ＡＧＥＮＴ　Ｘ４４
　
07年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ／スター・シネマ・プロダクション
監督：ジョイス・ベルナル
主演：ヴォン・ナヴァロ
　　　 トニー・フェラー
　　　 マリエル・ロドリゲス
　　　 エピー・キソン
　　　 ジュリアナ・パレルモ
　　　 ポクワン
　　　 ジョン・ラプス
　　　 ムラ
　　　 カサンドラ・ポンティ
　　　 ウマ・コーニー
　ジョイス・ベルナルは『ＢＯＯＢＡ』のヒット以来、コメディーの達人のようにみられているが、実際は『ＳＵＰＥＲ　Ｂ』など、ギャグのあつかいの貧弱なのが気になる。『ＭＲ．ＳＵＡＶＥ』と同様にヴォン・ナヴァロとのコンビであり、スパイもののパロディーに爆笑を期待したが、やはりガックリとの結果。でも興味深い構成をいくつか含む。
　一流のエージェントのトニー（トニー・フェラー）を後見人にもつキング（ヴォン）は自らもエージェントにあこがれ、養成校に通っている。トニーの息子で小人のジュニア（ムラ）と仲がよいも、成績が冴えずに二人とも教官のシンシャ（ポクワン）のヒンシュクをかう日々。同級のおかめのメリー・グレース（マリエル・ロドリゲス）がキングにほれるが、さっぱり興味を示さない。そんなときマジェラン美術館からラプラプの刀が盗まれたと学芸員のミネルヴァ（カランドラ・ポンティ）より連絡が入り、これをとり戻すべく美人に変身したメリー・グレースに特命の白羽の矢がたつ。でも事故死と思われていたトニーの化けた霊の希望で掃除係に格下げ中のキングとジュニアに指令がくだり、メリー・グレースが助手になる。オカマのヴァクラヴァ（ジュン・ラプス）がリーダーの犯人グループと対決で奪回に成功するが、すぐに別の一味に引ったくられてシンシャの失望をまねく。これはいかんとアラブ系のムスタファ（ウマ・コーニー）の仲間や日本のヤクザらしいプルブトゥさん（エリック・キソン＝エピーとの名前の表記になっている）の一味、さらには強盗だったミネルヴァなどを退け、みごとに手中へおさめる。その功績でトニーのあとをつぎ、キングがエージェント・Ｘ４４の称号をえる。
　とにかく靴の電話機にはじまり、ポットがバスーカに早変わりなどの日常品をもじった新兵器が珍品のくだらなさに結びつかず、大便にふんばる音といった下ネタが不快感をまねき、忍びこみのシーンで『エントラップメント』のごとき赤外線が張られていて、反射鏡をつけるなどのアイディアが盛りこまれるも、基本的なラインでオリジナリティーを欠くのが印象をさげる。ラプラプの刀が秘めるからくりは、さほどストーリーにからんでこない。不満点は多いながら、コスチュームのデタラメぶりによるバカさ加減に捨てがたいおもしろさが残る。ジュニアのバットマンや犬に変装はさておき、エジプトのファラオのかっこうは妙に合っているし、ヴァクラヴァの一派の三流ＳＦ映画にでてくるごとき宇宙人ふうのメタリックな服装にはじまり、レストランのトイレの奥に広がる隠し部屋で吸血鬼の儀式がおこなわれ、いかにもヴァンパイアの衣装に対し、アラビックなベリー・ダンスの女たちが入り乱れるのに、イントネーションのヘンな日本語の台詞が発せられる空間で西洋、東洋、両者の中間のイメージが入りまじる。極めつきはプルブトゥさんの本拠地へ乗りこんだパートのところになり、歌舞伎ふうに絵の具を顔にぬりたくった男たちの登場や、土俵があらわれて髷を結っていない力士がでてくるうえ、烏帽子と兜の合体みたいなものをかぶった男のもと、和風もどきの野郎どもと対決で、琵琶らしき楽器をもつものまでまじっている。これらの衣装や小道具のケバケバしく、おマヌケなデザインが一見にあたいする。とくに日本趣味のハチャメチャさはハリウッド映画の「またかよ」「相変わらず」とあきれる方向性ではなくて「しょーもねー」「どういうセンスか」とクスクス肯定したい面を向く。キングとプルブトゥさんのチャンバラにおいて、しっかり殺陣ができているのはオッと感心し、あげくはプルブトゥさんが腹に刺さった刀を自ら押しこみ、切腹のように亡くなる確信犯的な勘違い日本の表現にパワーがみなぎる。プルブトゥさんの情報ファイルをパソコンに表示させると、出身地にサッポロと書いてあるなど、芸の細かい部分が読め、文字のユーモアでは場所を示すデタラメなテロップの一つに“ワイキキキキキ”と書かれていて、タガログ語でオマンコを意味の“キキ”をネタに使い、以前にフィリピン人とハワイの人気ビーチの名がワイキキなのを話した経験を思いだし、やったなあとニヤニヤする。確かに捨てがたい長所をいくつか含むのだが、ヴォン・ナヴァロのキャラクターは生きず、大半のギャグをはずすさむい内容なのがダメの評価へとつながらざるをえない。
　もっとも女優の魅力は嬉しい限りで、おかめのメイクのマリエル・ロドリゲスはアスレティックのトレーニングで黒いパンティーが浮かぶ白パンから、まずスタイルのよさをうかがわせる。階段をあがるのをうしろにとらえたショットで白いピタパンがお尻に食いこむのも、さわりたい欲望をかりたてる。ビーチ・リゾートのシーンでは黒いブラにシースルーの薄い生地のスカートをはいた水着を披露する。悩殺をくれるのはカサンドラ・ポンティになり、自宅のプールで泳ぐときにキングが訪ねてきたので、ザバッと水からあがるショットでパンティーがお尻に貼りつく。しかも『００７は殺しの番号』のウルスラ・アンドレスを思わせる白い水着のまま部屋を動き、パンティーがピタピタとお尻の形をくっきりにする。ビーチ・リゾートは赤いビキニなのに、パレオを巻くばかりか、下腹に刺青を入れているのがわかってイマイチ。ラプラプの刀を狙う一人のセレクタを演じるジュリアナ・パレルモはビーチ・リゾートで生地が厚めの白いビキニで、ボトムがスカート・タイプだし、ヘソ・ピーをつけているから興奮を呼ばない。ほかにブスのポクワンがミニスカに網タイツや、銀のメタリックのパジャマ下着、トップに機関銃をしこんだ銀のメタリックのブラ、でんぐりがえっての銀のメタリックのパンティーなどをみせまくるのはオマケ程度。レストランでキングが服のすけるサングラスをかけて、となりのテーブルに座る女性三名が水着に変わったり、ビーチ・リゾートでハシャぐ水着の客たちには、かわいさに気をひく子がいる。ヴァクラヴァの部下にもメタリックのピタパンの女性に視線を奪われる。