（アンドレス・デ・サヤ〔愉快なアンドレス〕 残酷じゃないの！）
82年：ブカン・リワイワイ・フィルムズ
監督：アンヘル・ラブラ
主演：グロリア・ディアス
カルミ・マルティン
ヴィク・ヴァルガス
エディー・サンホセ
カチュポイ
ロンメル・ヴァルデス
マックス・ラウレル
ホアキン・ファハルド
ニック・アラディン
ジョセフ・コルドヴァ
バヤニ・カシミロ
ポポイ・ダクイコイ
ドン・ペポト
クーヤ・セザール
アンドレス・デ・サヤを主人公にする第二作で、今回は妻のマチルデ（グロリア・ディアス）にカナダの就労ヴィザがおりて、留守中に夫のアンドレス（ヴィク・ヴァガス）が浮気のうえ、重婚に陥る。フィリピンではおなじみの海外就労がもたらす、ねじれた夫婦関係のトラブルを皮肉るながら、印象はさほどよくない。
まずアンドレスとマチルデには男の子ができているのに、その描きかたがぞんざい。同居のマチルデの父のマラホ（エディー・サンホセ）が文句の多いのに、アンドレスの伯父で、弁護士らしいアラチャンバ（カチュポイ）がイラついていたが、マティルデがいなくなるや、アンドレスが洗濯などの日課をおしつけ、アラチャンバとともにマラホをこきつかうのが不愉快。それでマラホが薬入りの料理をアンドレスとアラチャンバに食わせようとするも、自分が口に入れるはめになり、病院へかつぎこまれて、いかにも頼りないヤブ医者（クーヤ・セザール）が登場のエピソードなど、さっぱり笑えない。マラホが男の子とでていき、あとでもう顔をださない構成が、どうもヘタなイメージを与える。カルロ・Ｊ・カパラスのタガログ・クラシクスへ連載の原作を、監督のアンヘル・ラブラが自ら脚色するが、なんとも困った構成に思える。
マチルデがいなくなるや、突然にアンドレスがイキイキの気持ちの表現はおかしいのに、勢いづいてバーでケンカもイマイチになる。一緒に暴れる男の役でエフレン・レイエス・ジュニアがゲスト出演する。
近所に色っぽい女性のヴィヴィアーナ（カルミ・マルティン）があらわれ、ヴィクとロマンスが芽ばえる本筋に入ると、ヴィヴィアーナの父（ジョセフ・デ・コルドヴァ）や三人の兄（ロンメル・ヴァルデス、マックス・ラウレル、ルスティー・サントス）が空手を自慢しまくり、結婚式にまで筋力や腕力を披露なのに、あとで重婚発覚で暴れるのかと思いきや、こちらも後半に顔をださないのがヘン。
もう、本当にヘタ。
結婚式で花嫁の投げたブーケをオカマが受けとるギャグのあと、いざ初夜というときにマチルデが戻ってくる。近所のものがマチルデをみて、ダルマさんが転んだみたいに凍りつくのが、ちょっと笑えるかな。二人の妻にはさまれたアンドレスが自殺を考え、線路に寝ころんだり、川に飛びこんだりは天使と悪魔が登場でささやくギャグだが、心理に説得力を欠くため、ただシラけるばかり。マチルデが中国人の暮らす海岸へ流される挿入も、とう突すぎてバカらしい。アンドレスがヴィヴィアーナとセックスの際、屋根の上にヴァイオリン弾きがいて、乞食のかっこうをした三人のヴァイオリン弾き（タトロン・イトログ）がムードづくりのようで、ちゃんとアンドレスが「なんで、そんなところに」と意識している点が、唯一のプラス要素になる。
まあ、アンドレスとヴィヴィアーナのセックスにマチルデが勘づくも、ヴィヴィアーナとマチルデに女同士の友情がわきあがり、ヴィヴィアーナがでていく。再びアンドレスがマチルデの尻に敷かれる、元のサヤといったドラマで、いたって平凡。アンドレスがマチルデに威厳をだすため、ビンタをくらわせるや、反対にボコボコの目にあわされるのはギャグながら、きっかけであっても男が女に暴力を振るうのはいただけない。パワーの象徴のごときアンドレスの黒いリスト・バンドもさして小道具として活かされず、水準以下のでき。
アラチャンバがニセ弁護士ふうでいて、重婚の訴訟で本物の弁護士（バヤニ・カシミロ）の事務所へいき、ヴィヴィアーナにも弁護士（ドン・ペポト）がついているみたいなのに、法廷シーンへ進まない肩透かしも安手になる。
アンドレスが初夜の準備で蚊帳を吊っているのと、マチルデが寝る蚊帳とヴィヴィアーナが寝る蚊帳の間でアンドレスが蚊帳なしで寝る光景が、視覚的にユーモラスかな。
とにかくカルミ・マルティンの出演に注目で、絶対に水着シーンがあると予想したが、しっかりあるのが嬉しい。アンドレスとデートでビーチへいき、黒いビキニで走ると、小さなブラのオッパイがゆさゆさと揺れる。部屋にいるときのハミケツぎみの短パンや、タガイタイでのジーンズもキュート。結婚前の部屋では同居人を演じるラニ・ハリリも短パンをみせる。セクシーさではグロリア・ディアスが色っぽいカルミに負けたといえる。
なお、レイ・ラモスが作詞・作曲の主題歌をズバス・ヘレロとノエル・トリニダッドが歌っている。
