12年：ＡＢＳ−ＣＢＮプロダクションズ／スカイライト・フィルム・プロダクション
監督：トペル・リー
主演：エンジェル・アキノ
エンリケ・ヒル
マルティン・デル・ロサリオ
エンプレス
イージェー・ファルコン
ジェーン・オイネサ
サイリエル・マナバット
レイプ事件をからめたホラーで、とりたてて新味はないながら、そこそこに楽しめる。
ジョエル・Ｍ・メルカドとエンリコ・Ｃ・サントスのストーリーによるエンリコ・Ｃ・サントスとカレン・Ｖ・ヤップとウィリー・ラコンサイの脚本が、まずまずの展開をつくる。
冒頭に若い女性のサンドラ（エンプレス・シュック）が恋人のジェリー（カルロス・アキノ）と会うのをサスペンス・タッチに盛りあげは、ただのこけおどし。サンドラがジェリーの友人たちにレイプのうえの惨殺を別のファミリーのホーム・パーティーにつなげ、パーティーでヒロインっぽく登場のロサことアモロサ（エンジェル・アキノ）にサンドラの霊が転移の内容かと察したが、違っていた。ロサはふたりの息子を深く愛し、とくに兄のほうが盲目になる病気をわずらったために自分を責める。数年後に夫のリト（ロイド・サマルティノ）が事業に失敗で借金をこしらえ、視力を完全に失ったアミエル（マルティン・デル・ロサリオ）が家族の重荷になりたくないと盲人の施設にはいるという。そのことで運転中にリトとサンドラがもめて交通事故をおこし、リトが亡くなる。崖から落ちそうな車の中に残されたアミエルと弟のロンメル（エンリケ・ヒル）のどちらを先に助けだすかの選択にロサが迫られる。
しばらくののち、ロンメルが不良のルドルフ（フランコ・ダサ）とつきあいはじめ、ロサが悩む。伯母のローラ（ロリエ・マラ）がオーナーのリゾート施設にマネージャーの職をえて、アミエルとロンメルとともにロサが転居。そこで超自然現象に直面する。
リゾートへ向かう途中に男の死体をみかけるのが伏線。警官のヴィリエガス（リチャード・クアン）が施設にくると、殺害された男が幼い娘へのレイプ犯で、この近辺ではレイプ事件がらみの殺人が多発中とロサに警告。レイプの犠牲者の幽霊による犯行とのうわさが広がっている。ついに幽霊が出現をロサが目撃も、ロンメルが幻覚症状だとロサに薬を飲ませる。さらにサンドラがレイプをうける幻覚に、ロサがリゾートの過去を知りたくなり、従業員のフリーダ（モサン）の案内で以前の管理人のペドロ（ナンディン・ヨセフ）を訪ねる。ピアノを連弾のアミエルとロンメルが炎につつまれ、幽霊が壁を歩く幻覚にうろたえ、ロサがマニラへ帰ろうと騒ぐも、相変わらずロンメルが幻覚症状だととめる。
この手の家つきに近いホラーの場合、主人公がいつまでもなぜそこにとどまるのかに説得力を欠くケースが多いし、本作も納得の理由をどうつけるかだが、そうきたかとうなずかせる。実は交通事故でアミエルがすでに亡くなっていて、一緒にリゾートへ転居のアミエルはロサの幻想だった。ちょっと『シックス・センス』あたりのいただきながら、ロサの幻覚体質に裏づけを与える。
ペドロの姪のアマンダ（ジェーン・オイネサ）とロンメルが久しぶりの再会でロマンスを示唆のあと、フリーダと幼い娘のナジャ（サイリエル・マナバット）、大工のエドゥ（ジョー・グルータ）、世話係で老婆のルル（リリア・クンタパイ）の従業員が不在の日にクライマックスをおく。ルドルフの悪友のウィリアム（イージェー・ファルコン）とグレン（ニコ・アントニオ）がアマンダに目をつけ、ロンメルを犯人にみえるように仕組んでアマンダをもてあそぶ。とっさにロンメルがアマンダを逃がすも、ウィリアムに刺される。グレンとルドルフが幽霊のしわざで亡くなり、重傷のロンメルをロサがかくまうや、ロンメルを犯人と疑うヴィリエガスが調べにきて、次に幽霊の標的はロンメルだという。ロサとロンメルが瀕死のアマンダの捜索に向かい、救助の要請でリゾートに戻ったロサをウィリアムが襲う。アマンダをかついで動けないロンメルをアミエルの霊が守る。
全体的に選択のドラマとでも呼ぶべき要素が核をなし、交通事故でロサがアミエルを選んだことにロンメルが傷つき、反抗的な態度をとるようになる。そのロンメルもロサがウィリアムに殺されそうなことを知るのがアマンダを病院へ緊急搬送の途中で、ロサに私よりもアマンダを選べと苦渋の決断を迫られる。サンドラのレイプでは部屋に隠れたものの、たまたま少年のジュン（ハイルス・アキノ）が近くにいたため、ジェリーがジュンを痛めつけるとおどし、でてくるか、ジュンを見捨てるかの選択に迷う。ジュンの成長後がヴィリエガスで、レイプ犯に対する激しい憎しみのトラウマを示す。
もっともシチュエーシュンを設定の不自然な無理が目だち、交通事故の緊急時に、そんなのさっさと手前から引きずりだせばいいながら、いちいちどちらを先かをたずねるのがヘンだし、ウィリアムの悪人ぶりが単細胞で、見張りの警官のレイエス（ローランド・イノセンショ）を刺殺しているなど、あまりにもリアリティーを欠く。ロサをリゾートへ返すきっかけにか、おなじみの携帯電話の電波がない場所がおかれる。
結局、ロンメルとアマンダをヴィリエガスが助け、ロサの救出に現われたヴィリエガスをウィリアムが殺す。ロサが絶対のピンチにアマンダの霊がウィリアムを退治の終わりかた。なぜにウィリアムがヴィリエガスを撃つ前にアマンダの霊はウィリアムをやっつけないのと疑問が残るが、焼けただれた霊の顔がアマンダの顔に戻り、昇天をやんわりと暗示。従業員たちやアマンダに見送られてロサとロンメルがマニラへ帰る車のミラーにアミエルの顔がうつるや、憎悪にさまようアマンダの呪いの霊と、家族をつつむ守護霊の二種類の霊を描いたとわかり、なるほど考えたプロット。
トペル・リーの演出は少女時代のアマンダ（アレクサ・イラカド）をパーティーで幽霊と勘違いや、ルルの白い長髪を幽霊ふうにみたてに、ペドロの家の玄関に厄除けっぽく瓶のつりさげなど、ワザとらしさでムードを高めつつ、霊のＣＧと特殊メイク・アップを適度に駆使で、あくびのひまを招かないテンポがよい。ただしクライマックスのサスペンスは、いったん死んだと思ったウィリアムが生きているといったアイディア不足の凡庸さが気になる。昆虫のたかる不気味さの表現には、昆虫がなにをシンボライズかの意味がほしい。またアミエルとロンメルが弾くピアノがベートーヴェンのバガテル“エリーゼのために”で、雰囲気を重視の選曲にせよ、話と関連性がなく、中途半端な使用方法に感じる。ナジャの霊感が強いあたりは、サイリエル・マナバットのこまっしゃくれた子役ぶりに巧みな脇のキャラクターをつくる。
すでに中年のおばさんのエンジェル・アキノは肥満と無縁のスリムなスタイルがそそり、ファンへのときめきをくすぐる変わらぬ魅力を伝える。ライト・ブラウンと白のパンツが下半身にピタピタじゃないながら、クライマックスのジーンズで視線を奪う。ウィリアムの発砲で床にはって逃げるかっこうでのお尻がキュートで、もっとゆっくりみせてと願う。ただし雨にぬれてもシャツが肌に貼りつかなくて残念だし、ウィリアムと格闘で背中の露出は、おそらくスタンド・インのグレース・モマゲだと思う。
エンプレス・シュックはレイプで肌をさらさず、やはり危険なシーンはスタンド・インのアシュレー・デル・ロス・サントスがふきかえる。
リゾートで幽霊に遭遇であわてて逃走の客のカップルは、ガールフレンドを演じるルビー・カエタノがボディーにバスタオルを巻く。
今回の発見はジェーン・オイネサにつき、あまりのかわいさにうっとり。地面を転がって逃げたあと、雨の中に横たわるウェストにペタペタのシャツと脚のラインをくっきりのスカートにドキドキ。もし下半身へフィットの衣装だったなら、我慢の限界を超えたはず。次回作が楽しみになる。
