカネを盗むのかの暗示は、さほどサスペンスを伴わず、演出の狙いの外。ノイノイとジュウェルがそれぞれ元の鞘に戻るうえ、バーベキューの手伝いをはじめた子どもがビールハウスをのぞくラストにいたって、ノイノイのつかの間の淡い夢みたいな時間を描いたとわかる。途中でハリーの銃をノイノイがもって眠るハリーに銃口を向けるおふざけのシーンをはさむも、最後まで発砲がないあたりがよい。
　ライアン・アイゲンマンのほどほどに起伏をつけた感情表現がうまく、庶民的な容貌もプラスのヘクトル・マカソがドラマにリアリティーを与える。
　もっともストリップの露出は全体的におとなしめで、ダンサーたちの衣装の生地が厚かったり、ボディコンや短パン、またはジーンズのミニをはいていたり、練習で服のままだったりながら、グウェン・ガルシはステージやノイノイの幻想で色柄、光沢の金、豹柄、白地の水玉のビキニを着るし、ノイノイとＶＩＰルームへ入って抱きあううちにプライヴェートの愛撫に変わるとき、乳首や下向きのオッパイ、シースルーの黒いパンティーの半ケツをみせる。バーベキューをみやげにノイノイが昼間の店内へきて仲が深まると、全裸のセックスにつながって乳首をだす。イヴェントのストリップでブラをはずし、トップレスでみごとなオッパイを全開にさらす。逃亡準備の控え室で水着のパンティーの半ケツぎみがそそり、ジーンズをはいても半ケツっぽい。でもグウェンは腰の刺青やヘソピーがジャマで興奮度を弱める。
　クレジットにはグウェン・ガルシの演技コーチにイルマ・アドラワンと記され、グウェンは女優として頑張ったと思われる。
　ハリーの愛人的なストリッパー役のカリラ・アギロスは綿棒で耳掃除の好きなハリーを耳かきに続くイチャつきで短パンが半ケツぎみなうえ、イヴェントの衣装がお尻にくいこむ白い短パン。前借りばかりでハリーの怒りをかったり、ご機嫌斜めのボスをキスでなだめるストリッパーのライカ役のチェ・ラモスはビキニで腰をくねらすダンサー全員の紹介ショットで緑のパンティーが色っぽく、ステージの白いビキニが視線を引きつける。カテリン・ラクサグは水着が厚手のもののみ。愛人の言葉づかいや、ライカとベチャイのけんかなど、いずれも演技が達者。
　イヴェントのために増員のダンサーの三名は、オーディションでふたりが乳首をだし、パンティーをさげてお尻をみせる。ボスがハリーを拘束の騒動になるイヴェントの当日は、ひとりが乳首をモロのトップレス、ひとりがＴバック、ひとりが短パンの逆さ座りの大股開きで踊る。
　あと、ハリーがレジの太めの女性に小遣い銭をあげるとき、バストの谷間に札をつっこむ。
　まあ、みんなビンビンに遠いままに終わり、セクシーさの面だと期待外れかな。
　ボスの両腕っぽい部下を演じるロニー・ラサロとベンジー・フェリペは台詞がなく、一連の騒動を黙ってながめる隣人役のソリマン・クルースも声を発せず、常連客のひとり役のタドはぼやき程度でも、いるだけの存在感が光る。
　色彩に特徴をつけるオギ・スガタンの撮影はフィルム向きで、ヴィデオにあわないように感じる。