ＡＬＡＳ　ＤＯＳＥ
（12時）
　
01年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：アウグスト・サルヴァドル
主演：セザール・モンタノ
　　　 クリストファー・デ・レオン
　　　 サンシャイン・クルース
　　　 パトリシア・ハヴィエール
　　 　ベーン・セルヴァンテス
　　 　ロンメル・モンタノ
　　 　ディック・イズラエル
　セザール・モンタノとクリストファー・デ・レオンという二大スターの共演によるハード・アクションであり、さしずめアル・パチーノとロバート・デニーロの顔合わせのような興味がわいてくる。セザールがストーリーを担当し、彼のプライヴェートのパートナーであるサンシャイン・クルースも出演で、かなりイケそうな気になるのだが…
　アウグスト・サルヴァドルの手堅い演出もあって、けっこう期待に応えている。まずまずの佳作といって間違いない。
　まずは黒を基調にした重いムードのある画面づくりがよろしい。広角レンズを効果的に使用したりによる、構図のとりかたにセンスのよさをうかがわせる。雨の中の警察葬のシーンなど、たくみに無念の情感を醸しだしている。これには撮影の頑張りが大きいように判断するのだが、ちょっと唖然とするのは、監督や撮影がタイトル・クレジットになく、誰が担当なのかわからないこと。監督がアウグストであるのはポスターや資料から調べられるものの、撮影に関してはポスターにある表記をメモし忘れたから、結局、不明のまま。自分の名前が欠落しているといううっかりミスを、はたして監督や撮影技師はどう思っているのか、知りたくなる。他にも将軍役のボン・ヴィヴァルの表記がオープニングではＢＯＮなのに、エンディングの配役表ではＶＯＮになっていたりして、確かにタガログでは日本語と同じようにＢとＶの発音が区別されていないと感じるも、いい加減だなあとあきれるばかり。
　まあ、このいい加減さがフィリピンっぽくて個人的には好きなのだが、こと本作の内容に関していえば、クレジットとは裏腹に、しっかりした構成である。
　爆弾処理もする警察の捜査チームのリーダーがセザールで、連続爆弾事件の犯人がクリストファーという役どころ。ベーン・セルヴァンテス演じる麻薬シンジケートのボスが逮捕され、うまく釈放させれば大金を払うとの話にクリストファーが乗っているとの裏事情をしきつつ、過去に警察から非人道的な拷問を受けた経験を持ち、クリストファーが冷酷なまでに警察へ怒りをぶつけてくるとの設定になっている。ベーンを釈放する権限をもつ将軍の娘で、自らもジャーナリストであるサンシャイン演じる女性に脅迫をかけ、まだ幼いその息子を誘拐。サンシャインがしょうがなく協力するとの展開は新味に欠けるものの、まずまずの印象。
　セザールの捜査官はストレートな人物なので深みに乏しい気になるが、ディック・イズラエルやパトリシア・ハヴィエールなどが演じる仲間を殺されて怒りが倍増するあたり、いささかパターンながらも、うまく感情を伝えている。
　またベーンのボスが刑務所の中で絵を描いていて『冬の華』の藤田進を連想するながら、パッと見でワルと思えない人物にキャラづけの点が、フィリピン映画にしてはひねったなと納得。
　捜査はクリストファーからの挑戦にセザールが押されっぱなしで進み、途中でプロ・バスケット・ボールが行われている満員のスタジアムへ爆破予告するシーンが、なかなか面白い。フィリピン人のバスケット・ボール好きがわかるよう。
　ただ釈放されたベーンがクリストファーに銃を向けると、追ってきたセザールがベーンを射殺するという部分は、ちょっと違うんじゃないかと首を傾げる。ストーリーのツメが甘くて減点対象なのだが、続く最後のアクションにそれなりのパワーがあるので、まあいいか。
　実際に不満なのは、せっかくの女優陣がほとんど生かされていないことに尽きる。まだサンシャインは期待していたセクシーなシーンがないものの、演技的に個性がそこそこでているし、みごとなプロポーションのわかるファッションで登場もするから、一応の見せ場を確保しているといえる。パトリシアのほうは、いてもいなくてもいいような扱いで、そりゃないでしょ。正直なところヌードにならないと何の魅力もない女優だといえば失礼だが、最初からパトリシアが脱いでいないと知っていれば、この作品はみなかったわけで、もう少し考えてくれー、と叫びたくなる。
　でも結果的には男のアクションとして意外なほど堪能させてくれたので、めぐり合わせかもしれない。