ＡＬＩＮＤＯＧ　ＮＩ　ＢＡＲＢＡＲＡ　　ＭＡＰＡＮＧＡＮＩＢ
（とても魅力的なバルバラ）
　
99年：タウルス・フィルムズ
監督：カルロ・モンテロ
主演：イネス・ヴェネラション
　　　　サラ・ゴメス
　　　　ヘーゼル・エスピノサ
　　　　ピア・パウラ
　　　　ジャッキー・ディアス
　　　　ジャスティン・アラルコン
　　　　ニッコ・モンテス
　　　　ポッポ・ロントク
　　　　エルウィン・モンテス
　　　　アリエル・レイエス
　　　　アルド・アルヴァレス
　　　　ニック・アラディン
　　　　スーザン・コルプス
　Ｃ級ホラー映画とでもいおうか。『13日の金曜日』シリーズとたいして変りばえのしないできである。
　イネス・ヴェネラションがエレナとバルバラという名の双子の姉妹を演じるのが見どころで、エレナがイネス得意のセクシーな女性役。バルバラは片手が動かず、片足も不自由で、言葉も話せないものの、手でさわらなくても物体を動かせる特殊能力を持つオカルト少女役。色っぽさと異様さを表現しわけることになる。イネスがセックス・アピールたっぷりなのはいまさら強調するまでもなく、エレナはいつも通りで演じられるだろうから、バルバラのほうでどれだけおどろおどろしさを引きだせるかが興味の焦点。しかもそれはある程度まで成功していて、イネスの演技的成長がうかがえるようだ。
　しかしカルロ・モンテロ監督の語り口がヘタで、もうひとつ恐怖が映画の全体から感じられない。
　前半、バルバラに相手をにらんだだけで殺すことのできる能力があるとわかって、物語はオカルト方向へと動きだす。バルバラに親切なヘーゼル・エスピノサ扮するオローラがレイプのあとに刺殺されると、その犯人をバルバラがにらみ殺す。サラ・ゴメス扮する隣人の妻が、横恋慕した男から夫とともに惨殺されると、やはり犯人をにらんで殺害。舞台となっているのは具体的にどこかわからないものの、こんな田舎で凶悪事件が続くとは、とうていフィリピンにありえないだろうと思えてくる。しかも警察の捜査がでてこないのもヘンじゃないか。
　スーザン・コルプス扮する母がバルバラを小屋へ閉じこめると、ちょうど都会で別々に育っていたエレナが友人たちを伴って帰ってくるところから、映画は後半へと入る。船で到着の際にみえる水上集落の風景などが興味をそそり、ロケ地の場所を知りたくなる。全員がエレナの実家に泊まる第一夜、犬の遠吠えが聞こえてきて、友人たちが不気味さを感じるあたりはまずまずの描写。
　やがて母と友人の一人が行方不明になり、ジャングルの中を捜索するも、このあたりはもっと彼らが追いつめられてゆくような不安感の強調がほしかったではないか。でないと、画面から緊迫感がそがれてしまう。
　それに前半の二つの殺人は正義であったのに、バルバラがいくら自分を閉じこめたからといって、愛してくれている母親を殺す展開には説得力がない。エレナの友人たちへの殺人にいたっては、もう何の理由もなく、かといって無差別殺人の不気味さのようなものもでていないので、ただ呆れるのみ。
　ラストのあっけない解決もイマイチで、まあアメリカやイタリア製スプラッター映画にあるような、ＳＦＸで意味なく血みどろにする悪趣味がないぶんだけ、それらよりはましだといえるだろう。
　イネスはバルバラ役で母に身体を洗ってもらうセクシーなシーンをみせるも、やはりエレナ役におけるプールでのビキニ姿が魅力的。恋人とのセックス・シーンではチラリ乳首をうかがわせてウハウハながら、ストーリーの進行上不必要なカットなので、もっとうまく挿入してほしいと思う。
　イネス以外の女優では入浴シーンで全裸をみせるサラがもっともよく、同じく入浴シーンで濡れた下着を肌に貼りつかせるヘーゼルもまずまず。エレナの友人となる三人の女性はピア・パウラ、ジャッキー・ディアス、ジャスティン・アラルコンだが、滝で水遊びするシーンでほんの少し濡れたＴシャツ姿を披露するほかに見せ場がない。 ジャッキーやジャスティンは魅力が薄いからとくに不満はないものの、ピアなどもったいない扱いだと感じる。