ＡＫＯ，ＬＡＮＧ　ＳＡ　ＬＡＮＧＩＴ
（私は天国にただ一人）
　
97年：アマリツ・フィルムズ
監督：ニール・“ブボイ”・タン
主演：ラモナ・リヴィーリア
　　　 カミール・ロハス
　　　 エミリオ・ガルシア
　　　 エリザベット・オロペッザ
　　　 アーミー・オーストリア
　　　 ダニエル・フェルナンド
　　　 アドニス・ラクサマナ
　　　 プリタ・カバウアタン
　　　 カトリナ・パウラ
　セクシー・サスペンスが成立するには、まず女優の魅力が絶大との要素がキー・ポイントになる。その視点に立てば、残念ながらこの作品は失格。カミール・ロハスは主役を演じるには、あまりにも容貌的に劣りすぎる。性格の激しそうな顔だちはキャラクターとして役にピッタリなのだが、ほとんどときめかせる要素がない。
　物語は貧しい漁村から始まり、エリザベット・オロペッザが演じる母、アーミー・オーストリア、カミール・ロハス、ラモナ・リヴィーリア演じる三姉妹が住んでいる。ラモナが一番美人といえ、恋人とのセックス・シーンでさっそくオッパイをみせるものの、それほど好みのタイプではない。海女の格好のまま道路沿いで海産物を売るシーンや、ブタをさばくところなどの描写は興味深い。
　気性が荒くて自分勝手なカミールが、貧困生活に耐えきれなくなってマニラへでる。裸足で歩いているところを芸能関係のオカマに発見される展開が面白い。彼女はセックス映画のスターとなり、続く映画撮影のシーンやプライヴェートのセックス・シーンでたっぷり裸をみせてくれる。写真撮影が終わったあと、全裸で立ちあがる場面では、お尻の奥に陰毛のようなものがのぞきみえてドキッ。でもプロポーションはよいものの、顔がイマイチだからかなり損をしている。
　姉を頼ってラモナがマニラへでてくるのだが、自分の貧しい過去を隠しているカミールは、ラモナを妹としてではなくつき人として雇い、奴隷のように扱う。ちょっと自分の口紅をつかったからと、ヒステリックにラモナをいじめるカミールの怖さが迫力もので、演技的にはまずまず。
　ただし姉妹なのに、性格が真反対のように内気で消極的な女性と設定されたラモナの人物描写はいささか類型的で、ルックス的にカミールより上だから、自分が映画関係者なら彼女のほうを女優にスカウトするだろうなあと思わせるのも、ちょっと展開的にきびしい。
　いじめに我慢できなくなったラモナは村へ帰り、病床にいた母の死に立ち会う。カミールも帰ってきて、再びラモナをマニラへ連れていくのだが、このあたりのエピソードはドラマティックにしようと無理に取ってつけた印象が強い。
　セックス映画に検閲が入り、カミールへの風当たりが強くなって、ラモナに自分のつらい心情を吐露し、初めて二人は絆で結ばれる。その直後にカミールはずっと彼女のことを狙っていたダニエル・フェルナンドなどが演じる不良少年たちに、レイプのうえ殺されてしまう。ここから物語はラモナの復讐劇へと変わる。
　ラモナは娼婦の格好をして不良たちを誘い、一人一人刺殺していくのだが、網タイツに黒いエナメルのブラが挑発的でゾクゾク。欲をいえば乳房は小さめなので、それはそれで魅力的だが、誘惑の度合いが低いように感じる。連続殺人の過程で、みつかるかどうかのサスペンスが乏しい点も不満。
　結局ラモナは逮捕されるも、今は彼女に好意を感じている、前のカミールの恋人らの尽力で軽い罪となり、華やかなマニラでの生活を捨てて村へ戻る。
　別にどうってことのない内容だが、これがもっとときめきと興奮を感じさせる女優の共演であったらなと思うと、まったくもって残念。
　なお映画会社のシーンで、社長と一緒に新人女優候補の役としてカトリナ・パウラが顔をみせていて、明らかにカミールやラモナよりも視線を引きつけるフェロモンがあり、スターの片鱗をうかがわせる。