（野望）
(97)年：Ｖ−リッチ・フィルムズ
監督：ニール・タン
主演：グライデル・メルカド
リタ・マグダレナ
トントン・グチェレス
エミリオ・ガルシア
エリザベット・オロペッザ
ロナルド・ヴァルデス
ロイ・ロドリゴ
ジョージ・エストレガン（ジュニア）
ロサンナ・マルケス
ウルスラ・オルティス
ミエミエの話をアイディアも乏しく展開されるほどバカバカしいものはない。女の武器を利用して出世しようとする女性を題材にしているが、同じような保険外交員を扱った『Ｓｅｇuｒｉｓｔａ』と比べれば、現実をとらえようとする姿勢でその差歴然である。
出だしのオフィスの様子は、オデット・カーン演じる口うるさいオバサンの上司がいたりして、まずまずの描写。さらにグライデル・メルカド演じる主人公が家へ帰ってからが興味深く、ロサンナ・マルケス演じる病気がちの母をかかえ、病人食をつくってあげるあたり、みごとなリアリズム。周囲の貧民街の雰囲気もよくでているし、朝のトイレまでみせる生活感がすごい。
ロサンナは70年代のセックス・ゴッデスとのタイトルが入っているが、見る影もないのが、ストーリーとは離れてまた面白い。
グライデルが出世欲をあからさまにだして、つまらない内容になってくる。マリテス・サムソンかシャーリー・テソロかどらかが演じる仲間がオフィスでセックスしているのを目撃してしまい、自らもトントン・グチェレス演じる同僚と屋上でセックスするまではまずまず。このときは両者とも相手に抱かれて乳房が隠れたままなのは不満だが…
ジョージ・エストレガン演じる上司を誘惑のうえカー・セックスし、上のフロアへ移ることに成功するが、ジョージがセクハラで失脚によって、あえなく頓挫。このさい、ビルの上へ行くことを野望の象徴のように描いているのは『アパートの鍵貸します』あたりを思いだすが、別に影響を受けたわけじゃないだろう。
リタ・マグダレナが登場して、オッといわせるものがある。まずエミリオ・ガルシア演じる策士のビジネス・マンとのセックスでオッパイも食いこみＴバックのお尻もみせてくれるし、ロイ・ロドリゴ演じる恋人との階段でのセックスでは、小ぶりながらもキュートで乳首のカワイイ乳房を隠そうともしない。全裸で立ちあがるカットも、ハッと息をのませる。リタがグライデルのライヴァルになるだろうことは容易に想像できるが、張り合い、つかみ合いのケンカを繰り広げるものの、もう一つ対立した関係が際立たないのは、ドラマツルギーがヘタなのだろう。
グライデルがエミリオに取り入って保険外交官になり、色仕かけで勧誘してトップになるあたりから苦しくなってくる。収入アップに伴って新しい家へ引っ越し、家財道具を買うのだが、家族とはかえって隔たりができてしまう状況は、納得のいくところ。ロイを誘惑し、カネ目的だと思われて失敗するのも説得力はあるのだが…
ロイとの風呂につかっての愛撫シーンは、もう少しのところで乳首がみえないのでイライラを招く。
エミリオの手引きでロナルド・ヴァルデス演じる社長に接近してから、まったくのマンガに変化。エミリオから副社長に抜擢で、ごう慢な女となるあたりが極端すぎるし、ロナルドが死んであっさり失脚するのは、いくらなんでも予想がつきすぎる。案の定そうなって、ビルの最上階にあった役員室から追いだされてエレベーターへ放りこまれると、みるみるフロアーの数字が減っていくのも、シンボル的な描きかたというよりはワザとらしさが勝っている。結局、家族のもとへ帰るのは当然だし、ラストでトントンが再登場して結ばれるのだから、アホらしのひと言。とても最初のほうの鮮やかな家庭描写を表出した同じ作者とは信じがたいほど。ニール・タン監督、もっとしっかりしてほしいものだ。
またグライデルはたいして美人じゃないけど、どこかそそる女優だったが、後半の流行の服を着るようになってからは、やっぱりブスだなあというのが目立ちすぎるのもつらい点。妹を演じたアダナ・ヴラのほうがまだかわいいと思えるくらい。ロナルドの別荘のシーンではプール・サイドでハイレグ・ビキニがセクシーだが、ちょっと露出がイマイチなのも不満。さらにダメ押しのようにスポーツ・ジムでポロッとオッパイをだしてくれるリタの前では、サーヴィス精神で負けている。いつもは大胆なヌードになっているのに、何か特別な理由でもあったのだろうか。
まあグライデルに魅惑の美女を演じさせたこと自体が無理だったのではないか。
なお社長亡きあとに会社を仕切る実力者としてエリザベット・オロペッザが出演しているが、グライデルを追いだすあたりに迫力を感じさせるものの、堂々たる貫禄を示すまでにはいたらずじまい。二号役でウルスラ・オルティスが登場で気性の荒いところをみせるものの、セクシー・シーンはなく、容貌的にイマイチだし、トキメキを感じさせてくれない。
