（私が正妻 尊敬をこめて目上のひたいに手をあてる挨拶 第四部なの？）
05年：リーガル・エンターテインメント
監督：ジョエル・Ｃ・ラマンガン
主演：シャシャ・パディーリア
ルーファ・メエ・キント
ジェー・マナロ
チェリー・パイ・ピカチェ
ジョン・プラッツ
ビアンカ・キング
ＪＣ・デ・ヴェラ
ジュリアン・リー
エリア・ゲヴァラ
ピンキー・アマドール
マリッサ・サンチェス
中国系フィリピーノのファミリーを舞台にとるコメディーで、これまでの『ＭＡＮＯ ＰＯ』の三作とは趣きが異なり、娯楽に徹している。それだけに重量感はなくなったが、笑って楽しめるといえる。
裕福な中国系ビジネスマンのエルトン（ジェー・マナロ）のもとへ貧しい中国系のチョナ（シャシャ・パディーリア）が嫁ぐ。娘が生まれて幸福だったものの、二人目の息子が誕生のとき、愛人のパティー（チェリー・パイ・ピカチェ）の存在に気がつく。しかもパティーが同じ日にエルトンの息子を産む。娘のハイビスカス（ジュリアン・リー）と息子のハミルトン（ジョン・プラッツ）が年ごろに育ち、もうひとりの娘のアントゥリウム（エリア・ゲヴァラ）も誕生のチョナは、息子のニクソン（ＪＣ・デ・ヴェラ）が年ごろに育ったパティーと犬猿の仲。どうやらエルトンがパティーのためにコンドミニアムを買ったらしいので、チョナが調べに部屋へ忍びこめば、新しい愛人のグロリア（ルーファ・メエ・キント）が現われる。春節の祝いで三人の妻の食卓をまわるのにエルトンが大忙し。いつの間にか“籍の入った妻”とチョナが、“運をもたらす妻”とパティーが、“新しい妻”とグロリアが主張するようになる。
エルトンの両親（ピーター・チュア、エリザベト・チュア）とチョナの両親（ボニファシオ・セオ、テス・ヴィリアマル）が勝手に婚約を決めるのが中国系の慣習なら、エルトンもハミルトンの婚約を勝手に決める。ところがエルトンはホモで、フィアンセのトリシア（ビアンカ・キング）を腹違いの兄弟のニクソンに紹介してトリシアとニクソンが意気投合。ハミルトンとの結婚式をトリシアがドタキャンで怒りのエルトンが交通事故を起こし、病院へ担ぎこまれる冒頭から回想がはじまり、それまでの流れが語られる構成で、チョナ、パティー、グロリアが病室においてワザと大声で泣き比べるなど、中華っぽいギャグがずいしょにでてくる。エルトンがタガログ語の“出発”の“アーリス”といったのでチョナがアリスとの名の愛人がいると疑い、今度は“パーティー”といったのをパティーとの名の愛人と思って本当にパティーがいたりや、グロリアに対して共闘をはかるチョナとパティーが「カサマ・シ・グロリア」（グロリアと一緒に）と、ちょうど大統領選挙で現職のグロリア・マカパガル・アロヨがスローガンにかかげていたフレーズを皮肉るなど、言葉のギャグも盛りこまれる。グロリアが友人のアヤ（ジゼル・サンチェス）に「妊娠して夫人になる」と話しているのは、子どもをつくるのが妻の役割りとの中華的な思想がうかがえる。またパティーが自分を「チャイニーズ・ヴィサヤ」と強調し、タガログじゃないとのこだわりに、フィリピン内部での言語的な対立を示すとの興味深い要素も含まれる。
ストーリーのメインはチョナとパティーの見栄の張り合いであって、チョナがエルトンの出費にチェックを入れたり、パティーの食事の席へ正妻を誇示にやってきたり、寺院で祈っているときにばったり会ってにらみっこしたり、パティーがＴＶにインタビュー出演に腹を立てたりがコミカルな表現で語られる。中盤からはグロリアのバストが大きいことへのチョナの嫉妬が前面にでて、エクササイズに励んだチョナが下着や宝石を買って魅力の維持にやっきになる。さらにはエステに通うのみならず、整形医（ジェセッテ・プロスペロ）から豊胸施術をうけてエルトンに迫るも、シリコンが崩れて大騒ぎとのバカさ加減がドタバタ調に描かれる。イスラム教徒なら第一夫人、第二夫人、第三夫人かもしれないが、中華社会では複数の妻を認めないながら、結局は妾の形で第二夫人、第三夫人となる風刺のように解釈できる。ただし病院へニクソン夫人との女性が十名もつめかける部分はシラけた感じで、さほどいただけない。一方で子どもたちは母親の争いなんて関係なく仲がよく、ハイビスカスとニクソンがグロリアの家を訪問してみれば父のエルトンがいてオイオイとのシチュエーションが確かにおかしい。ハミルトンが友人のドレーク（ショーン・グチェレス）に結婚式のベストマンを頼みにいき、シャワー・ルームでドレークの裸をみてうずうずとのホモぶりをユーモラスにあつかうあたりは、監督のジョエル・Ｃ・ラマンガンが同性愛者だからと察する。
最後はエルトンが交通事故でインポになって、子どもを産んでいないグロリアが脱落。チョナとパティーが和解でニクソンとトリシアが婚約し、子どもたち四人が一緒に組んだユニットのコンサート会場へグロリアが黒人の男を伴なってくる。エルトンが会場にいた美人に食指を動かすとの男はしょせんスケベなマヌケ野郎のオチがつく。まったく共感なのでウンウンとうなずくが、映画としては軽いタッチのお遊び喜劇の枠をでないかもしれない。ロイ・Ｃ・イグレシアスとリリー・Ｙ・モンテヴェルデの脚本をまんがタッチにいかしたジョエルのセンスは納得を呼ぶ。
とにかく三名の女優の火花散る共演が一番にうなるポイントといえて、演技的にはチェリー・パイ・ピカチェが断然に光っている。美人の片りんは残すも、太めのボディーは色気を失ったが、十分に二号の妻との雰囲気を漂わせている。シャシャ・パディーリアはスリップやバス・タオルを巻いた姿のベッド・シーンで若づくりがオイオイながら、白パンのスタイルがイケるし、リズミカルな動きが作品にはずみをつける。ルーファ・メエ・キントは設定に合わせ、バストの谷間を大胆にみせたいくつものコスチュームで興奮をくれる。とくに山の中でのビキニ水着と、ケンカ中のチョナとパティーを圧倒するビキニのブラのイヴニング・ドレスがすばらしい。エルトンが体力低下で倒れるハイキングのシーンでも際どいデザインの服装がほしかったところ。またチョナの友人を演じるピンキー・アマドールとマリッサ・サンチェスのうち、デブのマリッサはさておき、ピンキーが好みなのに自分の熟女趣味を知るが、やはり若いギャルに視線を奪われる。ジュリアン・リーの白いピタパンとビアンカ・キングの縦縞のピタパンに浮かぶプロポーションに下半身が刺激をうけ、ふたりともかわいいし、さわりたいとの痴漢の気分になる。ほかにエルトンとチョナがデートの店で歌うシンガー役にジェニン・デシデリョ、下着の売り子役にフリア・ロペス、コンサート会場でエルトンがときめく通行人役にレニー・サマーとセクシー・スターがチョイ役出演し、レニーは顔がわかるかどうかの程度であり、彼女たちにも全身にフィットするような衣装があればなあと感じる。
