ＡＬＬ　ＭＹ　ＬＩＦＥ
　
04年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ
監督：ローレンティ・Ｍ・ジョギ
主演：アガ・ムーラック
　　　 クリスティン・ヘルモサ
　　　 リッキー・ダヴァオ
　　　 セス・ケサダ
　　　 ベルナルド・パランカ
　　　 ディンプレス・ロマナ
　スター・クルーズを舞台に繰り広げるロマンス劇。シンガポールからプーケットを経て、再びシンガポールへ戻る豪華客船の旅であるスター・クルーズは、日本でもよく知られているが、個人的にまったく興味の外。どうでもいいものながら、映画に登場するぶんには、まあ、ジャマにならない観光要素じゃないか、という感じ。
　アガ・ムーラック演じる結婚コーディネーターが、ルイ・ヴィリアールズ演じる男に、ピア・ロメロ演じる女性への求婚演出を仕組むも、ピアはアガからのプロポーズと勘違い。ルイはみごとにフラれ、用意してあったクルーズのチケットをアガがもらう。いざ乗船してみると、となりの部屋にいるのがクリスティン・ヘルモサ演じるフィリピーナで、暴れたり、泥酔したりの様子。アガがクリスティンの介抱から近づき、次第に親しくなっていく。クリスティンは結婚式の当日、ベルナルド・パランカ演じる新郎のもとにカルラ・マルティネス演じる別れた恋人が乱入。式を途中で放り投げ、単独でクルーズにきたとわかる。旅のふれ合いを通してお互いにすっかり引かれた二人だが、実はクリスティンの結婚式をプランしたのがアガとの打ち明けで、気まずいツアーの終了に。でも、フィリピンでの日常へ戻っても、相手のことが忘れられない。そんなとき、病気を隠していたアガが不治と診断され、生い先短いと知って、とのストーリー。
　ようは難病お涙ちょうだいジャンルで、なーんだと落胆する。
　とにかくローレンティ・ジョギがセンティメンタルにすべく、バラードの主題歌を流すなどでこれもかとムードを盛りあげるながら、しょせんは低俗ドラマだけに、いかんともしがたい。ベルナルドとの復縁を振りきり、たとえ短期間とわかっていてもクリスティンがアガとの結婚を選ぶ心理が表層的にダラダラと続くばかりで、後半のつまらなさが我慢の限度を超えたようだ。
　物語の構成的にも、クリスティンのくしゃみを小道具のごとく活用するのはうまいながら、結婚式でクリスティンの脱げた靴をアガがクルーズに持ってきているのはヘンだし、クリスティンがアガの子を生んでいるラストにも疑問を残す。
　いやはや、典型的なダメ女性ドラマ。ハーレクインもどきが大好きなフィリピン人らしい内容といえるかもしれない。
　もっとも、軽い関心を呼ぶ点がいくつか登場。スター・クルーズのようなバカンスは、やはりフィリピンの庶民にとって、あこがれなのかもしれない。リッチな船内の紹介よりも、フィリピン人クルーがけっこういることに、ハハーンとうなずく。プーケットやペナンでの描写には、とくにプーケットに象の芸や仏教寺院がでてきて、同じ東南アジアにあっても、あらためて文化的、環境的に、タイとフィリピンの大きな違いを実感する。クリスティンがパンをオレンジ・ジュースに浸したり、アガがご飯にコンデンス・ミルクと砂糖をかけたり、ヘンテコな食べかたにそれぞれが影響を受け、船上でのご馳走にもわざわざケチャップをかけるのには、マジで味覚のない人たちよ、とあきれるばかり。
　マニラの生活に変わり、クリス・ダルス演じる老人とアガが公園で勝負する王冠チェッカーが、確かにみる光景。セス・ケサダ演じるクリスティンの母がレチョン屋を経営し、パーティーの依頼を受けたとき、豚のメイクをしたスタッフがいて、下の着ぐるみは牛だから、なんかおかしい。アガがクルーザーを住居にするほか、バンカーの模型をつくるなど、船にちなんだものが多い中、アガの回復を祈ってクリスティンが部屋いっぱいに新聞で小舟を折るのは、さしずめ日本だと千羽鶴といったところ。
　人物のキャラづけでは、リッキー・ダヴァオ演じるクリスティーの父が出色で、娘を思いやりながらも、押しつけなくみまもり、あたたかい包容力に共感するばかり。考えてみれば、独身人生を選んで子どもがいない自分にしても、仮につくるなら女の子が一人いればいいなといった気持ちが本音。クリスティンくらいの娘がいてもおかしくない年齢だから、はたしてここに描かれるリッキーのような父親になれただろうか、との思いがわき起こってくる。
　などといった具合。
　また正直いえば、クリスティンが水着姿を披露しているとの紹介記事を読み、そればかりを期待してみた映画。クリスティンはちょうど公開に合わせて雑誌『ＳＴＡＲ　ＳＴＵＤＩＯ』でビキニになり、いきなり売り切れで、さして美人じゃないのに人気が高いなあ、なんて感じたのだが、自分だってビキニ写真を何度も食いいるようにみたのだから、本当はかなりのファンに違いない。客船のプールで夜に泳ぐときの青いセパレーツ、ビーチでデートでの白いセパレーツ、結婚したあとの海で散歩におけるビキニと三タイプがまぶしい。とくに水面から濡れたブラとパンティーの浮かぶ青がよく、寝ころんだボディー・ラインのそそる白がこれに続くながら、全体的に遠景のショットが多かったり、プロポーションがバッチリのアングルを欠き、イマイチなのが惜しい。むしろ船室で荒れるときの白いレースの下着や、アガが倒れるクライマックスでのやや下着のスケたネグリジェのほうがゾクゾクを招くくらい。でも下着は露出が少なめのタイプだし、一番、色っぽかったヘソだしの白いピタパンのかっこうは、海で濡れるながら、貼りつきポーズを撮らず、クリスティンのセクシーさは不満のまま。
　結果、この期待はずれが、いっそう評価低下の一因になったようだ。
　なお、クリスティンの姉を演じるディンプレス・ロマナがかわいく、水着をみたかった。