ＡＮＡＫ　ＮＩ　ＢＯＹ　ＮＥＧＲＯ
（黒人少年の息子）
　
97年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：トト・ナティヴィダッド
主演：ジョコ・ディアス
　　 　ドニータ・ローズ
　　　 ルーファ・メエ・キント
　　　 ブランド・レガスピ
　　　 キエール・レガスピ
　　　 ラモン・クリストファー
　　 　ウィリー・ヴィリアーメ
　　　 シンタロ・ヴァルデス
　　　 エヴァンジェリン・パスクアル
　　　 エヴァ・ダレン
　　 　ミコ・マソン
　とにかくケンカしているという印象の映画である。ジョコ・ディアス演じる主人公が、ブランド・レガスピ演じる不良のボスと出会う冒頭から殴り合いで、ビリヤード場、屋外ディスコ、刑務所の中とシチュエーションを変えて、よくもあきずにファイトを繰り広げるものよ。
　ドンパチもこれでもかとでてきて、二度あるカー・チェイスでの銃撃戦はさして違いがなく、同じような撃ち合いをまたかとみせてくれる。ラモン・クリストファー演じる敵のグループがパーティー会場を襲うシーンがありきたりなら、ジョコやブランドたちがラモンを追いつめる地下水道の中での対決も長い。ラストの機関銃まで持ちだしたブランドの一味数名をジョコが一人でやっつけてしまうのは、いやはや、ご都合主義だなあ。
　というわけで、アクション映画としては平均レヴェルを超えていない。
　ジョコにはドニータ・ローズ演じる恋人がいるのだが、ブランドにドニータを紹介したとき、その美しさにブランドがオッと引かれているから、あとの展開はわかったも同然。ルーファ・メエ・キント演じるブランドの妹がラモンとつき合っていて、しかもジョコも誘惑するから、犯罪映画で男女がからむ際の、あまりにも定番の人間関係。ロシアン・ルーレットごっこをすることで表現しようとしたブランドの異常さも、殺気のある怖いヤツというよりは、単細胞なバカといった印象を与えるほうが強い。ブランドがドニータをレイプする展開など、ジョコが刑務所に入っている間に実行すればよいのに、なんで出所してからなの、といった疑問が次々と起きるわけで、脚本のレネ・ヴィリアヌエヴァはもっとストーリーを練ってほしいなあ。
　主人公が黒人とのハーフという設定も、とくに差別問題がからむわけでなく、ほとんど生かされていない。
　まったく欠点ばかりが目につく作品だ。
　でもエヴァンジェリン・パスクアル演じる洗濯女の母と一緒にジョコが住む貧民街の環境は、ザンドロ・ザモラとエヴァ・ダレン演じる両親とともにサンパギータの店をだしているドニータ一家とも重なり、まずまず描きだしている。トニー・マベサ演じる弁護士の父を持つブランドたちの中流生活へジョコが引きこまれるのも理解できる。
　黒を主体にした画面づくりがそこそこ厚みを加えていて、トト・ナティヴィダッド監督はムードの盛りあげがうまいといえる。
　けっこう興味深い要素を秘めるのも事実。
　これには低音をたくみにアレンジしたノノン・ブエンカミノの音楽に助けられる部分が大きいと感じる。フィリピン映画界はノノンという素晴らしい才能を持っているではないか。
　まあ、ドニータのエキゾティックな美しさと、ルーファのキュートなお色気を期待してみたのが本音。ドニータはジョコとのベッド・シーンやブランドたちにまわされるシーンがあるものの、チラッとブラがのぞくだけなのが残念。でも目鼻立ちのくっきりした美貌でうっとりさせるから、十分に納得。ルーファはラモンとのセックス・シーンでちょこっとだけオッパイをチラつかせたあと、プールからあがるシーンで黒いハイレグ・ビキニの濡れたボディーを披露してくれる。うーむ、みごとなプロポーション。ジョコとのセックスがクローゼットの中で、肌が大胆に露出しないのは不満だが、一応よしとしたい。
　あとジョコたちがバーへ飲みに行くシーンで、ホステスにけっこうかわいい子がいて、気になってしょうがなかった。