ＡＮＡＫ　ＮＧ　ＴＯＮＤＯ
（トンドの息子）
　
85年：フォー・Ｎ・フィルムズ
監督：ティト・サンチェス
主演：ルディー・フェルナンデス
　　　 マリアンネ・デラ・リヴァ
　　　 エミリー・ローレン
　　　 ジョージ・エストレガン
　　　 ラウル・アラゴン
　　　 レス・コルテス
　　　 フィリップ・ガンボア
　　　 マイケル・マーレー
　　　 レナート・デル・プラド
　　　 モン・ゴディス
　　　 クリストファー・パロマ
　　　 レオポルド・サルセド
　　　 デンショ・パディーリア
　　　 ルエル・ヴェルナル
　　　 アマイ・ヴィサヤ
　個人的なことで申し訳ないが、最近（２００９年６月）亡くなった、ごくごく親しいメイク・アップ・アーティストのマルー・タルプラシド（サルプラシド）女史が、その経歴の最初期に担当の作品と知って、彼女への追悼の意味でみてみた。
　ルディー・フェルナンデス主演のアクションで、トンドを舞台にとる。
　教会に男が赤ん坊を捨てるのが冒頭。ときが流れ、ベルティン（ルディー）が仲間のロルダン（ラウル・アラゴン）、ジョニー（レス・コルテス）、トゥーロ（モン・ゴディス）とトンドで顔をきかせるワルのボス（ルエル・ヴェルナル）をやっつける。後半の回想で示されるが、教会で育った子ども時代のベルティン（ニロ・ヌキ）は司祭の死後に教会を抜けだし、子ども時代のロルダン（リチャード・ロムアルデス）、ジョニー（クリフォード・アリサ）、トゥーロ（ベネディック・ヴィリアヌエヴァ）と出会い、友情で結ばれる。トンドを仕切るギャングのボスのメドラーノや、その手下（レナート・デル・プラド）のグループとバーでケンカで、ベルティンがメドラーノの顔に傷をつける。ロルダンが警官のマリオ（マイケル・マーレー）にカネを握らせて丸めこみ、ベルティンたち四人は勢力を拡大も、襲撃をうけて販売人のモロ（アマイ・ヴィサヤ）から銃を買う。またベルティンには恋人のセリー（マリアンネ・デラ・リヴァ）がいて、指輪を送るが、セリーの兄のラモン（フィリップ・ガンボア）が警官でベルティンを嫌い、交際を許さない。メドラーノとの抗争で撃たれたベルティンは逮捕で刑務所に入り、さらにイワヒグにある更生施設で農業に従事。そこで古参のテバン（デンショ・パディーリア）に老人のバドン（レオポルド・サルセド）を紹介され、ベルティンのさげるペンダントでバドンがベルティンを息子と気がつく。トンドではベルティンが不在の間、ラモンによって警察を解雇になったマリオとロルダンが手を結び、大麻の販売に乗りだす。バドンが刺される事件をへて、ベルティンがトンドへ戻ると、ロルダンたちが歓迎も、ベルティンがなじめない空気を感じる。またセリーが男の子のジュニア（クリストファー・パロマ）を育て、ラモンがベルティンの接近を拒むながら、すぐにジュニアがベルティンを父と知り、ラモンも家族と認める。顔の傷の復讐とベルティンを狙うメドラーノをロルダンが抑えるも、犯罪に抵抗をおぼえるように変わったベルティンがロルダンとたもとをわかつ。メドラーノと和解のふりを利用でロルダンがメドラーノを襲うが、たくみにメドラーノが生きのびる。ロルダンとトゥーロが撃たれて亡くなり、セリーがとめるのを聞かず、再びベルティンが銃をとる。ジョニーとともにメドラーノを壊滅に追いこむが、メドラーノの愛人（エミリー・ローレン）にターゲットが違うといわれ、本当の黒幕がマリオとわかる。
　闘鶏場でベルティンが撃たれる銃撃戦をくり広げ、違法ギャンブル場でロルダンが殺人の芝居でカモをだまし、売春宿でおばさんのママが女の子の二人を部屋にいれ、バーでろれつのまわらないメドラーノの手下がホステスとキスをママがながめるほか、ビリヤード、ダーツと風俗や遊びがでてくる。刑務所にロルダンたちが面会でベルティンがパンシット・ビーホンなどを食い、ベルティンの帰還にロルダンが「舶来だ」とジョニー・ウォーカーの黒ラベルをすすめるといった食べもの、飲みものをシチュエーションの表現に使う。ロルダンが逃げるメドラーノの手下を背後から撃ち殺し、ベルティンが更生農場の木にセリーと刻み、冷酷な性格や悪党になりきれない内面を示す。市場でジョニーが妻らしき女性を殴り、乱射の襲撃で少年（マイケル・エリサガ）に流れ弾があたって母親（ピラル・デ・レオン）が驚くなどの細部がドラマにふくらみを与えるに足らず、ついに「父だ」と告げないままに亡くなるバドンの殺害に意味を欠くうえ、そもそも偶然に邂逅がウソっぽい、とヴァル・アレタのストーリーにもとづくホセ・フロレス・シバルとフミルデ・‘ミーク’・ロハスの脚本がいささか短絡的。
　ベルティンがジュニアと一緒のところを狙われ、ラモンが応戦で、あやうく銃弾を逃れたあとにジュニアが怖がっていないあたり、人間の心理がおざなりなティト・サンチェスの演出も弱い。
　語り口がヘタで、やや長く感じる点がマイナスを増す。
　女優陣はマリアンネ・デラ・リヴァが美人ながら、セクシーさに遠いかな。エミリー・ローレンはメドラーノのプール・パーティで水着でも、ただ座るのみで、ベルティンの出所祝いを貸し切りのバーでおこなうときに唯一のダンサーで踊り、寝転ぶポーズで股間のあらわが視線を引きつけるが、最後までパレオをとらず、ベルティンとセックスで乳首をチラッとみせる。ロルダンの電話をメドラーノがうける横では赤いローブを着てメドラーノと愛撫し、やはり股間が色っぽく、メドラーノが亡くなるベルティンの襲撃でハッピ型の赤いローブに太腿がそそる。メドラーノのプール・パーティーには愛人のほかにビキニの女性が三名うろつき、ひとりは水からプール・サイドにあがって赤いビキニのパンティーがお尻にピタピタと貼りつく。ロルダンにホステスが挨拶でメドラーノともめる原因をつくるバーのビキニのダンサー三名や、ベルティンたちのメドラーノの本拠を攻撃に、セックス中であわてる子分と寝る素っ裸の女は、おそらく風俗従業者だろう。
　とりあえずはエミリーの乳首に注目。
　なお、フェリックス・Ｅ・ダライが共同監督でクレジットに読める。