ＡＮＧ　ＢＡＢＡＥＮＧ　ＮＡＷＡＷＡＬＡ　ＳＡ　ＳＡＲＩＬＩ
（自分自身を失っている女）
　
89年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：エディー・ロドリゲス
主演：ディーナ・ボネヴィー
　　　 エディー・グチェレス
　　　 ダンテ・リヴェロ
　　　 バルバラ・ペレス
　　　 トントン・グチェレス
　　　 チェリー・ヒル
　　　 フアン・ロドリゴ
　恨みを抱いて亡くなった女性の霊が相手の男の娘に乗りうつり、淫乱な行動をとらせるドラマ。幽霊をチェリー・ヒルが演じ、妖艶に変わる娘をディーナ・ボネヴィーが演じるだけに、大ファンの美人女優共演に期待が盛りあがる。
　いきなり十五年後とのクレジットから始まり、なんじゃ、そりゃ、普通なら回想で時代をさかのぼるときに十五年前だろう、とバカにしたくなるが、最後までこのいい加減さをぬぐいきれなかったのは事実。ロッド・サンチャゴの原作にもとづくラクエル・ヴィリアヴィセンショとエディー・ロドリゲスの脚本が平凡なら、エディーの演出が筋をなぞった適度のレヴェルだからといえる。とくに主人公のディーナが後妻におさまるエディー・グチェレス演じる親子ほど年齢のはなれたアメリカとドイツに家具店を持つ実業家に、トントン・グチェレス演じる先妻の息子がいて、トントンの半狂人ともいえるマザコンぶりなど、ほとんど常軌を逸している。
　でもセクシーな要素がグイグイ興味を引きつける。
　まずエディーが自宅へ連れこんだイサドラ演じる愛人に、トントンがベッドの下に隠れてヘビをもぐらせるところが最高。ビジネス・スーツのシャツとスカートを脱ぐと、イサドラはパンティーの上にパンストだけのトップレス。うしろ姿でお尻の形くっきりにパンティーが食いこみ、ふり返って手前へ歩いてくるショットでは堂々のオッパイ丸だし。しかも張りのよい美乳で、全体の大きさや乳首のキュートさが理想に近く、早くもビンビンを招く。トントンがいたずらでお尻にタッチするときの突きだしポーズもウヒャヒャ。
　ディーナに亡霊がつくメイン・ストーリーへ入ると、会社の上司であるラウル・アラゴン演じる名づけ親を重役室で誘惑し、シャツからブラの胸元をはだけたあと、帰宅してからがやってくれる。ベッドに横たわってスカートがのぞけるアングルでパンチラを撮り、スケベな気分を高めると、服を脱いでヴィーナスのごとき黒い下着姿。ああ、もう、しばらくブラとパンティーのみで部屋をうろつき、何たってディーナだけに、もはやイキそうになる。
　最初の十五分ほどで、完全にみたかいがあったじゃないか。
　続くダンテ・リヴェロ演じる父とバルバラ・ペレス演じる母からエディーを紹介されるシーンで、ジーンズをハミケツぎみの短パンに切って現われるのだが、ビキニ下着のあとではさすがにパワー・ダウン。
　以後、緑の気体となった霊がディーナにとりついたり、抜けでたりを繰り返す展開において、思ったほどそそらないのが、正直、残念な印象をつくる。フリオ・ディアス演じるディスコのバーテンをナンパしてベランダでのセックスでは、スリップの肩紐おろしや脚に酒をかける挑発描写のわりに、雨で濡れての愛撫に露出不足。アメリカ企業に勤めている設定のフアン・ロドリゴ演じる恋人と一緒にシャワーをあびると、すりガラス越しにフアンのお尻がスケスケなのにディーナは隠れたままだから、一体、どーなってるのよ。ベッドではディーナのオッパイがギリギリどまりなのも、かえってイライラ。映画館でジーノ・アントニオ演じる男をつかまえてカー・セックスになり、ラウルへの発覚で破局を招くときは中途半端な衣装の乱しかたのうえ、デクスター・ドリア演じるラウルの妻にみつかる二度目の誘惑はスリップまで。ちなみにジーノの恋人役のヴィッキー・スバがちょっとかわいい。レイ・ＰＪ・アベリアーナ演じるディスコでモーションをかけた客とはカラみがなく、エディーとの初夜は階段のパンチラ・ポーズでエディーに「お願いします」といわせる女王さま的な高飛車さでエッチなムードを醸したのに、全裸となった暗示のあとが、やはりあと一歩にとどまる。つけ根からスラりと伸びたおみ脚といい、エディーにヘソをなめられるお腹といい、肝心な部分だけをさえぎった横たわる全身といい、カッカ燃えてはくるのだが…
　われに返って恥ずかしさに逃げるディーナに緑の気体がスルスルッと吸いこまれるや、毎回、またくるぞ、またくるぞ、今度はやってくれるぞ、と脳神経が下半身への刺激を命令しまくって、ゾクゾク興奮を呼んだぶん、パワー不足と指摘せざるをえない。
　それでもトントンから嫌がらせを受けるプールでビキニの水着になり、濡れたボディーを披露してくれるから、ディーナにメロメロ状態へと追いこまれる。
　ディーナの下着姿と水着姿は、キラキラ輝く宝石なんて比じゃない価値を放つようだ。
　一方、ディーナに勝るとも劣らない美貌のチェリーは、霊という役柄だけに、白い衣装ばかりで肌をさらさないのが惜しかった。
　内容的にはディーナの前にチェリーが現われ、不気味がるのではなく、会話をかわすのが、先にふれたいい加減な部分。チェリーの声にエコーがかかって『エクソシスト』の悪魔みたいな連想を与えると、ベッドにディーナをくくりつけ、ジュニー・ガンボア演じるダンテの友人による悪魔祓いがマネっぽくでてくる。ディーナの体にひっかき傷がピリピリッと走り、気体の離脱できれいに元へ戻るのにはあきれてしまう。ダンテが事故でチェリーを死なせた過去がありきたりなら、ディーナを襲ったトントンにエディーがピストルを持ちだすのも定番パターン。もし評価を与えるとすれば、誤ってトントンを撃ったエディーが、原因となったディーナに銃を向けるのか、自殺するのかにサスペンスが生じたのと、直接、ディーナとチェリーがぶつかるクライマックスで、早口のののしり合いがユニークな程度。でも対決の頂点で周囲に火がついたにもかかわらず、ダンテ、バルバラ、フアンが黙って動かないのは、反応としてヘンよ、との疑問がもたげる。
　結局、ディーナの下着姿と水着姿しかみどころなし、といった感じに落ちつく。
　あと、イサドラのオッパイ全開か。
　なお、精神科医役でオデット・カーンが出演。少女のころのディーナとしてサンシャン・ディソンの名が読めたが、どこにいるのかわからずじまいだった。