ＡＮＤＲＥＳ　ＤＥ　ＳＡＹＡ
　
80年：ブカン・リワイワイ・フィルムズ
監督：アンヘル・ラブラ
主演：ヴィク・ヴァルガス
　　　 グロリア・ディアス
　　　 エディー・サンホセ
　　　 カチュポイ
　ヴィク・ヴァルガスとグロリア・ディアスが夫婦を演じるコメディーで、フィリピン人のライフ・スタイルを風刺する。
　パレードがとおり、子どもたちが棒のぼり大会などにきょうじるフィエスタの田舎街。教会では結婚式がおこなわれ、花嫁の投げたブーケをオカマがうけとって苦笑がおきる。レチョンをおいて、おなじみの披露宴のパーティーが開かれる冒頭が興味をひく。
　新婚のアンドレス（ヴィク）とマチルデ（グロリア）は、新郎が新婦の家に暮らす図式。高床式住居は部屋がひとつしかなく、マチルデの父（エディー・サンホセ）の寝床とは砂を入れた米袋を並べて積んで仕切るも、簡単にのぞけてアンドレスとマチルデがセックスできない。アンドレスが包茎とわかり、大きな木の下で子どもたちを並ばせ、硬い枝の棒でチンポを叩いて皮をむく割礼をうけさせる。アンドレスが水牛をつかって畑を耕作し、マチルデが足の爪の美容師をよぶ。マチルデの父がアンドレスに嫉妬深かった妻の思い出を話して聞かせ、マチルデにも同じ性格があると諭す、とフィリピンの慣習や庶民の暮らしぶりをドタバタでみせる。
　アンドレスの叔父（カチュポイ）が住むマニラへ移ってからが後半。叔父は弁護士ながら、半分自称に近く、家は貧民街の中のボロ屋。近所の男がマチルデにちょっかいを入れたがり、この男たちとアンドレスが妙に親しくなるのが、同じ区画同士で暮らすマニラっぽい。アンドレスが暴行事件だと助けに飛びこめば映画撮影で、怒るディレクターに近所の男がアンドレスを役者だと売りこみ、にわかに役をもらって女優といれば、マチルデが浮気と勘違いでビンタにくる、なんてバカバカしいエピソードがでてくる。マーケットでアンドレスがスリにあい、追いつめてボコボコにし、財布を返させるも、実は中味を抜かれている。スリのほうがアンドレスに殴られるときに壊した商品の弁償を迫られるのがおかしい。弁護士の叔父が床屋をやり、ハゲ親父の頭を音楽に合わせて刈るのは『チャップリンの独裁者』のパロディーだろうか。酔ったアンドレスがマチルデを口説く近所の男たちをクンフーで撃退の夢オチ・エピソードには『酔拳』の影響がうかがえる。アンドレスが洗濯や買い物で、マチルデがしないのを女たちがウワサし、買い物の途中でアンドレスが近所の男と路上トランプ博打にカモられてカネを失う。野郎どもがビリヤード場にたむろするなどに、女たちがマチルデをリーダーにかつぎ、ダメ男どもの抗議にやってくる。
　クレジット・タイトルやエンディングが欠落なため、スタッフ・キャストが不明ながら、資料によれば、アンヘル・ラブラという人物が監督らしい（カルロ・Ｊ・カパラスとの記載もある）。具体的なキャリアはわからないが、さしてストーリーのない点描的な内容を、ときにハズし、つまらない表現を含みつつ、とりあえずはフィリピン人だなあとのあきれの笑いを招く。
　割礼の際にヴィク・ヴァルガスがお尻をだしていて、グロリア・ディアスにも露出を期待したが、もちろんモロはないも、肩紐が落ちるタンクトップの下が短パンで、ハミケツに食いこむピタピタが視線を奪う。下着姿がセクシーなうえ、アンドレスの幻想のダンスでは赤いブラとスカートでタンゴを踊り、小さめのバストがキュートで、そこそこ魅力がにじむ。マニラの隣人の暴れん坊に美人妻がいて、おそらく演じるのはロレイン・シュックと思うも、けっこうそそるタイプ。トランプ博打のサクラになる女を演じる女優は不明だが、こちらも性欲をもよおす色香を漂わせる。